2011年04月28日
●和文解釈入門 第21回
「~するつもりです、~します」と言う構文をロシア語にする場合、この構文の日本語には、願望(~したいхотеть, хотеться сделать нечто)、決意(決心быть готовым прилагать усилия чтобы сделать это)、意図(予定намерение)が、バラバラか、あるいはこれらの意味が混じり合っていると思われる。第10回に挙げた表では分かりにくいと思うので、どういう動詞が使えるか、どのようなロシア語の用法の選択肢があるか試しに書いて見よう。
1) 確実な予想
普通「これから~します」という意味(願望の意味がないとき)では、完了体未来形を使うのが普通である。これは確実な予想や意志を意味する。また確実な予想というのは話者がそう考えているだけで、主観的なものだということを覚えておけばよい。「このようなアドバイスをあなたにいたします」は、Я дам вам такой совет.であって、Я буду давать вам такой совет.とは言わない。даватьのように不完了体動詞であっても過程(進行形)の意味では使えないというものは完了体を使うしかない。
この時気をつけないといけない用法がある。現在から未来への移行を示すような意味合いの動詞である。例えばビジネスレターで多用される「~をご案内〔連絡〕申し上げます」をロシア語にするときに、Сообщим (Сообщу) Вам, чтоと完了体の未来形を用いがちであるが、これは間違いであり、一人称現在形を使う。「約束する」、「連絡する」という(заклинаю, запрещаю, каюсь, молю, назначаю, обвиняю, обещаю, освобождаю, предлагаю, предписываю, признаюсь, приказываю, провозглашаю, прошу, прощаю, радуюсь, рекомендую, советую, ставлю~を人に据える, умоляю)のように、後に続く文の示す行為の遂行となる動詞を遂行的動詞(перформативные глаголы)といい、「~ということを遂行する」という意味である。つまりこの動詞の現在形一人称は「約束しつつある」とか、「知らせつつある」という経過(過程)を示しているわけではなく、続く内容について約束する(約束を破ればそれなりの罰を受ける)とか「~という内容をお知らせする」と言う意味であり、「2012年展示会に参加することをご案内申し上げます」Сообщаем Вам, что мы будем участвовать в выставке в 2012 г.は、まさにこの言葉によって連絡(他の動詞なら約束、命令などの)行為を遂行することを意味する。だから、この完了体未来形は「追って連絡申し上げます」Об этом сообщим дополнительно.など、今ではなく後で連絡する(未来に行為を行う)という意味でしか使えない。この他にも「伝える」という意味のシノニム(同義語を含む類義語)のうちоповещать, осведомлятьを除く、информирую, извещаю, уведомляю, докладываю, доношу, заявляю, объявляю, предупеждаюにもこの用法がある。
2) 予定
願望の意味ではないときに、ビジネスなどで特に自分の意思に関係するかどうかは別にしての予定という場合は、30ぐらいある動詞(運動の動詞が多い。精しくは第10回の表を参照)の現在形を使う。一種の時制の転用である。この動詞を暗記しておけば、「~するつもりです」という文が出てきたときに、この動詞が使えれば使うし、使えないのなら、他を当たるのが効率的である。完了体未来形に比べれば、この用法はスケジュールに載っているという感じなので実現の確度はより高いと言える。
「明日歴史の試験を受けるんです」Завтра я сдаю экзамен по истории.(力点はю)
過程の意味で使える不完了体の動詞は、潜在的にこの用法があると思える。かなり使う場面が限定されるが、はっきりとこの用法が使える動詞もある。
「ワインは何になさいますか?」Какое вино вы пьёте?
〔レストランなどで酒を勧められたときに、この答えは「恐れ入りますが、私は酒をたしなみませんので」Спасибо, я не пью.など〕
「女性の皆さんのために乾杯」Я пью за вас, женщин!
「〔アナウンスなどで〕本列車は2分停車いたします」Поезд стоит две минуты!
(このстоятьはбыть на ногах в вертикадбном положении, не двигаясь с места〔立っている〕という状態の意味ではなくて、не двигаться〔動かない〕という動作を示している)
「両親がびっくり仰天したことに、彼は大学をやめると宣言した」К ужасу родителй он заявил, что бросает институт.
3) буду, будетなどのбытьの未来形 + 不完了体
相手の意向を聞く疑問文や、~しないという決意表明(否定的意図)の意味の否定文なら、この構文を考えるべきだ。この構文は口語用法だが、和文解釈(会話における和文露訳)は標準語と口語が主体であるゆえ、大いに使えるので覚えておくとよい。この構文で使える動詞は無接頭辞の単純動詞(пить, строитьなど)や接頭辞のついた運動の動詞が主体だと思えばよい)
「今晩何をなさるおつもりですか?」Что вы будете делать сегодня вечером?
「何をお召し上がりになりますか?」Что вы будете есть?
「何をお飲みなりますか?」Что вы будете пить?
〔この返事は省略しないで言うと、Я выпью пива./Я выпью рюмку вина.と完了体выпить + 部分生格(+ 対格〔容器〕)が出てくるのが普通〕
「お座りになりますか?〔電車、バスの中で〕」Вы будете садиться?
「何をご注文になさいますか?」Что вы хотите заказать?
「何をお飲みになりますか?」Что вы хотите выпить?
このような用法では一般的にхотеть + 完了体不定形が文体的にニュートラルとされ、бытьの未来形 + 不完了体は口語的とされる。またサービス業の人が客に対しては、желать + 完了体不定形を使うのが一般的で、これは商人的文体とされる。
「お昼をお部屋のほうに注文なさいますか?」Желаете ли вы заказать обед в номер?
「ご朝食には何をお召し上がりになりますか?」Что вы желаете на завтрак?
「許して下さい、二度としませんから」Простите (Извините) меня, я никогда больше не буду так делать.〔もっと簡単に「もうしませんから」ならБольше не буду.〕
「奴を背負う〔手で運ぶ〕のはごめんこうむる」Я его нести не буду.
このほかに「(もし)~するなら」とか「~するとき」という場合にも使え、бытьの未来形 + 定動詞も使用可能である。
a)「出かけるときは、ガスを消して下さい」Когда вы будете уходить, выключите газ.
b)「左に曲がれば、駅が見えますよ」Если вы повернёте налево, то увидите станцию.
c) 「貯水池のそばを車で通る時に、一休みするのに素晴らしい場所を教えてあげますよ」Когда мы будем ехать мимо водохранилища, я покажу вам прекрасное место для отдыха.
a)は同時性の構文とか条件提示の不完了体とかいわれるもので、同時性と言っても、主節(上の文ではвыключитеがそうである)の動作まで従属節(この場合はкогда, если以下)は、動作を待っている、待たされる、ないしはいつ動作が起こるか不明なわけである。二つの動作の間に間が空くか、次の動作がいつか不確定な状況であれば過程を示す不完了体が出てくるのは自然である。こういう不確定な状況でкогдаやеслиの後に完了体を使うと、完了体は動作を完結させようとするために、ポンポンと間をおかないような(これからすぐガスを消して、家を出るというような)動作となる感じがして、この和文とは意味が違って来る。この構文の主節にтоが来ないことに注意。ただb)のように主節と従属節との間に明確な前後関係(従属節の動作の後に主節の動作が来る)があれば、если + 完了体, то + 完了体を使う。この構文については第13回の設問の回答でも説明したのでそれも併せて参照願う。
平叙文で使う場合は、この構文は経過、過程、継続や着手の不完了体動詞だが、運動の動詞、動作が一気に終わる動詞を使うような文ではこの構文は避ける。
「止まれ、撃つぞ」Стой! Стрелять буду!
〔будуがあるので動作まである程度間があることが分かる〕
しかし、「明日家に手紙を書きます」というのを、
Завтра я буду писать письмо домой.(書くつもりです)
Завтора я напишу письмо домой.(書きます)
と日本語で訳し分けたにしろ、言っている意味は同じだということがわかるだろう。このように動作が開始して終わるという意味を持つ動詞はどちらの体を使ってもいい場合が多い。「彼に電話します」Я ему позвоню.と Я буду ему звонить.の差は後者が口語的というくらいである。
4) собираться, намереваться, намерен, думать, планироватьという類義語を使う場合。
この類義語は後に不定形を取るので、具体的1回の行為には完了体を、繰り返しには不完了体を使うと覚えておけばよい。この中ではсобиратьсяが使える範囲が広いので、この動詞を使う事を勧める。намеренとнамереватьсяは同義語だが、намеренは現在形でよく使われ、намереватьсяは過去形で使われる場合が多いようだ。これはнамеренだとбытьの過去形を付け加えるのが面倒だという事があるのかもしれない。намереватьсяはнамеравал(а,и)ся(сь)とすればいいだけで楽だからだろう。намерен/намереватьсяはсобиратьсяと違って、重要な決定を下す場面で使われ(留学するつもりだなど)、「散歩するつもりだ」などというどうでもいい場合には使われない。думатьは自発的な個人の決定に使われ、主語は機関ではなく、人間(個人)である。「そこに行くつもりだが、行けるかどうか分からない」Думаю поехать туда, но не знаю, получится ли.という文のように、думатьは最終的に決定が下されないときにでも使える。намерен/намереватьсяはこの意味では使えない。それゆえдуматьはこの意味(意向)では否定文と相性がよくない。дажеやиなど強調の意味の助詞と一緒に使うなどの強意の否定文で使えるのみである。планироватьは長期にわたる予定に使われ、計画に関係する。「休暇は冬に行くつもりです」Я планирую уйти в отпуск зимой.この他に同じ意味でнамылиться(俗語的用法)やрасполагаться(廃用、つまり19世紀の小説を読むには理解しておいた方がよいという事)がある。
完了体のсобратьсяはсобиратьсяと違いニュアンスが出てきて、「前は~するつもりはなかったが、今は~するつもりである」という意味と、「長い事~するつもりだったが、ついにした」という意味がある。前者の例は、Реветь, что ли, собралась!(わんわん泣くつもりかい)というのは「それまで泣くつもりがなかったのに、急に泣く気になる」というニュアンスである。А я как раз собрался (собирался) вам звонить!(ちょうどお電話差し上げようと思っていました)は両方の体が使えるが、それでもニュアンスの差はある。 後者の意味の例文は、Извиинте, что только сейчас собрался вам позвонить, был очень занят.(申し訳ありません。ようやく今お電話できました。忙しかったので)」だが、否定の»не собрался (не собралась, не собралось, не собрались)»では「~しようとしていたが、しなかった」という意味である。Он так и не собрался купить новый телевизор.(彼は新しいテレビを買おうとしていたが、結局買わなかった)であり、完了体未来形を否定するとНикак не соберусь пришить пуговицу – уже неделю собираюсь.(もう1週間ボタンを縫い付けようとしているんだけど、だめだ〔できない〕)と不可能の意味が出る。また、намереваться に対応する完了体ではないが、意味が近い完了体であるвознамериться + 不定形は = начать иметь намерение「~する気になり始める」という意味で、ニュアンスが入る。
上記についても含めて、この「和文解釈入門」は現代ロシア語を対象にしており、19世紀や20世紀初め以前の文学などの文例については対象としていないので悪しからず。
設問「象は鼻が長い」をロシア語にせよ。
У слонов длинный нос.
ではないでしょうか。
前回コメントどうもありがとうございました。
今回もよろしくおねがいいたします。
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惜しい。文の構成の発想(これが一番大事です)も正しいのですが、鼻が違います。これに懲りずに投稿ください。自分が考えたものは心に深く残るものだからです。私の回答は、今回は三上章の有名な日本語の文法書の題名からの出題。У слона хобот длинный. 人や動物(鳥も含めてで、鳥のくちばしはклювともいう)の鼻(船首と言う意味もある)はносだが、象の鼻や昆虫の吻など長い鼻はхоботという。「~は...が~である」というような主題の提示については、日本語においては「~は」がテーマтема(предмет сообщения伝える事柄)であり、「~が」がレーマрема (то, что говорящий хочет сообщить слушающему об этом предмете話し手が聞き手にこの事柄について伝えたいもの)ということになる。テーマを所与のものданное、レーマを新規の事柄に関係するとする場合もある。テーマは通常、文の前に来る。例えば、Павел (テーマ)вполне здоров(レーマ).〔パーヴェルはすこぶる健康だ〕。所有や全体の一部を指す時に前置詞уが使えるので、今回それを使ってみた次第。それ以外ではВ Японии большие глаза - символ красоты и юности.(日本は大きい目が美と若さのシンボルである)とするしかなさそうである。これも普通は「日本では」とした方が日本語らしいような気がする。でも思い切ってВ ЯпонииをУ японцевと入れ替えれば、もっとすっきりするような気がする。
書き言葉(あるいは演説や公式の場の発言)ではчто касается + 生格, то...(~に関して言えば、~は、~ということになると)も使える。Что касается качества товаров импортного и отечественного производства, то нельзя говорить однозначно.(輸入品と国内産の商品の品質に関して言えば、一概には言えない)とか、что касается меня, то...(私はと言えば)などがある。