2011年06月19日
●和文解釈入門 第44回
「サクラが咲いている」ほどではないにしろ、ロシア語の作文で不完了体現在形の状態、繰り返し、習慣を使って作れるものというのは、初級者でも語彙さえ分かれば作れるのだから、あまり出題する意味はないように思う。それで少しでも実戦で使えるようなものをいろいろなバリエーションで出題するように心がけている次第である。
コントロールをконтрольと訳すのは、必ずしも適切でない場合もある。管理や点検という意味ならいいが、例えば「外国演奏家の入国管理」はконтроль над въездом в страну инстранных исполнителейとなるし、「品質管理」はконтроль качества (за качеством)となる。контрольというのは監視してのチェック(何か異常が起きないか管理・点検し、起きたら正常に戻す)、モニタリングмониторинг(状態のチェック)、ないしは同じ制御でも抑制という意味の制御なので、正否(順調かどうか)のチェックという意味ではпроверка(点検、チェック)に近い。ただпроверкаには監視して(つまり長期にわたって)という意味はない。だからпроверка контрольрых работは筆記試験の採点(添削)となり、これにконтрольは使えない。また操作を含む制御という意味ならуправление + 造格を使う必要がある。управление автомобилем(自動車の操縦)でも分かるようにуправлениеは意のままにするという意味のコントロールで、дистанционное управление(遠隔操作)、управление системойシステムのコントロール(制御)などである。ただこの頃は英語の影響かконтроль системыというのもビジネス(金融)用語では見る。この場合モニタリングという意味でのコントロールの意味合いが強いのだと理解している。
「犠牲にする」という意味ではжертвовать/пожертвовать + 造格とпоступиться/поступаться + 造格があるが、жертвоватьの方が大切なものを犠牲にするという意味合いが強い。Я всем пожертвовал ради тебя.(お前のためにすべてを俺は犠牲にしたのだ)などと使う。骨はкостьだが、傘の骨はзонт со сломанной спицей(骨が壊れた傘)のようにспицаを使う。
設問)「研究所は地下鉄で1時間のところにある」をロシア語にせよ。
さとうせんせい
За час на метро доедете до института.
よろしくおねがいいたします。
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これで意味は通じると思います。ただинститутには単科大学と研究所という意味があるので、ここを明確にしないと聞いている方はどちらなんだろうと思うのではないでしょうか?私の答えは、Научно-исследовательский институт находится в часе езды на метро.
このような練習問題では「~は~キロのところにある」というのが多いと思うが、日本語では時間でいう場合が多いので、そういう想定で出題した。「島原は雲仙の9,5 kmのところにある」はСимабара лежит в девяти с половиной километрах от Унзенаとなり、в + 前置格が来る。
(答)
Институт находится в часе езды на метро.
находитсяと不完了体なのは、
真理の表示としての不完了体現在形です。
NHK露語ニュースでも
「福島第一原発から数百キロに位置する横浜市で学校給食の安全性の調査が行われた」
というような内容でраспалагаетсяと不完了体現在形で出てきた記憶があります。
だから今回も
Институт распалагается час на метро.
かな、と思いましたが、
часの据わりが悪いので辞書を引いていると
Город находится в часе езды поездом.
町は列車で1時間のところにある。
という例文があり、そちらの方がしっくりきました(岩波2,157頁)。
露露(科学アカデミー、オージェゴフ)もЗиРも(さらっと)見ましたが、
特に参考となる文例は見当たりませんでした。
>управление + 造格
>управлениеは意のままにするという意味のコントロール
そういえば、マスターする、使いこなすという意味で
владеть русским языком
などと言えるようですが、この子も造格を取りますね。
前置詞なしの造格なりゃこその意味合いがありそうです。
>骨
鉄骨とか船の竜骨はどうなるんでしょう。
うちの技術辞典も戸田和露も総動員したけどわからない~
скелетを使うんではなかろうか
と、露露辞典のкостьの定義を見て思いました:
Отдельная составная часть скелета позвоночных животных и человека.(科学アカデミー2巻、114頁)
う~~~む、どない言うんやろ…
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コーシュカさんのように和文露訳をする場合、プロも露和辞典を使う場合が多いのです。使ってみればわかりますが、和露はほとんど役に立たないのです。こればかりは使ってみないと分からないでしょう。この構文は真理だから不完了体現在形というわけではなく、たんに現在の状態(存在)を示しているのにに過ぎないと思います。真理というのは「万有引力」とか「地球は太陽の周りを巡る」とかの公理を指すと理解しています。鉄骨はстальная конструкцияでよいと思いますし、竜骨はкильです。скелетはкостяк, остов と同義で、動物や人体の、または文学作品の骨格(骨組)という意味で使うのが普通です。さてコーシュカさんの答えですが、構文的には完璧です。ただинститутについては、もっと明確に表現したほうがよいと思います。asukaさんのところに書いた私の解説を参照ください。
ありがとうございます。
>институтについては、もっと明確に
>Научно-исследовательский институт
言われてみれば、NHKのニュースでもこう言っていたように思います。
…と言っているそばからニュースで使われていました!
気をつけます
>和露
最近ほとんど見なくなりました。
ほんっっまに使えへん…
研究社露和は類語の囲みが豊富なので
語彙を増やすのにはいいと思います。
それでも名詞ばかりですから、脱!初級のための
読解や作文で役立つ程度かな…という気がします。
>たんに現在の状態(存在)を示しているのにに過ぎないと思います
あ、そうか。
研究所ですから移転することもあり得ますもののね。
今回の文では
-なぁなぁ、研究所までどれくらいかかるん?
-地下鉄で1時間くらいやね
と、在るかどうかは2の次、お刺身のつまですから
不完了体でないとおかしくなりますものね。
>鉄骨はстальная конструкцияでよいと思いますし、
>竜骨はкильです
ありがとうございます!!!
やっぱりструктураを使うんですね。
鉄骨5階建ての物件、だと
пятиэтажное здание со стальной структурой
となるのでしょうか。いやいや
сталеструктурное пятиэтажное здание
かな(うわ長いな~、たぶんこっちではないな~)
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конструкцияとэтажныйは相性が悪そうなので、пятиэтажное здание со стальным каркасомぐらいでしょう。ただ鉄骨といっても鉄筋コンクリートならпятиэтажное железобетонное зданиеとなります。
うわ、寝ぼけてました。
структураではなくконструкцияですね。
каркас
鹿児島名物、と覚えておきます:
桜島とシラスに揉まれて育ったまっこと強い構造でごわす、ちぇ~すと!
忘れないように定義も引いておきます。
Остов какого-л. сооружения.
Проволочная основа для некоторых матерчатых изделий.
(科学アカデミー2巻34頁)
他にもостовという言い方もあるのですね。
こちらは骨とか支えを強調した言い回しという感じですね(上手く言えませんが)。
構造の他に、論文の骨子などでも使えそうです。
Внутренняя опорная часть здания, сооружения, устройства, на которой укрепляются все остальные его части; каркас.
То, что составляет основу чего-л., самую существенную часть чего-л.
(科学アカデミー2巻656頁)。