2011年02月20日

●和文解釈入門 第9回

 チェーホフの短編「はねっかえり」Попрыгунья(1892年初出)の主人公のモデルについては、ラーザレフ・グルジーンスキーЛазарев-Грузинскийの書いたものの中に、ソーフィヤ・ペトローヴナ・クフシーンスカヤСофья Петровна Кувшинскаяとある。小説の方の主人公はスラム街の治療に尽くす医者の若奥さん(20歳)で、風景画家リャボーフスキーРябовскийと不倫するというテーマである。この画家がチェーホフの友人の画家レヴィタンと噂されたのでチェーホフも困ってしまった。クフシーンスカヤは当時40位で美人でもなく、かなり変わった人だったという。ワシーリエヴァという女性がクフシーンスカヤと最初に会った時のことをラーザレフ・グルジンスキーにこう述べている。馬に乗ったアマゾンという感じで裸体に部屋着をはおっただけで疾走し去ったという。クフシーンスカヤの夫は警察医で、スラムを担当していた。おかげで1年から1年半ほどレヴィタンはチェーホフに腹を立てていたという。クフシーンスカヤもチェーホフに腹を立てたという。ただ夫婦間に波風は立たなかったようである。クフシーンスカヤはぱっとしない画家だったが、死後彼女の絵の展覧会が行われたが、やありぱっとしなかったようである。クフシーンスカヤは夫やレヴィタンやチェーホフより長生きして、モスクワ郊外の別荘である伝染病患者の世話をして伝染病に感染して亡くなったという。
機能動詞というのは日本語の「する」と同様、目的語の名詞の意味の動作を行うという意味になる動詞である。делать, проводить, производить, выполнять, осуществлять, совершатьがそうであると拙著「アネクドートに学ぶ実践ロシア語文法」(48~53ページ)に書いたことがあるが、他の動詞でもそのような働きをする場合もあるので、何回かに分けて書いておく。
- войти/входить в + 対格 -(~になる)
входить в действие (силу)(実施される), в доверие (милость) к + 与格(信頼を得る), в известность(有名になる), в моду(流行となる), в поговорку (пословицу)(語り草となる), в привычку (обычай)(習慣となる), в славу(有名になる), в соглашение(協定を結ぶ), в употребление(使われるようになる)
- дать/давать -
давать веру(信じる), жизнь(息を吹き込む), задание(課題を与える), занавес(幕を引く), звонок(ベルを鳴らす), имя (название, прозвище)(名づける), нагоняй (взвучку, головомойку)(お目玉をくらわす), обет(誓う), обещание(約束する), ответ(答える), отпор(反撃する), отставку(引退する), пас(パスする、トスする на удар), промах(へまする), разрешение(許可する), распоряжение(指示する), слово(約束する、言質を与える), согласие(同意する), телеграмму(電報を打つ), толчок(刺激を与える)。
- пойти/идти на + 対格 (быть готовым, способным, решаться, соглашаться ~に応じる用意がある) –
идти на верную гибель(決死の思いでゆく), на войну(戦争に行く), на всё(どんなことでもやりかねない), на опасность(危険に赴く), на посадку(着陸する), на признание(認める用意がある), на риск(リスクを覚悟する), на уговоры(説得される用意がある), на уступки(譲歩の用意がある)。
- иметь -
иметь влияние(影響する), намерение(意図する), понятие(理解する), соприкосновение(接触する)がある。
設問)「お飲みものは何になさいますか?」をロシア語にせよ。

Posted by SATOH at 2011年02月20日 15:23
コメント

これは現在の状況(今何を望んでいるか)を聞いているのでНСВが適当かと。
Какую напитку Вы желаете?
は、聞きなれないせいか、少々違和感があります。
よくレストランや遊びに行った先で言われるのは「飲み物」を除いた表現、
Что Вы желаете?
ですが、この場合は、
Что Вы желаете пить?
が最も適当ではないでしょうか。
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正解です。ただビジネスレターではないので(一応会話なので)、無理にВыと大文字にすることはない思います。хотетьを使うとやや丁寧さに欠けるということでжелатьが最近多用されているように思います。このжелатьも後述の意向(敬語の意味の)という意味で使われているのではないかとも思います。ころでドスティックというのは、カザフ語の友情достыкからきているのでしょうか?私の回答は、Что вы будете пить?これはアエロフロートの機内乗務員が機内サービスのときに言う言葉です。бытьの未来形と不完了体を組み合わせて「~するつもりである(意向)」という意味(口語的な用法)になる。こういう意向を示す動詞には、これ以外собираться, намерен, намереватьсяがあるが演説などではともかく日常会話で使われることはほとんどない。これらはбуду/будетなどと違い、後に完了体の不定形が来れば、具体的な1回の行為を、不完了体が来れば繰り返し行われる行為を示す。このбытьの未来形と不完了体の不定形の組み合わせというのは、私が思うには文法的に非常におかしい構文である。前にも書いたように、不完了体は新規の出来事には使えないはずだ。このбытьの未来形 + 不完了体の動詞の原形(不定形)というのは、口語的な用法だから、そういう体の用法を無視しても仕方がないと考えられないこともないが、пить (читатьだって補語を取らない自動詞なら対応の完了体はない)もそうだが、対応の完了体がない。だから代用として不完了体が使われるのもやむをえないかなと思う。そういう動詞の用法が広まったのかもしれない。
前にロシアのヤクザの実録ものを読んでいたら、Платить когда будете?(支払の方はいつされるつもりですかな?)という表現に出くわした。ヤクザが素人にすごんでいる一場面だったと思う。このくらい良く使われるのだろう。私が一番使ったのは交通違反でいちゃもんを警察官につけられたときに、Больше не буду (後には理論的にはделать, нарушатьというのが来ると考えられる).(もうしません)だった。自分も結構使っているのである。ただ地下鉄に乗っていて、「下ります(下りるつもりです)」をБуду выходить.とするとおかしいことになる。地下鉄の電車が駅に止まるか、ドアが開くと言う合図があってはじめて、「下ります」というのだから、やはりВыхожу.でなければおかしいし、モスクワの地下鉄にもよく乗ったが、Вы будете выходить?というのを一度も聞いたことがない。Вы выходите?(下りますか?)とはよく言われた。これは不完了体現在形のの予定の用法である。未来の時制で使う体をどちらかにするのは、文脈によるのだが、基本は新規な事柄であれば完了体を、繰り返しであれば不完了体をというのが私の考えである。
по-という接頭辞のついた始発の意味を持つ動詞(пойти, поехать)の不完了体は、「学校に行きます」(通学という意味ではなく、今これから出かけると言う)意味では、Я буду идти в школу.とは使えない。それはпойтиとидтиが完全な体のペアではないからではないかと思われる。この意味ではЯ иду в школу.(前に紹介した現在形で未来の予定を示す方法)である。ないしはЯ пошёл (пойду) в школу.бытьの未来形 + идти (ехать)という表現が絶対に使えないかというとそういう事はない。文の意味の主体とならない(刺身のつまのように)のであれば可能である。Когда мы будем идти миио кинотеатра, мы купим билеты на завтра.(映画館のそばを通ったら、明日の切符を買おうね)という例もある。
ついでに「~するつもりである」という意向の動詞のコレクションを紹介する。一応拙著「ビジネスロシア語」の159~160ページに書いたが、そのほかにも、думать, задумать/задумывать, замыслить/замышлать, иметь намерение, намерен, намереваться, планировать, подумывать, помыслить,приготовиться/приготовляться, расположиться, рассчитывать, склонён считать, хотетьでいずれも後に動詞の不定形(完了体の場合は具体的1回の動作、不完了体の場合は繰り返し)を取る。

Posted by ドスティック at 2011年02月22日 20:30

>бытьの未来形と不完了体を組み合わせて
>「~するつもりである(意向)」という意味(口語的な用法)になる
なるほど。
友人宅にお邪魔した時も
Будешь чай или кофе?
と訊いてくれましたが、これも
(Что ты) будешь ...?
やったんですね。

>хотетьを使うとやや丁寧さに欠けるということで
>желатьが最近多用されているように思います。
そんな違いがあるのですね。
以前のслепой
→слабовидящие и незрячие
の言い換えと合わせて覚えておきます。

Я хотел бы ~
Хотелось бы ~
は「~したいのですが」のつもりで使っていますが
こちらは丁寧な言い回し、として使っても大丈夫でしょうか?
Желаю, чтобы ~ 「~を希望します」
は上記の2例より強めの願望、と解釈しておりますが果たして…

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ドスティックさん、はじめまして。コーシカと申します。
よろしくお願いいたします。
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хочу/хотимの代わりにжелаю/желаемを使うことはないと思います。желаю счастья (крепкого здоровья)など、願望、希望で使うのが普通です。ですからхочуの代わりにはхотел бы, хочется, хотелосьを使うべきです。ただ二人称で丁寧な問いかけ(レストランの店員とかスチュワーデスとかが業務用語の一環として、ソ連時代なかったサービス用語としてжелаетеが使われだしていると感じています。これがどのように発展するのか、あるいは廃れるのかはあと10年くらい様子を見る必要があるのではないでしょうか。

Posted by コーシカ at 2011年02月23日 00:25

ありがとうございます。
サービス用語として多用されている、ということだったのですね。
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ただサービス用語でよく聞くのは、あくまでもЧто вы желаете?だけです。回答者の方もその辺はよくご存じで、強いて「飲み物」にすればとпитьをつけたのです。Что вы желаете?はレストランなどにすれば、飲み物でも食べ物でもいいのでこういう表現になっていますが、Что вы желаете пить?というのは、あまり聞くことはありません。ただそういう言い方をする人もいるというだけで、間違いではないというだけです。個人的には、Что вы будете пить?を勧めます。無論、仲間内(レストランのウェートレスとかボーイではなく)で使うのであれば、コーシカさんの書いたЧто вы хотите пить?(「何を飲みますか」とか「何を飲みたいですか」)というほうが普通です。

Posted by コーシカ at 2011年02月23日 22:24
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