2010年03月23日
●新帯研 第107回
ピョートル大帝は国内の工業振興にも熱心であった。しかしロシアの商品は品質面で輸入品にかなり落ちるため、関税を大幅に上げた。しかし、密輸や税関の汚職が増え、エカチェリーナ1世時代には関税を大幅に下げざるを得なくなった。このときに流行った言い回しとして、Таможня – там можно.(是彼地、直訳は「税関とはThere they can.(あそこではOK、つまり〔賄賂を出せば〕なんでもありだ)」というのがある。語呂合わせで思い出したが、19世紀のモスクワでは結婚式は5月と9月は避けたようである。理由は5月に結婚式を挙げると、 Всю жизнь будешь маяться.(生涯御(五)苦労に苦しむことになる)であり、9月ならВсю жинь будешь сентябрём смотреть = иметь хмурый, угрюмый вид)(生涯苦(九)汁を呑んだ顔をすることになる)ということからであるという。
革命前のロシアの商人は儲け第一主義で、顧客をだますことなぞ何とも思っていなかった。この発端はピョートル大帝時代にさかのぼる。膨大な軍費を補てんするために、税金を上げたということのほかに、役人に給料が払えず、1726年の政令では賄賂を公認せざるを得なかったのである。そのほかに商品はキャラバン(荷駄)で運ばれ、市場に集められる。そこで商売が行われるわけだが、商人は商品を残して別の場所に移動し、商人が市場に戻るのは1年後である。そのため取引は最初で最後という感じで行われるため、あらゆる手管を使い、安いものや粗悪なものをできるだけ高く売るという風潮が根付いたとされる。一方ソ連時代はといえば、クレームには誠実に対応してくれた。
それで思い出したが、金属の穴あけをする工具があって、英語では metal borer と言う。これを металлическая граница とロシア人の翻訳者が訳した。Век живи, век учись.でひょっとして新語か、知らない技術用語かと一瞬思った。すぐに間違いとは分かったが、どうしてそんな誤訳になるのか、4ヶ月ほど頭をひねった。あるとき若いロシア人から聞いたのは、borer に何らかの拍子にdが入ったborderと読み違えたのではないかと言う。それなら граница となるのも分かる。こういう謎解きのできる若い人もいるからロシア人も捨てたものではない。その人はさらに、Железная занавес(鉄のカーテン)という言葉があるくらいだから、金属の国境があってもおかしくはないなと笑っていた。まったく小話の世界である。今回の課題は、1992年に出版されたアルメニアラジオから。
- Может ли женщина забеременить от валериановых капель?
- Может, если Валериану не более 60-ти лет.
設問)訳せ。
よろしくお願い致します。
―カノコソウの汁(カノコソウチンキ)で女性が妊娠するというようなことがあるだろうか。
―カノコソウ氏が60歳以下ならば、ありうる。
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努力は評価しますし、オチに至る道筋は正しいと思います。例えば、カノコソウを加納幸三とするなど考えられます。人のことは言えませんが、私の訳は、
「女性がヴァレリアンの滴で孕むことができるか?」
「できる。もしヴァレリアンが60以下なら」
解説)気付け薬であるвалерьяновые капли = валерьянкаカノコソウチンキをかけたもの。