2011年06月18日
●和文解釈入門 第43回
これまで銀閣寺は名ばかりで銀はなく、これは当時の幕府にとっては金がかかり過ぎるからとか、銀箔はすぐに空気中の硫黄と化合(硫化)して黒ずむというのを昔の人も知っていたはずだから、銀箔を貼るというのは初めから考えていなかったはずだとかという説を読んだことがある。ところがテレビでNHKを見ていたら、銀閣は黒漆に白土を塗り、その上にミョウバンквасцыを塗ってキラキラさせたいたのではないかという仮説に関する番組が放映されていた。このように定説というのは変わる可能性があるので、日本のできごとについては、新聞やテレビでよく注意を払っておく必要が通訳やガイド志望者には必要である。
ロシア語の授業でロシア人のインフォーマントと日本人講師の組み合わせがベストだと思っている人がいるかもしれない。ロシア人に適切な例文を提供してもらう事を期待するわけだ。ただ講師がどういう例文を欲しているかについて互いの意思疎通が完璧に近くうまくいかないと、ロシア人を発音やイントネーションだけに使うというもったいないことになってしまう。100%意志疎通が出来る程度のロシア語の語学力を持つ人なら、敢えてロシア人のインフォーマントを使う必要はないのではないかという理屈も出てくる。意志疎通が95%でも、プロとして必要に迫られて会話の和文露訳をした事がない人は、あらゆるとまでは言わないまでも、多くの事例についてロシア語が出てこない。授業で使うべき会話で使える例文のストックが貧弱だからだ。ロシア留学も1~2年程度なら自分の言いたい事(用足し)をする程度である。通訳志望なら普通もう2~3年は通訳の修行する必要がある。まして人に教えるには類語の使い分けや体の用法など理論面で完全に理解していなければならず、会話面での切磋琢磨もまた必要となるからそう簡単ではない。
それにいくらロシア人でも適切な例文というのがすぐ頭に浮かぶというとは思えない。そういう例文というのは結構探すのが難しいというのは骨身にしみついて知っている。いろいろな分野の本や雑誌などを読んでも、いい例文は1年や2年ではそんなに集まらない。有名作家の文は著者特有の文体が多く、実はありふれているようで、外国人が会話で役に立ちそうという文が一番見つけるのが難しい。日本同様ロシアでも文章にはできるだけ個性を出せということが作文でも言われているからで、逆に素人でもジャーナリストでも変に格言などをひねったりして気取った文章を書くことが多いので、それらはほぼ使えないのが現状である。いい例文というのはその語義の意味を適切に示すのはもちろん、標準用法で使えるぎりぎりの線まで示すことが出来る例文である。
アキレス腱は医学用語ではахилловое сухожилиеだが、強者の弱点という意味では、ахилессова пятаという。「行列」は並ぶものはочередьだが、祭礼などの移動する行列はшествие. процессия, ход (крестный ход 正教の十字架行進)という。また縦列はколоннаで、横列はшеренга, рядでその場を動かないものである。Я велел колонне остановиться, а сам скорым шагом, почти бегом , направился по середине улицы к шеренге солдат.(私は縦隊に止まれと命令して、自分が早足で、ほとんど駆けて、通りの中央の兵士の横隊に向かった)などという。шпалерыは道の両サイドの木立とか人の列を指す。ガイドはэкскурсовод は博物館や展示会ので、гидは観光案内のを指す。牙はклыки, бивни(ともに2本が普通なので複数形で使うのが多い)があるが、клыкはもともと犬歯と牙という二つの意味があり、猪、象、セイウチの牙を指す。бивеньは犬歯と門歯резецが前に発達した牙で、猪、象、セイウチ、マンモスのを指す。
設問)「仕事を時々家に持ち帰るんです」をロシア語にせよ。
持ちかえる…с собой?いやいやそれはない
と悩んでおると、ありました(研究社1,860頁)。
(訳)
Иногда я приношу домой работу.
第10回の一覧に
>j) 多回体的用法 → 不完了体現在形
>Он человек хороший, правда, иногда выпивает.
>(時々は飲むかもしれないが奴はいい奴だ)
とあり、これに該当すると考えました。
銀閣の話は初耳です。なるほど、という感じです。
もっとも銀など貼らなくとも、霧雨とか新緑とかを添えてひっそりと静かに輝く建物ですから、
いぶし銀の味はあるんですけどね(だから銀閣?←違います)。
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金閣は2年に1回ぐらいは仕事で行き、今年の3月初めにも行ってきました。金閣、竜安寺、清水寺は京都観光の定番です。ところが銀閣は行ったことがありません。いずれはと思っています。答えはその通りで、現在完了形による繰り返しという和文露訳では一番多い出題例だと思います。私の答えと回答は、Иногда я беру работу на дом.
на домの代わりにдомойでもよいが、そうなると口語的なニュアンスが出る。на дом というのは固い言い方で、語結合もある程度決まっている。вызвать, пригласить, прислать, приносить, доставить, послать, выслать, отправить, выдатьなどという動詞(不完了体も含めて)とともに使われ(無論домойも使える)、「自宅に」という意味のほかに、「誰かのお宅に」という意味があり、домойの方が動詞とはもっと自由な語結合がある。ちなみにна домの力点はнаにある。
братьですか~
まぁ何と意味の広い…
>на домの代わりにдомойでもよいが、
>そうなると口語的なニュアンスが出る。
そうなんですか、覚えておきます。
逆にна домはかちっとした文体の時にここぞ!と使えそうです:
モンゴルの夏祭り(ナーダム)、と覚えておきます。
>ахилессова пята
かかと!これは聖書由来に違いない(創世記3章15節など)
と辞書を引いてみると
無敵のアキレスが唯一の弱点たる踵を射抜かれたために命を落とした、とありました
(研究社53頁、岩波46頁、科学アカデミー1巻52ページ)
…あれ?