2010年10月13日

●ロシア語珍問奇問 第8回

カザケーヴィチのКазакевичの「オーデル河の春」Весна на Одереの一節に敵情について尋問のため捕まえたドイツ軍の捕虜языкを見て、ドイツ語の通訳が、Ну, этот расскажет всё! Успевай записывать!と言うのだが、このУспевайという命令形であって、通常の命令形の用法とは違う事は一目瞭然である。前述の「ロシア文学観賞ハンドブック」の260ページに「命令法を反語的に用いて、〔そんな~はできるはずがない、絶対無理だ〕と、行為・動作の不可能である、あるべきではないことを、強い感情をこめて表現することができます」とあるので、この用法であろう。訳せば、「まあな、こいつは全部しゃべるさ。書き留めるのが間に合わないくらいだろうよ」。若者言葉の「~しろってか」を使って、「… 全部書留めろってか」と訳してみるのも面白いかもしれない。успетьは不定形として完了体を取るのが普通だが、この場合は尋問が一度ではなく、あるいは一度であっても長期にわたるというニュアンスがあるから不完了体успевать. записыватьが用いられていると考える。

Posted by SATOH at 2010年10月13日 08:19
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