2011年02月22日
●和文解釈入門 第10回
ここに載せた体の用法の表は改訂の上第150回に載せたので、そちらを参照願う。
設問)「何かあったら、いつでもお手伝いしますよ」をロシア語にせよ。
おぉ!これはコンパクトで分かりやすいですね。
今後の回答や作文での参考にさせていただきます。
>n) 過去の動作の有無のみを示す用法
>→ 不完了体過去形(アオリスト的用法)
失礼ですが、これは完了体過去の打ち間違いではありませんか。
(答)
Я всегда помогу Вам.
・意向のбытьとтогда..., когда...と思いきや、研究社に下記の説明がありました。
всегда+完了体未来・不定形は「仮定的、潜在的可能性」を表す。
たとえば、「必要とあれば、いつでも」といったように。
・語法としては完了体未来で、かなり強めの予定を意味するのですね
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設問に答える前に、「過去の動作の有無のみを示す用法」を不完了体過去形と書いたのタイプミスではありません。これは、
Вы встречались с Петровым?(ペトローフと会ったのですか?)というように、単に動作の有無だけ確認するときは不完了体過去を使うというものです。ご存じだとは思いますが(ほかの知らない方にはいずれ紹介しますが)、動作の名指しに近い用法です。
設問のほうは正解です。ただ「何かあったら」が訳されていません。まあ回答の文に含意されているといえないこともないでしょうが、プロの通訳の場合だとロシア語のできる雇い主なら文句を言われる可能性はあります。かなり強めの予定ということではなくて、可能性の提示ということです。私の答えは、完了体未来形の代表定期用法の一つでもある例示的用法。всегдаが必ず不完了体と共に用いられるとは限らないという例である。всё время(ずっと)という意味のときは不完了体だが、「意識の上で「何かあったら(可能性)」という気持ちがあれば完了体未来形が出て来る。ちなみにвсё времяには「いつでも」という意味はないし、「ずっと」言う意味でも、意味的に短い(一生涯というような意味では使えない。この意味ではвсегдаを使う)。例示的用法では、不規則な習慣も示すことが出来る。Он придёт, бывало, и начнёт рассказывать интересные истории.(彼はやって来て、面白いエピソードを話し出すことがよくある)。例示的用法は完了体未来形特有の用法で、過去でこのように例示的(不規則な習慣など)を使いたいときは、この未来形のまま過去の文脈で使う。つまり上記の分も「~よくあった」と訳せるのだ。一種の時制の転用である。例示的用法というのは可能性と関係があり、これを否定すると、つまり完了体未来形の否定は不可能を示すというのもうなずける。これについては後に触れることもあろう。
しかし上記の文を、「何かあったら電話してください」と命令法にすると、Если что – звоните!と不完了体が出て来る。動作の促し(不定状況の一回ないしは繰り返しの動作)の用法である。ただпозвонить/звонить (попрости/просить, подарить/дарить, поцеловать/целовать, попытаться/пытатьсяなど)というのは、動詞の一般的語義に変化を引き起こすことなく、動作の一回性を強調する。つまり、体のペアの領域があまりはっきりせず同義的なものとして把握されるという学者もいる。この動作の名指しという用法は、強制ではなく、気が向いたらというニュアンスのときに不完了体の命令法が出て来るということである。
ご参考までにесли что = в случае чегоである。もっと分かりやすく書くと、если что-то (что-нибудь) случитсяということで、что-то = неизветсно чтоなら「何か」で、что-нибудь (= что-либо)= безразлично чтоなら「何でもいいから」である。что-либоはчто-нибудьと同義だが、より広い一般的な意味で使う。
誰や名無しで投稿しとるんは
…と思ったら自分でした、失礼しました。
>n) 過去の動作の有無のみを示す用法
>→ 不完了体過去形(アオリスト的用法)
失礼しました。
和文解釈の設問3「1875年、彼はウラジオストクに着いた」
で使われた用法にあたるのでは、と勘違いしておりました:
そちらは
>l) アオリスト → 完了体過去形
>(現在と関係のない過去の具体的動作を示す
に該当するのですね。
ありがとうございました。
>「何かあったら」が訳されていません。
>プロの通訳の場合だとロシア語のできる雇い主なら
>文句を言われる可能性はあります。
う、やはり。
含まれているつもりでおりましたが、あった方が確実ですね。
, если Вам нужно.
を付けようかとも考えましたが、そうなると
Вам二連発となり、見栄えがよろしくない…
と悩んでおりました。が
если чтоという便利な表現があるのですね、覚えておきます。
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無論通訳の雇い主が常に通訳のロシア語を監視しているということではありません。特に80年代の商社でモスクワの駐在員の2/3は私から見てもかなりできる人たちでしたし、通訳の最高ランク(技術関係のシンポジウムでいきなり質疑応答の通訳ができるレベル)も各社数名いたように思います。こういう商社マンが通訳を臨時に雇う時、最初はその人のレベルが不安ですから、通訳の最初の5分ぐらいは気をつけて聞いています。どうしてもだめなら途中で自分が代わるわけです。ロシア語のどこが通訳しにくいかは(技術用語も含めて)プロですから分かります。そこがクリヤーできるかどうかで、そこができるならあとは聞いていないか、席を立って、その通訳の邪魔をしないようにその場から去ると思います。
通訳の現場のお話、興味深いです。
ありがとうございました。