2011年10月30日

●和文解釈入門 第163回

最近2冊よい会話集を買った。一つはРечевой этикет и обороты диалогической речи , П. С. Тумаркин Восток – Запад, 2008で、もう一つは「男と女のロシア語会話術」(マフニョワ・ダリア、TLS出版社、2010年)である。トゥマールキンさんは1985年頃鉄鋼関係のシンポジウムの通訳で何度かモスクワで会ったことがある。岩波露和にも編者の一人として名が出ている名通訳であり、名翻訳者でもあり、日本人の仕草についての著書もある。この会話集は会話のための表現だけをいろいろ集めており、他の会話集にはない警告・おどし、喧嘩、非常事態があるのが特徴である。ただそれに目を奪われることなく、全体を見てみると著者の日本語の理解の深さがよく見てとれる。対話形式を入れてくれるともっとよかったと思う。マフニョワさんのは、逆に対話形式であり、副題に「学校では教えてくれない」とか「オトナのための」とあるように、セックスについても避けることもなく、現代の大人の常識がまじめな筆致で書かれており、コラムも含めて好感が持てる。会話集ではないが、「ロシア語手紙の書き方」(新田實・アキーシナ、ナウカ、1979年)も男女の恋愛をテーマに手紙の交換という形式だが、時代は変わったという事がよく分かる。マフニョワさんの会話集は暗記すると即戦力になる。ダイエットでも具体的な目標、たとえばこの服が着られるようにやせるのだとかがあれば、成功する確率は非常に高くなる。だから異性のロシア人と親しくなるという目標を立てれば暗記にも熱が入ろうというものである。それとマフニョワさんの本には紙面の関係と学習者のレベルを考えて、ごくわすかとは言え普通の会話集では書かないような文法事項も少し載せている。完了体と不完了体については、「ロシア語の動詞は、多くは完了体と不完了体のペアで成り立っています。完了体とは1回限りの動作や、その開始と終了がはっきりと意識できる場合です。不完了体とは、進行・継続・反復する動作、もしくはその動作そのものなどを示す場合です」とあり、初級のロシア語の文法書の体の説明よりもはるかに簡にして要を得た説明だと思う。ただこれで和文露訳の役に立つかというと抽象的過ぎて分からないだろう。ただ体の用法を意識して本書の例文を見れば、なかなか勉強になる。普通はなかなか勉強できないна тыでの用例に慣れるとか、можно + 文で許可を示す口語的用法〔例えばМожно я буду капризничать?(甘えてもいい?)〕や、「もしよければ」をесли можноではなく、если ты не противを使うとか、「色が白いね」とか「足が長いね」というのは単にУ тебя кожа белая.やУ тебя ноги длинные.ではなく、誉め言葉なのだからУ тебя красивая белая кожа.やУ тебя красивые длинные ноги.となるというのもためになる。口げんかの項目にНе бей меня!(殴らないで)というのがあるのにはさすがに実用的だと思った次第。本の背表紙に目がハートのミーシュカが描かれているのだが、初めは一つ目小僧が6人いるのかと思っていた。ただ両書とも会話集のため表現の丸暗記を前提としており、ロシア語の表現には丸暗記しなければならないものもあるとはいえ、厳密的な意味で構文が応用できるようには書かれていないのはやむを得ないとは思う。
設問)友達の部屋に入る時などの「お邪魔?」をロシア語にせよ。

Posted by SATOH at 2011年10月30日 07:19
コメント

(1) Я тебе не мешаю ?

(2) Могу ли я тебе
помешать ?

(3) Ты разве занят ?

(4) Может быть, я тебя
беспокою ?

(5) Можно войти ?
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(2)はやや回りくどいですが正解です。(1)はこれからではなく、「俺いつも邪魔じゃないよね」という感じですから違います。(3), (4), (5)は文脈的には正しくなることもあると思います。私の答えは、「お邪魔じゃない?」として、Я вам не помешаю?この他に、Надеюсь, не помешала?、Я вам не помешал?など。
これも前回同様、期待に対してのニュアンスで用いられているので完了体が来ている。

Posted by カジューシャ at 2011年10月30日 07:45

"Вам не мешаю?"
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「お邪魔?」を言い換えるとすれば、「お邪魔ですか?」、「お邪魔じゃないですか?」、「お邪魔だった?」、「お邪魔じゃなかったですか?」となります。このうちお答えのように「~ない」と否定文にすれば、体の用法として否定文には動作全体の否定という事で不完了体を考えるというのが原則ですから、ロンロンさんのようにかなりロシア語できる方は、セオリー通り不完了体現在形がすぐ頭に浮かぶわけです。ところが動作全体の否定というのは、「私は邪魔じゃないです、私という人間はいつも〔一般的に〕お邪魔しないのです」となり、ドアを開けて、いきなりこういうふうに言われたら、言われた人は相手を気違いかジョークかと思うでしょう。ところが「お邪魔?」というのは、そのままドアを開けて入るのではなく、入るときに相手に気づいてもらうために言うわけであり、「お邪魔じゃないよね」という期待感があるわけです。つまりこの期待感がニュアンスとなり、ニュアンスのある発話は未来形であろうと過去形であろうと完了体を使うという事になります。なお一層のご精進を!

Posted by ロンロン at 2011年10月30日 08:12

(1) Я тебя не отвлекаю?

(2) Я боюсь тебе
помешать.

(3) Ты свободен ?

(4) О, привет! Я тебе не
мешаю ?

(5) Извини. Я тебе
помешал.
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(2), (5)は完了体過去形を使っているので正解です。(3)は通訳などでは臨機応変の訳として通用します。(1), (4)は不完了体を使っているのが問題です。これはすべて完了体にしないとおかしい。

Posted by カジューシャ at 2011年10月30日 10:36

この二冊の会話集はどこで買えますか?ぜひ購入したいと思います。

Я вам не помешаю?
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信じられない!正解です。体の用法については免許皆伝ですね。念のため第150回の表を見て、用法の納得いかないところがなければ、またロシア語でも日本語でも1~2ページ本でも新聞でも精読して(辞書を使ってもかまいません)、体の用法がすべて分かれば体の用法の奥義を極めたことになります。ただ完全にマスターしたというためには、精神を集中して凡ミスをなくすことです。
しかし上級者でも体の用法がおかしい人は多いように見受けられますから、あとは語彙を増やすだけというのはある意味、楽な話です。会話集もそうですが、やはり会話の多い現代のロシア語の本で、俗語が少なく、自分の興味の持てる分野のものということになります。もし何かをというなら、Живые и мертвые, Симоновを勧めます。3巻の長編ですが、第二次大戦における人間関係、恋愛、軽いスターリン批判など盛りだくさんで、使える会話が多いのが特徴です。
 会話集ですが、トゥマールキンさんのはナウカにインターネットで注文し手に入れ、マフニョーワさんのはついでがあったのでお茶の水の丸善で買いましたが、結構売れているようでアマゾンでも買えるようです。語彙を覚えるのみならず、体の用法に注意して現代の口語をマスターしてください。当たり前ですが、会話の口語がロシア語の主流であることには間違いありません。

Posted by メイ at 2011年10月30日 22:37

今後の学習に役立ちそうな書籍のご紹介ありがとうございました。久しぶりにロシア語会話集を買ってみます。

Posted by メイ at 2011年10月31日 22:34
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