2011年09月12日

●和文解釈入門 第115回

 北原白秋(1885~1942)が1925年に鉄道省主宰の樺太観光団に参加した顛末を書いた「フレップ・トリップ」(岩波文庫、2007年)を読んだ。特に前半の文体が非常に明るく感じられる。本人も「私の話法は現在格で進める。この方が楽だからである」と書いている。つまり意識的に歴史的現在で書いているのである。歴史的現在で書かれている小説、紀行文は限りがないが、このように作者が文体の違いを意識して書かれているのは類を見ない。また豊原のロシア人街についても触れている。表題のフレップ・トリップは解説の山本太郎によればアカフサスグリкрасная смородинаとクロフサスグリчёрная сиородина、ないしはナナカマドрябинаであろうという。白秋はこれらでブドウ酒をつくるとしているが、山本はナナカマドでは作れないと書いている。普通はその通りだが、ウラヂーミルВладимирというモスクワ近くの都市のナナカマドは糖度が高く、これで酒が作れるというのはロシアでは有名な話である。フサスグリの酒もあるが、この場合はナナカマドなら低木なので、北海道のハスカップのようなのかもしれない。
「考え直す」と言う日本語には、「もう一度じっくり考える」と言う意味と、「考えを改める」と言う二つの意味がある。передумать, перерешитьは「前の考えを拒否して、別の考えを受け入れる」と言う意味であり、раздумать, отдуматьは「前の考えを拒否する」と言う意味である。「引っ越す」はпереселиться, переехатьが普通だが、перейтиは同じ集落、市内に引っ越すというニュアンスがある。
設問)「5分ほど待とう。もし電車が来なかったら、歩こう」をロシア語にせよ。

Posted by SATOH at 2011年09月12日 07:16
コメント

(1) Подождем минут на
пять. Если электричка
не придет, то давайте
пойдем пешком.

(2) Давайте подождем
еще минут на пять.
Если электричка
не придет, тогда
пойдем пешком.
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наを抜けば正解です。на + 時を示す名詞の対格と結合して予定を示す動詞については次回の本文に書いておきますのでそれを参照ください、私の答えは、Подождём минут пять, если поезд не придёт – пойдём пешком.
поездは汽車とか列車という意味だが、電車(地下鉄のも含めて使える)という意味にもなる。厳密に言えばэлектропоездとなる。完了体未来形が続いているのは、例示的用法であり、動作が次々行われることを意味しているからである。

Posted by パラショーノク at 2011年09月12日 07:51

(訳)
5分ほど待とう。もし電車が来なかったら、歩こう
Давай подождем минут пять.
Если трамвай не приедет, тогда пойдем пешком.

まず「電車」をтрамвайと訳したことについて
・ロシアの地下鉄は入場時に検札がある、また深いところにあるため
 ホームまで行き当たりばったりで降りるとは考えにくい
・エレクトリーチカの場合、切符をあらかじめ購入する必要あり、
 また駅間距離は日本の地方交通線のそれと同様に長いと考えられ
 ロシアの気候の厳しさを考えた場合、歩く、という選択肢は現実的とは思えない
・設問の想定が日本国内での会話であったとしても
 (たとえばJR山手線のホームでロシア人に話しかけているとしても)
 検札がある以上、闇雲に切符を買ってホームにいるとは思えない
 例外があるとすれば、何らかの理由でダイヤが大幅に乱れている場合くらい
・路面電車であれば、共通券を持っている、ないし
 車内で切符を購入ということも可能であるので
 行き当たりばったりの行程でも問題ない(これは日本でも同様)

続いて文法について:
・「5分ほど待とう」は岩波の例文を参考にしました
 Давай подождём. ちょっと待とうよ。
 (349頁、дать)
・「…したら…」はесли ..., то ... かと思いましたが
 Если вы пойдёте, тогда и я пойду. あなたが行くなら、私も行く。
 (研究社2,340頁、тогда)
 を参考にしました
→если ..., то ... にすると意味が変わるのでしょうか?
・если以下は発話時点から見て未来に起こりうる事柄なので完了体未来を使っています
・より正確に意味を伝えるため、пешкомを補いました
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正解ですが、трамвай приедетよりはтрамвай (электричка, поезд) придётが普通です。ехатьは交通手段が主語に立つときはあまり使わず、идтиが普通です。使うとすればМотоцикл едет к нам.ぐらいでしょう。これにидтиは使えないと思います。この場合идёт(予定の用法)としないのは、例示的用法で、そのために完了体で続けた方がロシア語らしいからです。трамвай(路面電車)を使った理由は分かりましたが、考えすぎです。プラットホームで電車を待っていたが、来なかったという設定で、無理に改札を通る前とか考える必要はないと思います。長距離電車や郊外電車は1950年ぐらいまでは入場料をとっていたのですが、地下鉄を除いてプラットホームまでは自由に入れます。ですから切符のチェック(改札)は客車の前で客車それぞれにいる車掌が行います。если..., тоというのは事実対比(ないしは確定した事実)の表現です。分かりやすく言えばеслиという従属節にはすでに起こったことや、時間的前後関係が明かな場合に使われるという前提があります。Если я работаю, то для детей.(働いているのは子供のためだ)とか、Если пойдёт дождь, то мы не поедем на озеро.(雨が降ったら湖にはいかないよ)。時間的な前後関係が明確でない場合はつけなくてもよいということになります。Если вы будете уходить, предупредите меня.(お帰りになるときは、声をかけてください)などです。ただ文法的な説明は以上なのですが、会話では必ずしもтоを入れない場合も多いのです。建て前と実際の違いです。私の回答はその辺をダッシュを入れてごまかしたような文ですが、これでも間違いではありません。тогдаを使っても、то以上に強調という感じがします。ロシア人は散歩が大好きです。マイナス30度ぐらいなら、別ですが、マイナス15度とか20度ぐらいなら平気で散歩しますし、冬などアイスクリームが溶けなくていいと外で食べたりするのを見かけます。日本的な尺度で考えないことです。

Posted by コーシカ at 2011年09月13日 00:01

パソコンが潰れたり、風邪ひいたりしとる間にえらい進んどるなぁ…

>ехатьは交通手段が主語に立つときはあまり使わず、идтиが普通です
分かりました、覚えておきます。

>切符のチェック(改札)は客車の前で客車それぞれにいる車掌が行います
そういえば2004年にペテルブルクから赤い矢号に乗った時がそうでした。
近郊電車も同じ方式なんですね~

>если..., то...
>分かりやすく言えばеслиという従属節にはすでに起こったことや、
>時間的前後関係が明かな場合に使われるという前提があります
ご説明ありがとうございます。
この構文には結構な頻度で出会う気がするので気を付けてみます。

>日本的な尺度で考えないことです
そうでした!

ありがとうございました。

Posted by コーシカ at 2011年09月19日 23:20
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