2011年08月21日

●和文解釈入門 第96回

外人ロシア語というのがあって、мояをяの代わりに使うなどだが、この起源はセルゲーイ・マクシーモフСергей Максимовという旅行家によれば中露貿易に関わりがあるという。1861年彼が茶の取引で有名なロシアと中国の国境の町キャフタКяхтаを訪れたときに、Моя тиби подожди буду. (Я вас буду ждать.お待ちします)とかЦа пиху хычи? (Чай пить вы хотите?お茶を飲みませんか?)というロシア語交じりの言葉を符牒として中露間の茶の取引に使っていたという。これをロシア人は符牒условный языкと見、中国人はロシア語と見なしていたというから面白い。当時の清はロシア人に中国語を学ばせないために、自国の商人でロシアとの取引をしたいものにはロシア語の習得を義務付け、カルガンКалган(現張家口Zhangjiakou)という町に語学所を置き、そこのいわゆるロシア語の読み書きの試験に合格しないとロシア人との商売はさせないという決まりだったという。ところがその語学所のロシア語がピジンロシア語だったわけである。合格してもマイマチンМаймачин(現モンゴル領)というキャフタの近くの町で1年くらいは語学の実習をする必要があったという。当時中露の代表的な貿易は中国からは紅茶、ロシアからはラシャなどの織物で、ロシア語で南京木綿のことをナンカнанкаといい、これは名の通り中国からロシアに入ったものだが、19世紀半ばにはロシア製のナンカが中国に逆輸入されていたことが分かる。当時ロシアの庶民も紅茶を日に2~3度飲むという習慣が根付いており、紅茶の取引のためにロシア側もこの奇妙なピジンロシア語を習得せざるを得なかったという。無論これだけではないと思うが有力な説ではある。
設問)「22人入社」をロシア語にせよ。

Posted by SATOH at 2011年08月21日 06:06
コメント

(訳)
22人入社
1) 22 человека приняты в нас (или нашу компанию).
2) 22 человека поступили в нас (или нашу компанию).

あっ、今やっと問題の落とし穴が見えた気がする
・22と結合する名詞は2とくっつくそれと同じ単数生格
・なら動詞の数は単数?複数?? さぁどっち!
これですね

またも複数回答です。
22人が入社=採用された、と考えて1)の文を思いつきました。
2)では第3者的視点のような気もします。


東アジア人の耳に露語がどう聞こえているか、
また東アジア人の発音はロシア人にどのように転写されるのかという問題。
興味深いですね。
чайがцаになるあたりは、
現代モンゴル語(だけと違てたぶん昔からそやろ)における「茶」цай
を思わせる音の入れ替わり!
そういえば
モンゴル語でуは露語のоの音に近い音ですが
NHKのロシア語ニュースなど聴いておりますと
力点の無いуがоっぽく聞こえることが結構あります。
また、モンゴル語のйもчも共に露語のそれより発音が弱く、
それぞれ「エ」「(日本語的な)チ」に聞こえます。
大学で受けた言語学の講義で扱われた、
"日本語の母音の音韻は「あ・い・う・え・お」の5つ
とはいえ実際の発音はもっとバリエーション豊か
ゆえに母音の豊かなハングル母語話者なんかは混乱する"
というような現象が、あるいはロシア語でも見られるのでしょうね。
シベリア抑留の経験のある年配の方と話す機会がありました。
覚えているロシア語はありますか、と尋ねると
「よく、ダワイ、ベストラ!」と怒鳴られた
と答えて下さいました(それぞれДавай、 Быстро、でしょうね)。
ыの音は「エ」に聞こえるんや!と妙に納得したのを思い出します。
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出張していたので回答が遅れて申し訳ありません。数詞のほうはよく理解されているようです。принять на работуは「採用する」という意味ですから、これを受身にしてпринят на работуなら「入社した」という意味でも使えるでしょうが、на работуがないと、「受け入れた」という意味にしかなりません。それと設問では「当社に」とか「弊社に」という言葉は入っていないのでнасは使えないでしょうし、мыというのは意味的に当社、弊社という意味で使われますが、文法的な意味は私 + だれか(私の複数ということはパラレルワールドでない限りありえないので)、つまり人間を意味しており、これにв насという言葉を用いるのは、弾が体に入ったとかそういうことでない限り使うべきではありません。「我が社に入社した」と言いたければ、構文的には У нас принято на работу 22 человека.とでもすべきでしょう。私の答えは、Двадцать два человека поступило на предприятие.
「入る」という意味ではвступить/вступать в члены (в армию, в спортивную секцию, в партию)は軍隊、クラブ、会、党に入るという意味で使い、поступать/поступить в университет (на завод, в фирму, в компанию) は大学(学校)、工場(会社)に入る(入社する)という意味で使う。поступать/поступить в фирму (компанию) には「ものが会社に入ってくる(入荷する、入庫する)」という意味もある。数詞関係で言えば、設問の22人という合成数詞сложное число (ちなみに素数はпростое числоで、複素数はкомплексное число)は1位の数に注目して格を決めるということを覚えておこう。ゆえに、「千夜一夜」はОдна тысяча и одна ночьとなり、ночьが複数形にはならないことに注意する。形容詞との組み合わせについても同様でдвадцать одна красивая девушка(21人の美女)となる。この場合次に続く動詞は中性で受けるのが普通だが、複数にしてもよい。「入社する」は口語ではУмный пойдёт в солидную американскую фирму.(頭のいい奴は立派なアメリカの会社に入る)のようにпойти/идти в фирму (компанию)を使っても表せるし、メンバーに入る(なる)はвойти в число (состав) комитета(委員会に入る)という。

Posted by コーシカ at 2011年08月22日 23:01

出先からの投稿です。
моя を я の代わりに使うといえば,「デルス・ウザーラ」のデルスの言葉を思い出しました。考えてみれば,あれもかなり進んだピジンロシア語でしょうか。ここで書かれているような歴史を前提にしてあの脚本ができたのかもしれませんね。そうした観点から一度「デルス・ウザーラ」を見てみるのもおもしろそうですね。

回答です
設問) 22人入社

① 22 поступивших в компанию
② В компанию поступили 22 человека.
③ 22 новичка в компании

これくらいしか思いつきませんでした。「22人が入社した」のか「22人が入社している状態」なのかどっちにしようか迷いましたので両方提出します。あるいはもっと別の画期的な表現方法があった?
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珍しく出張があったので回答が遅れました。お詫びします。1週間以上ならコンピューターを持って行くのですが。出題は新聞などの見出しという感じです。ですから全部正解なのですが、出題者としては二番目を推したいという気持ちです。何もいうことはありません。ただ映画の題名は日本では確かに「デルス・ウザーラ」ですが、これは訳した人が主人公の名前の力点を知らなかったか、力点に重きをおかなかったから間違いがそのまま通用しているという事実があります。原音に近く書けば、「デルスー・ウザラー」で長音記号をちょっと加えるだけで、より原音に近くなるのですから、そういうデリカシーのない訳というのは(ロシアの百科事典には力点がついているので、それを調べる手間を省くかどうかです)どうかなと思います。もっともロシア語で書かれたものを和訳で読むのは原文が見つからなかったときだけで、このАрсеньевのДерсу Узалаもロシア語で読みました。東洋文庫にも和訳があります。この主人公も確かチュルク系の民族でしょうから、アクセントはトルコ語同様語末です。

Posted by メイ at 2011年08月22日 23:11

お仕事だったのですね、良かった良かった。

на компанию、на предприяниеといった言い方が可能なのですね。
英語で言うthe companyのような言い方でしょうか。
これでははっきりしないので露文として成立しないのでは、と考え
当社を入れておりました。
動詞が中性を取るのが一番意外でした!
22"人"ではなく、22そのものが形式上の主語になる、という発想なのでしょうね。
ありがとうございました。


>デルス・ウザラ
デルスの民族をざっと確認してみたところ、
作中ではゴリド(現ナナイ)となっているものの、
ウデヘの線も強いのではないか、との研究がひっかかりました。
そうした研究者でさえも、デルス・ウザーラの表記を使っているのは驚きです:
誤記のまま周知されてしまっているからでしょう!
ナナイにせよウデヘにせよツングース諸語のことばで、
母音調和や膠着語、SOV型の語順、語頭にR音が来るのを嫌う、
というテュルク諸語との共通点も多いものの、
基本語彙が大きく異なるため、今のところ共通の語族であるとの証明はできていないそうです。
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на компаниюではなく、в компаниюです。фирмаはв/наどちらでもいいのですが、наが多いように思われます。

Posted by コーシカ at 2011年08月28日 11:56
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