2011年11月01日
●和文解釈入門 第165回
歴史的現在を初学者に教えることに難色を示す方もいるかもしれないが、生徒に対して知的好奇心を如何に呼び起こすというのも大事であり、歴史的現在が日常会話で多用されることや日本語にも似た用法があることを伝えれば、ただ語彙の暗記の授業よりは面白いのではないかと考える次第である。ピョートル1世は少年の頃兵隊ごっこに夢中になり、потешные роты(兵隊ごっこ中隊とでも訳すのか)を創設し、各中隊300名ほどの少年兵士を擁していた。大砲の発射練習をしたときに、着弾距離が分からないために火薬の量などをどうすればよいか分からない。偶然当時の外交官ドルゴルーキーが居合わせ、外国にはастролябияという測角儀の一種があり、それによって距離も測れるという事を知った。ピョートルは早速注文したが、ドルゴルーキーが手に入れて帰国したのは2年後だった。すぐに使ってみようと思うが使い方を知る者がいない。それで当時ドイツ人居住区に住んでいたオランダ人フランツ・チンメルマンというのが知っているというので習う事にした。ところが当時16歳のピョートルは算数(数学というよりは)の基礎(加減乗除)を知らなかった。それでそこから算数を学びこの測角儀も使いこなせるようになったという。ピョートルは天才で直情径行型であるとはいえ、分からないことは分からないとして尋ねる素直さがあった。こういう風に何でも自分の興味が何かはっきり分かっていればロシア語も上達するのは早いがそういう人はほとんどいない。それでもロシア語を学ぶ人にロシア語に興味を持たせるようなそういう秘密のボタンというものがあるような気がする。その一つの可能性として、人があまり知らないような歴史的過去で興味を持たせるようにしてはどうかと考える次第である。
設問)「さっきの人だれ?」をロシア語にせよ。
(1) Кто такой только что пришел?
(2) Кто был недавно ?
(3) Кто тот, который
только что пришел ?
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(1), (3)は意味は通じると思います。その人はそこにまだいるわけですね。(2)は理詰めですがздесьとかが要るのではないかと思います。私の答えは、Кто это был?です。「今の人だれ?」でも同じロシア語訳です。これはモスクワに駐在していたときに秘書のロシア人がこういう風に別の社員に言っていたのを書き留めておいたわけです。非常に簡単な言い方ですが、外国人にはなかなかこうは言えないでしょう。テレビで夫がきれいな女性と話をしたすぐ後に、嫉妬深そうな奥さんがこう言っていたのも思い出します。
(1) Как зовут того, кто
только что пришел ?
(2) Кто ушел сейчас ?
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(1)だとまだそばにいるわけです。(2)の方がいいと思います。
かつてロシア語を始めてからの数年間は気が狂いそうでした。英語とは余りにも違っているし,文法は変化ばかり。どうして最低限そこを乗り越えられたのかいまだに不思議です。ロシア語を楽しく(!)早く(!)習得できる魔法のテキストがあったなら,私も今頃は悟りが開けていたかもしれないのですが…
①Кто недавно приходил?
②Кто недавно ушёл?
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理詰めですが、まあ正解と言えるでしょう。どちらの文でもその人はそこにいないのですから。その場(その近く)にいる人にもこの日本語は使えますが、なかなかそういう場面で使うのは勇気が要ると思った次第です。その場にいる人なら、Кто это?となると思います。
簡単なのに難しい! Кто это? と Кто был? までは考えてみたのですが,双方合わせることは思いつきませんでした。あとから考えるとなあんだ!ですね。