2009年07月01日
●新帯研 第56回
初級者で一生懸命単語を多く(2,200とか)覚えようと頑張っている人も多いと思うが、露文解釈の段階で終わるつもりならそれでもよい。ただロシア語でロシア人と話したいという希望を持つならば、単語を別々に覚えるよりは、もっと有機的な語結合として覚えた方が文章を作る上で効率的である。ここで語結合というのは安定的語結合устойчивые словосочетанияのことである。たとえばпринять мерыなどの類である。ただこの種の参考書はソ連時代に出たものばかりで、例文といえばソ連共産党のプロパガンダ的なものが多い。そこで今回8月に出す本では和露の形で500ぐらい紹介しようと考えたわけである。耳で聞き取る練習は語彙が少ない段階でやっても意味はない。論理的に言えば、単語のスペルが聞き取れても意味は分からないというので無意味だ。話す力だが文法をマスターするのに注力すべきである。文にはたいてい動詞が来るが、完了体を使うのか不完了体を使うのか、これを使いこなせるだろうか?大学や語学学校では時間があるのだからこういう基礎を徹底的にやって、句動詞を中心にпассивный запас слов(聞けば読めば分かる語彙)とактивный запас слов(使える語彙)の両方を出来るだけ多くするようにすればよい。例えばпамять(記憶、メモリー)という名詞だけを覚えるよりは、文で、Память у нее прекрасная, особенно на молодых людей.(彼女の記憶は素晴らしいものであり、とりわけ若い人に対してのは)と覚えれば、память на + 対格で「~についての記憶」という表現を覚えることができ、より効率的である。また Мне повезло.(僕はラッキーだ)と覚えるのもよいが、もう一歩踏み込んで、Везёт мне сегодня на новые знакомства.(今日は新しい知り合いができてラッキーだ)という文を覚えれば、具体的に何に対してラッキー(幸運である)なのかという場合、どういう前置詞がどういう格を取るのか覚えることができる。そのためにロシア語で書かれた本(文学など)を精読せよというのである。聞き取りの練習などはサラリーマンになって、通勤のときに1年ぐらいロシア語を聞き流すようにすればよい。語彙があればそれをロシア人の実際の発音との違いに頭のほうで自然に気がつくようになる。今回の課題は、
- Маэстро, ваша последняя кинокартина прекрасна. Я вчера был на просмотре.
- Ах, это вы были в зале?
設問1)訳し、かつオチを説明せよ。
設問1)лицо у девушкиとлицо девушкиは同義か?
設問2)работать вечерамиとработать по вечерамは同義か?
1) -監督、あなたの最新作はすばらしいですね。昨日、試写会に行ってきましたよ。
- ああ、ホールにいたのはあなたでしたか。
* 試写会には他にひとがいなかった。
こちらは自信がありませんが:
1) лицо у девушкиは、娘さんの個性で、 лицо девушкиは、娘さんの顔。 研究社の露和で、у(所属・所有)の箇所に、≪目・髪など身体部分は「ある」のがあたり前で「どんな」に情報性がある≫とあったので、こう考えました。
2) работать вечерамиは、幾夜も幾夜も働く、работать по вечерамは、夜になると働く。微妙に違う気がしますが、どちらも「夜毎働く」と訳せるような・・・・???
後者はработать каждый вечерと同じということでしょうか?
よろしくご教示ください。
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オチの理解はその通りです。маэстроの訳にひと工夫あれば訳は完璧だったと思います。そのほかの設問についても含めて私の回答は、
「大先生、先生の最近の映画は素晴らしい。私、昨日試写に行きました」
「あー、試写室にいらっしゃったのはあなたでしたか」
解説)同義だがлицо у девушкиの方が帰属性が強い。同義の場合は一般的に前置詞があった方が具体的であり、単語間の結びつきも精確である。по вечерамは規則性が出てくる。