2011年06月15日

●和文解釈入門 第40回

ロシア語の文を見て、正しいかどうかとか、ロシア語では普通はこうは言わないと述べるのは、ロシア語の会話がかなりできる日本人(ないしはロシア人)にとってはやさしいことである。しかし学習者が今後誤りをしないために、なぜそうは言わないのかという問いに答えられないのなら、いくらロシア語のうまい日本人であっても、学習者にとってはロシア語のインフォーマントに過ぎないことになる。無論初級の段階では名詞の格変化とか、動詞の活用など丸暗記しなければならないものもあるし、それに半年ぐらいかかるのは理解できる。ただその後も語彙や例文の丸暗記を続けて行くのかという事である。二十歳を過ぎた学習者でそういう事を続けられる人は限られるだろう。私のように仕事で技術ロシア語を覚えざるを得ない職場にいたというのは例外の部類だと思う。だから初級者は露露辞典を使えるレベル(私のいう中級レベル)にできるだけ早く達するように語彙を増やすことが先決である。露露辞典は国語辞典と同様、説明に使われている語彙は基本語彙である。そのため説明が隔靴掻痒になることもあるが、記載の例文なども露和辞典と組み合わせて使えば、ロシア語で考える力がつき、これが露文解釈の力をアップさせる原動力となる。通訳やガイドといってもロシア語で話しているばかりではない。ロシア語を聴き取る力も重要であり、聞き取りの練習のほかに語彙の豊富さが重要であるのは論をまたない。
ロシア語の出題をするときには設問には、できるだけ文法的な理詰めの回答が必要であると考えている。できるだけこれは例外だから(丸暗記せよ)というのを限りなく少なくしたいものである。完了体と不完了体の用法の区別にせよ、こうは言わないという答えでは学習者は納得しないし、またそこで納得したらロシア語の学習力も伸びないという事はおわかりだろう。
Я прошу (Мы просим)とЯ попрошу (Мы попросим)の違いを、後者は未来時制で使うので、日常会話では使わないと考える人がいるかもしれない。попроситьはПопросите, пожалуйста, г-жу Максимову.(マクシーモヴァさんをお願いします)と電話や受付で使うぐらいと思っている人もいるだろう。例文を挙げるとЯ прошу вас помочь мне подготовиться к экзаменам.(試験の準備をするので助けてください)とか、Я попрошу вас действовать строго по инструкции.(指示に厳密に従って行動するようお願いします)があるが、前者はお願いベースであり、後者は丁寧であっても命令である。日常でпопроситьをよく使うのは、警察官がПопрошу документы.(身分証を拝見)や駅員がПопрошу билеты.(切符を拝見)で、これらの場合はпоказать, предъявитьが省略されているとはいえ、お願いではなく、見せなかった場合は署や、駅の事務所に任意かどうかは別にして同行を求められるという意味で命令である。一方Прошу!は部屋などに案内される場合に使われるが、あくまでお願いベースであり、行かなくてもかまわない。предложитьも文脈で判断しなければならないことがある。Пассажирам предлагается покинуть самолёт.というのは「乗客に提案している」わけではない。「乗客に飛行機から離れるよう指示が出た」という意味で命令である。
設問)「間違っているかもしれないが、家畜の中で鶏より愚かなものはない」をロシア語にせよ。

Posted by SATOH at 2011年06月15日 07:58
コメント

さとう先生

Может Я не права, среди скота всё же нет дураки кроме курицы.

よろしくおねがいいたします。
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少しは時間がかかるかと思っていましたが、実に素早い回答ですね。新記録でしょう。まず、細かいようですが、Можетの次にカンマが要ります。これはможет бытьと同義語だと判断するからです。яは小文字。これは単なるタイプミスでしょう。нетなら否定生格дураковとなる必要があります。これらが文法的におかしいとことですが、意味は通じるでしょう。私の訳と回答は、Может быть, я и ошибаюсь, но во всей домашней живности глупее курицы никого нет.
скотは四足の家畜で牛馬、家禽はдомашняя птица。живностьというのは家禽および小さな家畜を指す。животинаは俗語。出題のポイントは、動物は日本語ではもので受けるが、ロシア語ではктоで受けるということである。例えば、
「(今)飛んでいるのは何なの?」
「ハクチョウだよ」
- Кто летит?
- Лебедь.
上記でも分かるように活動体(動物名詞と呼ぶ人もいる)はктоに対応し、対格は生格に等しい。一方、不活動体(非動物名詞と呼ぶ人もいる)はчтоに対応し、主格は対格に等しい。両者の区別はどの辺までしなければいけないのだろうか?Розентальによれば微生物микроорганизмくらいから、あやしくなって両方使われているという。изучать бактерии/бактерий (бациллы/бацилл, микробы/микробов, зародыши/зародышей, личинки/личинок, эмбрионы/эмбрионов)〔バクテリア(桿菌、細菌、胚、虫の幼虫、胚)を研究する〕基本的には微生物より原始的なものは不活動体として扱い、活動体として扱うのは古い用法とある。

Posted by asuka at 2011年06月15日 11:32

asukaさんの回答と、さとうさんの解説を見ずにトライです

(答)
Нет такого дурацкого домашнего животного, как купица,
но я сомневаюсь, что правильна ли моя мысль.

ちょっとは口語的に、見えへんかな…
間違っているかもしれない、に、こないだ出てきた
сомневатьсяが使えると思いました。
やっぱり全然違う…

глупыйは (人につき)愚かな
と定義されていたのにまんまと引っ掛かりました…
живностьなどという便利な語があったのですか!

活動体はктоで受けるなどとは考えもしませんでした…
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確かに研究社のにはそうありますし、岩波のには何も書いてありませんが、例文を見る限り、動物には使えないかなと錯覚を起こすかもしれません。最新のアカデミーの露露辞典を引くと、умственно ограниченный, неумныйとあり、人についての例文があった後、о животных, птицахと書いてあり、例文があります。私が露露辞典を座右に置けというのはこういう意味でもあります。

Posted by コーシカ at 2011年06月17日 00:23

ありがとうございます。

一番一般的なんはглупыйやろな、
と露露辞典も見たのですが(科学アカデミー4巻本)、
неумныйとかразумныйは人にしか使わんやろ、と考えていたので
余計に足元をすくわれた感じです。

Posted by コーシカ at 2011年06月18日 23:42

Не знаю, прав или нет, но по-моему среди домашних животных глупее всех --- это курица..
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正解です。

Posted by ゴ at 2013年02月16日 23:44
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