2011年10月24日

●和文解釈入門 第157回

最近「物言わぬ者たちの言葉(20世紀のロシア農民の日常生活)Речи немых, повседенвная жизнь русского крестьянства в XX веке, Бердинских, ЛоманосовЪ, 2011」という本を読んだ。20世紀初頭からコルホーズ、第二次大戦を生き抜いた農民たちの生活の聞き書きである。食べるものがなくなりツクシпестикиを食べたとか、コルホーズでは給料が支払われず労働日を記入してわずかの現物支給を受けるだけだったとか、国内パスポート(国外パスポートなど論外)も与えられず、移動の自由もなかったことがよく分かる。語り口は非常に平明、且穏やかであり、それだけにその苦難は胸を打つ。この平易な口語の文章はロシア語の初級クラスの読解にはとても良い教材だと思う。Мать работала в колхозе, утором уходила и вечером приходила. Конечно, к матери прибежим когда на поле, поможем.(母はコルホーズで働いた。朝出かけ夜戻ってきた。もちろん(母が)畑にいる時は母のところに駆け寄って、助けたものだ)このような短い文章でも最初には経過、その後繰り返しの意味の不完了体が来て、最後の文は完了体未来形の例示的用法(時制の転用)であり、一見難しそうだが、会話ではよく見られる構文であり、最初に説明を受ければ初級者でも会話で使える構文である。他に、Пришёл, а мать уже на печи сидит.(帰ると、母はもうペチカに座っていた)のсидитは歴史的現在で、これなども口語ではよく使うから初級でも教えておいた方がよいと思うが、初級の参考書に歴史的現在を扱ったものはないし、中級以降のものでもそれほど詳しいわけではない。まるで日本語にもある用法だからそれに準じればよいとでも言っているようである。決してそういうものではない。歴史的現在からアオリスト(完了体過去形)への置き換えなどは初級で教えるべきである。これだって考えようでは、体のペアが同義であることを前提にするなら体のペアと言えないことはない。
 ロシア語という事を別にすれば、この系統では「囁きと密告」(上下2巻)、オーランド・ファイジズ、染谷徹訳、白水社、2011年も必読である。モスクワ、ぺテルブルグ、ペルミのメモリアル協会の協力を得て1000人以上についてオーラル・ヒストリーの手法を用いて聴取しまとめあげたものである。ソビエト政権に再三再四迫害を受けたのにもかかわらず、愛国者であり続けることに自分のアイディンティティーを見出した人が多いのは驚きでもあり、悲劇でもある。
設問)「彼は二つの仕事を掛け持ちしていた」をロシア語にせよ。

Posted by SATOH at 2011年10月24日 07:32
コメント

(1) Он совмещал две
должности.

(2) Он имел
одновременно две
профессии.

(3) Он работал по
совместительству.
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全部正解です。多分設問が曖昧なので、できるだけ多くの場合を想定しての回答だと思います。文脈によって答えが違うのは当然です。私の答えは、Он на двух работах работал.
この露文を直訳すれば「彼は二つの仕事場で働いた」となる。一つの仕事場で兼任する場合はОна совмещает работу машиниски и секретаря.(彼女はタイピストと秘書を兼ねている)とか、совмещать работу с учёбой(仕事と学業を両立させる)、Он совмещает пост премьер-министр и министра юстиции.(彼は首相と法相を兼任している)となる。

Posted by カジューシャ at 2011年10月24日 07:57

①Он одновременно работал на двух работах.
②Он одновременно работал над двумя делами.
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最初のは私の答えとと同じで二つの仕事場でという意味で正解ですが、одновременноをつけると同時に二つの場所ですからこれは不可能ではないでしょうか?одновременноは取った方がよいと思います。二つ目は二つのこと(論文や研究)などに本格的に取り組んだという意味になります。これはодновременноがあっても絶対にまずいとはいえないでしょうが、会話の相手の人を混乱させないという意味で取った方がすっきりします。なぜодновременноを入れたのかは分かります。多分、これがないと動作の名指しということで、ある時期A社で、違う時期にB社で働いたと取られるのを防ぐためだと思います。私の答えは動作の過程とも動作の名指しとも取れますが、A社に勤めてから、その後B社に転職した場合にこれが使えるかというと、使えないと思います。私の答えは掛け持ちした時期が1回でも2回でもそれ以上でも関係ありませんが、ある時期に1社に勤め、別の時期に別の会社に勤めたという事を意味してはいません。それではそういう場合にはどう言うかというと、Он работал на работе дважды.(2度勤めに出た)といえばよいのです。この場合同じ会社か別の会社かは分かりませんし、問題にしていないのです。こういう場合、ただこのように分かりにくい書き方をするよりは、具体的に「転職する」переходить в фирму, менять место работыとしたほうがよいでしょう。

Posted by メイ at 2011年10月24日 17:49

①Он совмещал с двумя работами.

②Он служил по совместительству в двух местах работы.
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一つ目はсовмещатьは他動詞なので+ 対格 + с + 造格としないとおかしいと思います。ですからдве работыとしたほうがいいと思います。二つ目はこれはこれで分かるのですが、くどい感じです。на работеで「仕事場で(会社で、工場で)」という意味になるので、これを使うほうが自然です。

Posted by ろんろん at 2011年10月25日 01:14
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