2011年03月09日

●和文解釈入門 第20回

これまで紹介した類語の使い分けというのは、思い出した時点で書いているようなもので、その中に基本語は含まれていない。和文解釈(会話での和文露訳)には体の用法や運動の動詞だけでなく、基本語の類語の使い分けも重要だと述べたが、ピンとこない方もいると思う。そこで試しにлежать, класть/положить, ставить/поставитьという基本語の使い分けについて書いて見よう。лежатьは何かの表面に水平方向にあるという意味だが、そのほかにも(~の中にある)находиться внутри чего-либоという意味もある。露文解釈ではどうってことはないが、和文露訳ではこの点をよく理解していないと、単純な文で躓く。「ノートは引き出しに入っている」というのは、Тетради лежат в ящике письменного стола.となる。лежатьなど知らなくてもбытьで十分という人もいるかもしれないが、この点が分かっていないと、「小銭を機械的にポケットに入れた」が訳せなくなる。これはЯ машинально положил мелочь в карман.であり、класть/положить には помещать внутри чего-либоという意味があるからである。
「置く」は垂直方向であればставить/поставитьで、水平方向であればкласть/положитьとなると初級で習うはずだ。それでは「皿を置く」はどうなるのだろう?ставить тарелкуが正解である。「靴を靴箱に入れる」は当然ставить/поставить обувь в обувной шкафだが、класть/положить обувьというのも例は少ないがあることはある。ロシア人も迷うのだろう。我々のような古い世代は皿は例外だとか、皿もよく考えれば垂直におかれるものだと屁理屈をこねて覚えたものだが、こういう風に例外や無理やりの暗記を続けると我々古い世代の通訳のように何十万もの文例をその場面その場面で覚えなくてはならなくなる。そういう手間を省くのが文法であり、参考書のはずだ。中級者や上級者にとっても文法や参考書を馬鹿にせず精進し続けることが結局はロシア語上達への早道であることが分かる。ставить/поставитьというのは、底がある物体や支持面積、支持する点がある物体のときに用いられる。
もうひとつ、「目覚まし時計を枕の下に置く」はどうなるだろう?これはкласть будильник под подушкуという。класть/положитьはこのように普通に置く状態でないように置くときにも使われるし、紙や布のように形を変えるものにも使える。класть пальто на стул(オーバーをイスにかける)。無論垂直方向ставить/поставитьや水平方向にкласть/положить置くというのは基本的な理解としては正しい。Не надо класть велосипед на землю, поставь его у крыльца. (自転車を地面に(横に)置いてはいけない。玄関脇に立てかけろ)とか、Положи цветы на стол, я сейчас поставлю их в воду.(花をテーブルに置いて。すぐに水に挿すから)など違いが分かりやすい。
設問)「ご担当は何ですか?」をロシア語にせよ。

Posted by SATOH at 2011年03月09日 20:56
コメント

はじめて送信させていただきます。
いつも大変勉強になるブログをありがとうございます。ちょっと設問にお答えするのが遅れましたが、ぜひコメントいただけませんでしょうか。宜しくお願い致します。


Скажите пожалуйста, какая ваша должность по службе?
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回答がないので和文解釈入門を止めようかどうしようか悩みました。一応続けることに決めたらご回答をいただきほっとしています。asumuraさんのように回答をいただく限りは続けていくつもりです。さてご回答ですが、これでも意味は分かるのですが、「お役職は何ですか教えてください」というものです。ロシア人とて平社員の人はいるわけで、だれにでもいきなりこういう質問をすると失礼になる可能性もあり得ます。私の答えは、
Чем вы занимаетесь?
「(今)何をしていますか?」はЧто вы делаете?で、その答えは「テレビを見ています」とか「本を読んでいます」だが、「何をなさっていますか?」というように職種、担当を聞く場合(主語はあなたでも、御社でもよい)は、設問の答えのようになるのが普通である。だから「この件を担当しているのはペトローフです」はЭтим занимается Петров.となる。案外初級者(中級者以上でもビジネス関係でない人)には使いこなせない言い回しのようなので挙げておくが、ビジネス用語としては初歩の初歩である。これはзаниматьсяの露和辞典の訳が「従事する」ぐらいしか挙げていないことによるものだと思われる。初級の人はзаниматьсяは補語として造格を取るという事を覚えよう。この他にもуправлять(制御する、コントロールする)も補語として造格を取る。補語を取るのは一般的には他動詞で、それなら対格を取るが、помочь/помогатьのように与格を取る動詞もある。こういう例外についてはさしあたってよく使われる動詞のみ覚えるようにすればよい。担当者というときは設問のように動詞を使うのが普通だが、どうしても名詞で言いたいのならисполнительという言い方もある。この設問の答えとして、律儀に同じ動詞を使ってЯ занимаюсь экспортом.(輸出を担当しています)と答えるのもいいが、Я инженер. (Я работаю инженером.技師です、技術関係です)とか、文脈によっては、Мы выпускаем станки.(弊社は工作機械を作っています)などという答もロシア人ビジネスマンや技術者からよく聞く。
 ラヴレーンチエフの和露辞典を見ると、担当はисполнение обязанностейとなっており、この動詞形исполнять обязанностиは「職務を遂行する」とか、文脈によっては「代行する」という意味なので、担当というのとは違うと思う。и.о. (= исполняющий обязанности) министра(大臣代行)などと使い、これは正式の肩書きになる前に(代行という肩書が外れる前に)職に適切かどうか判断するため通常3ヶ月ほど職務を代行するもので、врио (временно исполняющий обязанности 臨時代行)というのもあるようだ。この他にもведать + 造格が載っていた。これは「~担当大臣」という言葉があるから間違いではないものの、ведатьは同じ担当するでもуправлять, заведовать, распоряжатьсяということで、指揮権があるという意味なので、日本語の「管轄する」や「管掌する」に近いゆえに、職種を聞く場合には使えない場合がほとんどである。無論~担当部長とか~担当副社長のような重役には使えると思う。このように和露辞典は類語の使い分けがないのでプロには使えないと思う。

Posted by asuka at 2011年04月28日 20:09
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