2010年02月04日
●新帯研 第97回
カザフに駐在していた頃カザフスタン東部の都市アクチュービンスクの近くのクロム鉱山に出張することがよくあった。1996年の冬でカザフの経済もあまり芳しくなく、ホテルも鉱山経営のが一つあるきりで、客も少なかった。あるときカザフ人の部下と一緒に昼食食べていた。客は他にはロシア人女性の技師が二人。私の座っているところから料理が出てくる廊下が見える。廊下には黒っぽい影が見え、猫がいるのかなと思った。料理を食べていたら、部下が肘でつく。「佐藤さん、佐藤さん、ドブネズミкрысаだ」。女性もいるのだから大きい声は出すなと言った瞬間、魂消るような悲鳴のあとに、なんとそのロシア人の女性は二人ともぴょんとイスの上に飛び乗り、ナイフとフォークを振り回していた。猫と思ったのはドブネズミだったのである。人間というのは必死になると神業みたいな真似ができるなと感心した次第。
1985年頃Бородино「ボロヂノー」というボロヂノーの戦いに関する本を「軍事図書」という本屋で買った。当時2万円ぐらいした豪華本で挿絵が豊富だった。買う時に売り子がわざわざ上司のところに行って外国人にこのような本を売っていいのかとお伺いを立てていたのを思い出す。軍事図書は紫色の建物でサドーヴァヤ環状道路沿いにあったが、7、8年前につぶれてしまった。今回の課題は、
Чукча идёт по улице: на шее у него полотенце намотано, на плече висит огромная бас-труба, а за собой он тянет на верёвке двух коров.
- Чукча, ты куда это собрался?
- Чукча в баня звали.
- А труба и коровы тебе зачем?
- Мне сказали, что в баня пойдём с тёлками гудеть.
設問)和訳せよ。
よろしくお願いします。
田舎者が通りを歩いている。首にはタオルを巻き、肩に大きなバス・トランペットをかけ、背中には縄で2頭の雌牛を背負っている。
―田舎者、どこに行くんだ?
―蒸し風呂さ呼ばれた。
―トランペットと牛は何でだい?
―蒸し風呂さ行って、子牛とブイブイしようって言われた。
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訳もこなれており、直訳は合っていますが、これではオチが分かりません。「ブイブイしよう」という訳は私のより面白いですが、単語の意味が分かっているのか、偶然合っているのかは分かりませんが。ただチュクチ(人)を田舎者と訳すのは実際そのほうが分かりやすいとはいえ、訳しすぎのような気がします。私の訳は、
チュクチが通りを歩いていました。首にタオルを巻いて、肩には巨大なバストランペットを担いで、縄で2頭の牝牛を引いていました。
「チュクチよ、どこに行くんだ?」
「チュクチ、風呂呼ばれタス」
「トランペットと牝牛は何のためだ?」
「風呂で牝牛っこと一緒に吹きに来いって言われタス」
解説)гудеть = веселиться, тёлка = крупная, крепко сложенная девушка, молодая, здоровая девушкаという意味をかけている。
最終行は苦し紛れの訳で、失礼しました。гудеть = веселитьсяという部分が分かりませんでした。さらにтёлкаをтелок= телёнокと勘違いしたために女の子というイメージが湧かず、ますますオチから遠ざかりました。