2011年08月07日
●和文解釈入門 第89回
時事ロシア語が人気のようでNHKのテキストやユーラシア研究という専門誌まで載っている。結構なことだは思うが、どうして本文に対して和訳と語義だけで終わりなのだろう。露文解釈の勉強だけだと言わんばかりである。なぜこういう事を言うかというと、体の用法も含めての文法的な説明や類義語の使い分けなどの解説がないと、和文露訳では使えないと思うからである。全ての文が「サクラが咲いている(いた)」のような現在や過去時制の不完了体で終わる文とか、「バラは赤い」というような名詞や形容詞を入れ変えればできるという文というのはあり得ない話であろう。会話のための和文露訳につかえるような一工夫を望む次第である。
設問)「全てはジッパーかマジックテープでとめてある」をロシア語にせよ。
(訳)
全てはジッパーかマジックテープでとめてある
Всё застегивается молнией или липучкой.
・構文は不完了体の受け身と考えました
・代表単数と考えましたので всё、молня、липучка と単数で揃えております
第47回にてさとうさんが下記のご回答をなさっていましたが、
今回は застёгивать / застёгиваться の組み合わせが辞書にも記載があること
(研究社652頁、岩波533頁、ЗиР219頁)、
後者は前者の受け身の意味も持つことを確認しましたので、問題ないと判断しました。
不完了体に-сяをつけると全ての他動詞が受け身になるわけではない。
状態を意味する動詞では不可である。
久々に研究社和露が大活躍。
молния でジッパーとは!巧いたとえですね。
マジックテープ(これもクラレの商標なんですね)は
Velcro というのが欧米の商標と聞いたので、велькро かと思いましたが、
липучка が相当するようです。
辞書には軒並み「蝿取り紙」で例が出てました(研究社936頁、岩波789頁、ЗиР313頁)。
ロシアにもあるんやろか(ロシア我楽苦多市にあったかな…)
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マジックテープの訳もすんなりできたようで、インターネットと辞書をうまく使いこなしているのが分かります。ただ、застёгивать молниюという言い方もするのは間違いないですが、それだとМолния застёгивается.となるはずです。ここはВсё застёгивается на молнии и липучки.としないと語結合的におかしいと思います。代表単数というのはものの本質をいう場合に使われるわけで、このように単にジッパーとマジックテープが使っていたという散文的な場合は複数になるものは複数にするのが普通です。哲学的な場合は代表単数が来ると考えても間違いではないでしょう。ハエ取り紙はЗайцевという小説家はлипкие бумажки для мухиと使い、ЖванецкийというРайкинの台本を書いた有名なコント作家はлипкая бумагаを使っています。私の訳は、Всё крепится на молниях или липучках.マジックテープは面ファスナーの商標名。こういう日常でも使われるが、まず和露辞典にないような単語を調べるには、マジックテープを英語で何と言うか調べ、Velcro(これも商標名)だと分かれば、VelcroかВелькроでヤンデックスなどを使って調べてみれば正解が出るはずである。今回の出題は分からない単語が出てきたときに、どれだけ早く調べられるかをテストしたものである。時事ロシア語は難しくないというのはわりに簡単に調べがつくからである。
ありゃ、крепитьсяが使えるんですか。
крепкий とか укреплять と関連の有りそうな語ですね。
крепёжをアンカボルト関連の商社の名前で何度か目にしています:
アンカはそのまま анкер だったはずなので「ファスニング」くらいの意味なのでしょう。
на+前置格で「…で」の意味に広く使えるんですね~
交通機関しか頭に有りませんでした…
やはりマジックテープやチャックは単数ではないのですか…
体の選択は第10回とか21回などを参考にできるようなった分、
最近は単数か複数かで悩むことが多くなった気がします。
蝿取り紙のご説明もありがとうございました。
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крепёжは「止め具」という意味で、ボルト、ナットなどの総称語です。