2010年10月19日
●ロシア語珍問奇問 第9回
ロシア語の初心者はロシア語の文字が読め、初歩の文法がある程度わかり、和露辞典を引きさえすれば、ロシア語の文章というのはロシア人にある程度意味が通じるぐらいの文は作れると考えている人もいるかもしれない。和露辞典で柿や水素を引くと、それぞれхурмаやводородで、1語対1語で対応するからいいが、そういう単語ばかりでもない。ゴムを引くとкаучук, резинаが載っている。これだけでは同義語なのか類義語なのか説明がない。同義語ならそれでよいが、類義語なら使用上の差を説明してもらわないと役に立たない。каучукはゴムの原料である生ゴムであり、резинаは生ゴムを加硫した後のいわゆるゴムだから、この違いが分からないと使えないことになる。しかも合成ゴムはсинтетический каучукというから厄介である。動詞や名詞にしろポツンと挙げられても、動詞なら次にどのような名詞の格がくるのかとか、どういう前置詞を要求するのか、例文付きで書いてもらわないと使えないと思う。もっと日常よく使われるとなると、братьという動詞は語義が16あるし、これを基本的な意味は「取る」と理解してもこれだけでは、和文露訳は作れない。水はводаだが、водаには水面、水の塊、水位という意味がある。日本語の水にもこの意味があるから1対1で対応しているように見えるが、ロシア語では前置詞の使い方が違う。普通は水面という場合にはна воде, на воду、つまりдержаться на воде水に浮いている、падать на воду水に落ちる、などとし、水の塊を意識するときは、в воде, в водуで、погружаться в воду水に沈む、броситься в воду水に身を投げる、などと言う。ただ「木は水に浮くが、人は沈む」という文は、Дерево плавает в воде, а человек в воде тонет.となる。これは丸太が水に浮いているのを見ても分かるように、幾分かは水に沈んでいるからだろう。最近はдерево плавает на воде.という文もインターネットでは見るようになってきた。Дерево плавает на поверхности воды.(これはより理詰め、科学的という感じがする) Дерево плавает по воде.(これは「木は水の上を漂い流れる」という意味であろう)というのもある。