2011年09月20日
●和文解釈入門 第123回
このコーナーでは会話における和文露訳において、主として完了体と不完了体をどう使い分けるのかそのたたき台として自分なりの考えを提示している。多くの先人の業績を自分なりに解釈したものだが、自分では会得したつもりでも、他の学習者が実践の場で使おうとしたときにどちらの体を使うべきか曖昧さが出てくるのはやむを得ないと思う。これは個々人で工夫してもらうしかないが、体の用法を真剣に突き詰めて考えてゆけば、私のように細々と具体的な用法を書かずとも、もっと統合した考えで、体が使えるようになるかもしれない。あるいは何かの用法上の目印で新しい発見があるかもしれない。
設問の短文自体が文脈から切り離されているという、ある意味では現実離れしたしたものであり、露露辞典にあるように段落に近い大きさで例文を作れば、より文脈の持つ意味が明確になるのは間違いない。しかし、そうしないのは、設問のポイント(本質)が曖昧になる可能性がある、設問を作るのも、回答するのも、はたまた投稿するのも億劫になる、それと回答を暗記用に使えなくなるといった理由である。逆に文脈と切り離されているとことは、体の用法の解釈を広げ、その解釈をする前提を確実に理解する助けになると信じている。ただ設問において私が正解だと称するものに惑わされる必要はない。私が設問を一般的な文脈で理解すると称するのは、ある意味これが人工的な文脈であり、色々な解釈が可能であるため、あくまで私が現時点でそう思うというだけのことである。できるだけ場面別に説明しようとしているが限りがある。またそう解釈する理由を人には説明できるが、絶対的ではないし、学習者それぞれが納得してくれることを期待しているのでもない。私の体の用法に対する考えも(多分いい意味で)変わってゆくだろう。ロシア人との会話という実践の場では話すのは、特定の文脈におけるその学習者個人なのだから、その時々の文脈における自分に合う用法上の目印というのを自得せざるを得ないのであり、このコーナーがその参考になることを願っている。もし体の運用について何かいいアイデアが浮かんだらこの場でなくともどこかで発表してもらえれば、それは私にとっても後進の人達に取っても本当に有益なことになるに違いない。それがたたき台と書いた理由でもある。
体の用法以外にも、会話における和文露訳は意識して日本語からロシア語への語彙を会得しないとできるようにはならない。ロシア語の語彙の意味が日本語ですぐ分かると言っても、単語や語句が1対1で対応していればの話で、類語語の存在を忘れている。だから会話における和文露訳はそういう方面で十分な経験がないと教えられるはずがないと思う。
設問)「彼には欠点も多いが、長所はそれに勝る」をロシア語にせよ。
(1) Правда у него есть
немало недостатков,
за то достоинств
больше.
(2) У него много
недостатков, но их
превышают
достоинства.
-------------------------------
正解です。私の答えは、У него много недостатков, но достоинства перевешивают.
Хотя у него немало
недостатков, он
имеет большие
достоинства.
Он имеет много
недостатков, однако,
с другой стороны
у него даже
достоинств больше.
--------------------------------
初めの方はいいのですが(初級の方に説明するとбольшиеの力点はоにきて、より大きいという形容詞です)、2番目のは唐突にс другой стороныが出てきています。これは с одной строныと対にして使うのが普通なので、取った方がよいと思います。
先日の投稿へは、とても分かりやすい説明をして頂きありがとうございました。すっきりしましたし、すんなり覚えられそうです。
今回の分ですが、
У него много недостатков, но достойнства больше.
よろしくお願い致します。
----------------------------------------
スペルはдостоинстваが正しい。достоинстваは単数生格ですか?もしдостоинстваを複数主格と考え、次に形容詞比較形の述語が来ていると考えれば一見文法的には正解のように見えますが、主語と数量関係の形容詞は強く結び付くと考えるのが普通ですし、前の句がу негоとあるので、普通は同じ構文が続くと考えて、достоинств большеとすべきです。念のため長所と短所はдостоинства и недостаткиと可算名詞、つまり複数形で使います。
公私ともバタバタ…
追いかけます。
(訳)
彼には欠点も多いが、長所はそれに勝る
У него много недостатков, но достоинства превосходят их.
数で悩みましたが、辞書を見ると長所短所とも数え上げられるものと考えるようで、複数での例文が大半でした。「彼の」長所短所で一般的に長所短所とは…ではないので納得です。
体は現在の状態ないし事実を指すので不完了体です。
さて、正解は
перевешиватьという語は知りませんでした。語義を見てなるほど~と感じます。
превышатьも使えるんですね。自分では思いつきませんでした。
(頭が)固いッ!