2011年06月24日

●和文解釈入門 第49回

完了体は新規の事柄を示すために、その動詞本来の意味のほかにいろいろなニュアンスがつきやすい。不完了体はといえば、刺身のつまのようではあるが、動詞本来の意味がちらついている。ここのところが体の使い分けの勘どころだと思っている。
肉厚は英語のwall thicknessで、パイプの管壁の厚みтолщина стенкиであり、鉄鋼用語としては常識のためか鉄鋼関係の辞書にも出ていないことがある。маркаという単語は昔鉄鋼関係の仕事ではмарка стали(鋼種、ただ技術者はグレードsteel gradeと英語を使っていたが)というので覚えた。この単語は切手という意味のほかに、сорт, типという意味がある。しかし、使い方にはコツ(骨)がある。車種というのはвиды автомобилейで、これは乗用車、トラックなど用途別を指すが、марки автомобилейといえばトヨタ、ホンダなどメーカー名を指し、その中にさらに車名модели автомобилейがあるといった具合である。日本語の「車のグレード」はスタンダード、デラックス、ハイデラックス、カスタムの別のことであり、ロシア語ではклассであろう。
設問)「日本製の液晶テレビのどこが違うのか?」をロシア語にせよ。

Posted by SATOH at 2011年06月24日 12:52
コメント

液晶、というかクリスタルが曲者でした…

(訳)
Чем отличаются японские ЖК
(=жидкокристаллические) телевизоры?

В чем отличаютсяかな~と辞書を見ると
отличатьсяで造格を取る場合
「…の点で抜きんでている、際立っている、優れている、特徴的である」
という意味があるようなので、そちらを使いました。
(研究社1,360頁、отличаться)
(科学アカデミー2巻688頁、同)

それよりも混乱したのが液晶の訳でした。
英語でliquid crystalとあったので
жидкий хрустальやろうけど一応辞書で確認して…
いくら探しても出てきませんでした!
なんでやねん、と思ってマルチトランで調べると
жидкийはまあええとしてкристаллと続いておるではありませんか!!
え~crystalがхрустальと違うんかいな…
忘れないようにそれぞれの定義を引いておきます。

кристалл
1. Твердое тело, имеющее естественную форму многогранника.
2. То же, что хрусталь.
(科学アカデミー2巻130頁、кристалл)
лが二つあるので気になって調べてみました。
どうやらこの子はドイツ語からきたみたいです
(der Kristall)。

хрусталь
1. Вид стекла высокого качества, обладающее особым блестком и способностью сильного преломять свет.
2. Изделия предмет из такого стекла.
3. То же, что горный хрусталь.
(科学アカデミー4巻628頁、хрусталь)

маркаは個人的に「…ブランド、…という銘柄」という覚え方をしています。
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ユーラシア研究43号に書いたエッセー「一つが二つ、二つが一つ」で書きましたが、再録しますと、「ガラスはстеклоだが、工芸用ガラスとかクリスタルガラスとなるとхрустальといい、シンデレラのガラスの靴はхрустальные туфелькиである」
液晶は今やテレビの定番ですから、時事ロシア語がどうのこうのという前にこの程度は覚えておいたほうがよいでしょう。つまり身の回りの物はすべてロシア語にいいかえれなければなりません。訳は正解です。私の答えと解説は、Чем отличается жидкокристаллический телевизор японского производства?
「日本製(である)」ならСделано в Японииとすればよい。「~製」といっても素材を示すなら、орудие из меди(銅製の道具)のようにиз + 生格を使う。

Posted by コーシカ at 2011年06月25日 09:15

ありがとうございます。

今回の正解は単数のテレビなのですね。
「世にテレビは数あれど、日本製のは…」
と限定されているので単数なのでしょうか(英語で言う定冠詞 the のように)。
前回の мера が複数を取るのは
講じられる措置は一つだけかもしれないし二つ以上あるかもしれない
という含みがあったために複数というのは納得できました
(英語の不定冠詞 a に似た使い方と感じました)。

>марка стали(鋼種)というので覚えた。
>この単語は切手という意味のほかに、сорт, типという意味がある
鋼の種類と言いますと、JISで言うSS400とかS45C、SCMといった記号?も含まれるのですか。
こちらは露露を見る限り сорт の方が厳密な気がしました。
марка で鋼種の意味を持つとなると、
「セベロスタリのAという鋼材はタタでいうB、ポスコだとCに相当する」
と各鋼材メーカの商標といった含みが強いような気がしますので
そちらのことを主には指して使われるのでしょうか。
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この場合テレビが単数なのは、単数で概念を一般的、総括的に示す方法です。これを代表単数といいます。厳密にいえばこれは本質的な事柄を示す時に用いられます。例えば、Человек - это мыслящий тростник.(人間は考える葦である)という文では、作者の人間の本質ということを示すという意図があるから人間の単数が使われます。ただ設問の場合は複数でも意味は変わらないと思います。これだと日本製はいろいろあるが全般的にという感じでしょう。これを一般的複数といいます。鋼腫というのはГОСТなどで規定されており、鋼種Ст3спというのは炭素鋼углеродистаястальでспокойная стальキルド鋼(脱酸の十分したものkilled steel)であることを示しています。45X1は鋼の中のクロムの含有量を規定したものです。つまり鋼種で製法や成分まである程度分かるのです。

Posted by コーシカ at 2011年06月25日 21:41

ありがとうございます。

>代表単数
>厳密にいえばこれは本質的な事柄を示す時に用いられます
手許の文法書等々を当たりましたが見つけられませんでした。
名詞の数も気になるお題の一つです。読む時に注意してみます。

>鋼種というのはГОСТなどで規定されており
うわぉ
ということはやはりJIS記号のような意味も含まれてくるのですね:
SxxCなら、炭素を0.xx%含む機械工具鋼、
SCMxxなら、炭素は0.xx%含まれとるけどそれ以外にも
クロムとモリブデンが添加されとるで焼きが深うまで入りまっせ、
というように(両方ともJISの規格です、念のため)。

アルミ等の非鉄金属にも3000やと○○、4000番台は××と
JISで種類と組成が規定されているようです。
この分では非鉄金属の種類もмаркаでカバーするのでしょうね。
金属関連でмаркаが出てきたら注意します。

ところで
черная металлургияが鉄鋼業を
цветная металлургияが非鉄金属の冶金を
それぞれ指すというのを知った時、
日本語でも「くろがね(鉄)」、「こがね(金)」、「あかがね(銅)」と言うのを思い出しました。
また露語の銅は медь で、はちみつ мёд と
関係がありそうな気がします:色が似とる?からかな。
面白いですね。
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単数と複数についてはロシア語文法便覧(宇多文雄、東洋書店)の73及び74ページの説明が分かりやすいと思います。SUSなどはかなり一般的になってきて、ステンレスだなとか分かるので、この方面の知識もある程度必要です。面白いのは中国語で非鉄は有色金属と書くのです。これなどソ連と仲の良かったころソ連から技術者が中国にかなり行っていましたからその影響かなと思っています。鋼種記号については次回の本文に書いておきます。

Posted by コーシカ at 2011年06月27日 00:34

ありがとうございます。

>面白いのは中国語で非鉄は有色金属と書くのです
えぇ~
中国語は「そのままやんか!」ということが結構ありますが、これも原語がバレバレですね:
例えばパソコンのソフトウェアを軟件、ハードを硬件と言ったり、ウィルスが(電脳)病毒だったり。
日本語のカタカナよりよほどよく分かると思った記憶があります。

中国語のパソコン用語の頁を見つけました。
ご参考までにどうぞ。
http://www.qiuyue.com/jc.htm

Posted by コーシカ at 2011年06月28日 22:59
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