2011年06月14日
●和文解釈入門 第39回
最近は投稿が増えてきたので出題のペースが上がってきており、非常に結構なことだと思う。やる気というのは出題者も投稿者も長くは続かないと思うからだ。できるときに集中的にやっておけばよいし、例文というのはまとめてできるだけ多く紹介してもらえれば、コピーしておいて、後で読者が時間のあるときに(仮に1年後でも5年後でも、10年後でも)、やればいいと思う。私は例文を小出しにするつもりはない。それなら設問も10ぐらいまとめて出せばいいじゃないかと思う人もいるかもしれないが、それでは投稿者も出題者(回答者)も設問に集中できないと思う。設問には一応出題のポイントがあり、それをばらばらのテーマで説明されても、読む方も出題する方も頭が混乱するばかりである。1回に一つなら区切りがついて覚えやすいだろう。百回は続けたいし、ネタは200回分はある。設問を作るのは投稿者が回答するよりは簡単である。早ければ2分ぐらいでできる。ただある程度の種類の回答を予測して解説を書かねばならないので、これに少し時間がかかる。しかしこれが私にとって自分のロシア語の知識を整理する上で非常によい勉強になっている。誰でも恥はかきたくない。特に出題者は。このコーナーの例文をロシア人が見ようと、ロシア語の専門家が見ようと間違いを書くわけにはいかないからだ。そうはいっても出題者の特典はある。自分の自信がないのは出さないという特典である。前にも書いたが、出題するよりは投稿(回答)するのが大変だと思うのはその点である。ただ、回答したり、質問したりするのは今がいいと思う。私も若くはないし、やる気がどこまで続くか分からないからだ。ロシアンぴろしきは不滅であっても、半年後、1年後にこの和文解釈入門というコーナーがあるという保証はない。
革命前はロシアの上流社会には動詞にも敬語にあたるものがあった。жаловать(下しおかれる)、изволить(かたじけなくも~される、もったいなくも~される〔命令形で使う〕)、очастливить(~してくださる)、почивать(お休みになる〔眠る〕)、сметь (Не смею и думать этого.〔滅相もございません〕)、соблаговодить(~なさる)、удостоить(なさる)、удостоиться(光栄に浴す)で、かろうじて残っているのはдать себе труда, желать, кушать/скушать, трудить/утрудить себяぐらいであろう。Кушайте!(お召し上がりください)は不完了体命令法の着手の用法で、この動詞は一人称では普通使わない。子供に対して使えばКушай(те)!「召し上がれ」といった感じで、使う人の愛想のよさが感じられる。
скоростнойと言う形容詞は「高速の」という意味だが、少し変わっている。陸海空のエンジンのある乗り物に使うのだが、短語尾はないし、比較級はない、しかもоченьと一緒に使わないという制約がある。ксероксというのはコピー(機)の事で、ペルシャの王様クセルクセス大王Ксерксとはなんの関係ない(Кирはキュロス)。これは英語のゼロックスXeroxを、字面の通り発音したからだと言われている。ほかにコピーそのものをксерокопияというロシア人もいる。
設問)「車の運転が出来ますか?」をロシア語にせよ。
Вы можете водить машину?
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ご回答ありがとうございます。これでも間違いではないのですが、これだと、免許持っていますかという質問のほかに、時間的に(状況的に)運転するのは構いませんかという意味と二つにとられる可能性があります。私の答えは、Умеете водить машину? (Вы ездите на машине?)
この表現が即座に浮かんでこなければ、У вас есть права (водителя, водительсткие)?(車の免許はお持ちですか?)と言えばよい。通訳やガイドは臨機応変が常に要求されるからこういう発想の転換も覚えておくとよい。мочьとуметьの違いは、前者は可能性jвозможностьと蓋然性вероятностьが両方表現できるということである。夏目漱石が教壇でprobability とpossibilityの違いを説明して、自分は逆立ちが出来る (possibility 可能性)が、生徒の前で逆立ちをすることはできない (probability 蓋然性)といったというのを読んだことがある。уметьは習得した能力の可能性のみを示す。無論плаватьという不定動詞自体にも「泳げる」という能力を示す意味があるからВы плаваете?でもよいが、мочьにしろ、плаватьにしろ、意味が他にもあるから、уметьを使った方が聞いている方には誤解がない。このように多義語を使う場合には、書いたものなら文脈はどうなのか読み返せばいいが、会話では意味が伝わりにくいことが多い。だから同義語や類義語で意味の狭いもの(もっというとその意味しかないというのが理想的)を使うというのはよくあることである。
会話がよりロシア語らしく聞こえるようになるためには、時事ロシア語によく出てくるаргументировать(ся)などというような単語を覚えるよりは、Ребёнок ходит.(赤ちゃんは〔もう〕アンヨができる)というような不定動詞(あるいは定動詞も)の用法を徹底的に勉強した方がよい。говорить = владеть устной речьюだから、わざわざВы можете говорить по-русски?という必要はないことが分かる。Вы говорите по-русски?で十分なのである。露露辞典で基本的な言葉を引いて見るのを習慣にすれば、ロシア語は飛躍的に伸びるし、うまくなる。ついでにвероятностьは確率という意味でも使われる。
車の運転はводить (一方向へならвести)だが、飛行機など複雑なものはуправлять самолётом(飛行機を操縦する)であり、ロシア人にとっては箸の使い方も簡単に習得できるものではないから、Японцы пользуются палочками.(日本人は箸を使う)という他に、Володя очень хорошо управляет палочками.(ヴォロージャは箸の使い方がとてもうまい)となるのである。
кушать は革命前の上流社会での敬語だったんですね。面白いです。
今回は、
Вы умеете водить машину?
としてみました。よろしくお願いします。
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正解です。特にいうことはありません。
(答)
Можете ли Вы водить машину?
う~~~ん
上手く言えませんが、不完了体で不定動詞を使うことで
能力とか行為全般を指せるのではないか、と考えます:
ходитьで歩くことができる、という使い方ができるように。
…と確認のために辞書を引くと、ありました。
водить 運転ができる
Ты можешь водить машину?
(研究社225頁)
>後で読者が時間のあるときに(仮に1年後でも5年後でも、10年後でも)、
>やればいいと思う。
語学講座とかを録音しておいても
不思議と後から聴くことがありません(僕だけ?)…
ことがロシア語だけに、ソ連時代のいいものと一緒?で
見つけた時が答え時、という気が個人的にはします。
また今度投稿しよう、と考えると不思議と足が遠のきます。
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kenさんと同じような答えです。私の回答と解説はkenさんのを見てください。いい線はいっているのですがあと一歩です。
さとう先生
Вы возите машину?
よろしくおねがいいたします。
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惜しい。これだと車を車運搬車か鉄道で運ぶように聞こえます。多分単なるタイプミスで、Вы водите машину?だったのでしょう。これなら正解です。
Вы умеете ездить на машине?
(кататься на машине, водить машину?)
№38途中まで読んで、間違いを確信していたのでびっくりしました。
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正解です。第38回についていえば、私のコメントはある程度投稿者の回答を想定したものとなりますが、完全ではありません。投稿者の回答次第となります。только чтоは一般的には結果の現存ということで、完了体過去形が来やすいのですが、必ずしもそうではないというのを強調したかったので、誤解を受けるような印象があるかもしれません。話し手の意識の中に、動作が文の焦点というものがあれば、完了体が、単に電話したという意識であれば、不完了体となります。体の使い分けを公式的(経験なら不完了体過去形とか)、一義的にに覚えると間違いだというのが私の主張です。