2011年02月26日

●和文解釈入門 第15回

接頭辞по-のついた完了体の動詞で、これまで始発の意味のものを紹介してきたが、по-という接頭辞のついた動詞全部がこの意味だという誤解を持つ人もいるかもしれないので、代表的なものを書いておく。пойти/поехатьは始発で、一つの方向を意味し、行き先が明記されるのが普通である。(始発の意味にはза-という接頭辞をつけたзаходитьのような完了体もあるがзаходить по комнате〔部屋の中を行ったり来たりし出す〕のようにいろいろな方向に使う)。もう一つはпоходить по комнате(ちょっとの時間部屋をうろうろする)で、あと一つは意味的ニュアンスは特になく、体の用法の違いを出すために不完了体(不完了体の方がより多く使われる)から作られたのではないかとしか思えないようなпозвонитьの類である。これら3つは用法も違うということを理解してほしい。
今はコンピューターで楽にできるが、昔愛用していた持ち運び可能なヘルメスの露文タイプでローマ数字を打つ時は、Ⅰ, Ⅱ, Ⅲ, Ⅳ, Ⅴ, Ⅹはそれぞれ1, П, Ш, 1У, У, Хと打ったものだ。この点では英語はIとVとXを組み合わせればよいから英語のタイプライターの方がはるかに楽だった。露文をタイプで清書するときはわざとそのローマ数字の部分だけあけておいて、手間ではあるが英語のタイプで後から打ったこともある。訂正も大変で、ポストイットみたい形をしたチョークが片側に塗ってある紙片があって、打ち間違った字を、タイプの上に手でその紙片を置いて打ち間違った字を打ってそのチョークで埋めるとかしたものだ。昔和文露訳や英文露訳のアルバイトをしたころは、コピー用紙にタイプすると打ち間違えたときに直すのが大変なので、トレーシングペーパーに打ってゆく。これだとタイプを打った直後だと消しゴムで訂正できた。今はそういう事も考えずに済むから楽だ。その代わり和文露訳や英文露訳の仕事は壊滅状態になったけど。肝心の訳文が決まらないのは一緒だが、技術の翻訳の仕事も露文和訳だけになってきたのはさみしい。まあ和文露訳は日本人のロシア語よりもロシア人で日本語に堪能な人に訳させた方が間違いは少ないという事なのだろう。そういう意味で露文和訳の仕事は細々とあるのはありがたい話だが、これもだんだんなくなってゆくのかもしれない。
「違う~(もの)」(間違いの)というのはдругойだと考えていると、ロシア人から変な顔をされるかもしれない。例文で示すと、Я разбила чашку, придётся купить другую.(茶碗を割ってしまったわ。別のを買わないと)ならいいが、Простите, я ошибся, дал вам не тот номер телефона.(ごめんなさい、間違いました。別の電話番号を渡してしまいました)にあるこの「間違いの」というのはロシア語でне тотである。つまりне та запись(違う録音)となる。ちなみに電話番号は、日本語同様телефонでもよい。
爆弾漁業(ドン)は夢野久作の爆弾太平記に戦前日本に併合された朝鮮沿岸で組織的に行われていたことが描かれている。
日本語のウを英語のu、またはロシア語のуでどう表記するかについては、2008年ノーベル物理学賞受賞者の益川氏を2008年10月20日付のタイムでは、TOSHIHIDE MASKAWAと表記している。wiをうぃだけではなく、ヰやゐと書くのも面白い。
設問)「カラマーゾフの兄弟を書いたのはドストエーフスキーです」をロシア語にせよ。

Posted by SATOH at 2011年02月26日 15:36
コメント

初めまして。ヨシダと申します。
趣味でロシア語の勉強をしている者です。一緒に学習に参加させていただければと思っております。
ということで、恥を覚悟で投稿させていただきます。

日本語の設問では、「書いた」という動作・行為よりも、それをしたのは誰かということに力点が置かれているように思います。ですからロシア語の場合、例えば次のような「書く」という動詞のない表現も可能なのかな、と思います。
«Братья Карамазовы» ― роман  Ф. М. Достоевского.
ただ、それでは「体」の勉強にはなりませんので、不完了体を使用して、
«Братья Карамазовы» писал Ф. М. Достоевский.としてみました。
ここでの動詞は、無くてもよい程度のものですから、単に「事実の名指し」として添える感じで良いのでは、と考え不完了体を使用し、語順は作家名を新情報と理解し後置してみました。
以上よろしくお願いいたします。
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答えは間違いですが、ヨシダさんが最後の「作家名を新情報と理解し後置した」という点は上級者と同じです。私の答えは«Братья Карамазовы» написал Достоевский.
完了体過去のアオリストの一種である創作者の資格という用法。このように「書いた(描いた)」という唯一性の強調ということで、написалと完了体過去形を使う。自分が書いた論文なども完了体過去形を使うのだが、「その頃は月に4編の論文を書いていた」なら、文脈によるがТогда я писал 4 статьи в месяц.と不完了体が来る可能性がある。このように不完了体が来るのは繰り返しの場合である。設問は文学作品だが、書いた(描いた)ものが芸術的か否かにかかわらず、書いた(描いた)という動作(「昨日メールを書いた」という場合もには完了体の過去形を使うと覚えよう。Достоевскийが最後に来ているのは、イントネーションや力点を別にすれば通常ロシア語では新しい情報が後に来るからである。

Posted by ヨシダ at 2011年03月01日 09:52
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