2009年06月04日
●新帯研 第51回
ロシアの呪や迷信などに関する本を読むと、килаという言葉が出てくる。これはразличного происхождения опухоли, в том числе грыжи и абсцессы(ヘルニアや膿瘍を含むいろいろなところにできる腫れ)で、手、足、顔、のど、肛門、性器にでき、耐え難い痛みや原因不明の憂鬱感を伴うとある。なにか帯状疱疹(ヘルペス)の症状に似ているような気がする。帯状疱疹というのは子供の時になった水痘と同じウイルス(水痘帯状疱疹ウイルス)が、神経の付け根に残っていて体調が悪いと活性化されて1本の神経支配領域に添って出来る。3~5日位で皮膚の表面に現れて初期は赤い皮疹を作り1~2日位すると水膨も出来る。皮膚に出来る前から痛みが出現することが多く、痛みの強さは非常に耐えられない強い痛みの人と我慢できる程度の人と稀に全く痛みを伴わないこともあるというからこれではないか。килаはロシアではこれは魔女がかける呪の一種であるとされた。
革命前のロシアの農村では病気というのは、呪によるか、体の中に虫が侵入することによって引き起こされると考えられた。虫歯もその一つで、歯虫зубной червякが歯の間に住みつき、食い荒らすことによって起こるとされた。この虫は白っぽくて頭部が黒いという。ちなみに現代のロシア語ではкариес зубаという。日本語では虫歯と逆になっているのも面白い。
ロシア人と挨拶するときにドアの敷居越しにはするなと言われ、悪魔が来るからという説明を受けたことがある。最近Будурの本を読んでいて、ロシアの人々の考えではдверной проём представлялся границей между своим и чужим миром. Выходя из двери во двор, человек встречается лицом к лицу с враждебными силами, поэтому при выходе из дома необходимо было защитить себя молитбой.(ドア口は自分の属する世界と異世界との境界であるとされた。ドアから中庭に出ると、人は敵対する勢力と面と向かって向き合うことになる。それで家から出るときには自分を祈りで守らなければならなかったのである)
犬が穢れたものであり、教会に入れてはならないとされているのは、ロシアの民衆が信ずるところによると、犬はもともと裸で創造された。悪魔が犬を誘惑し、冬の寒さで脅して暖かい毛皮を約束した。それにつられて犬は最初の創造された人間に悪魔が近づくことを許し、悪魔は人間をつばと痰で穢した。それゆえ犬の毛皮は穢れており、教会に犬を入れることはできないのであると。ただ猫を協会に入れるのはよいとされている。今回の課題は、
- Какая разница между уткой обыкновенной и журналистской? – спросили поляка.
- Первую позывают «тась-тась-тась», а вторую – «ТАСС – ТАСС – ТАСС»
設問)訳せ。オチを別に解説してもよい。
直訳)
「普通の鴨とマスコミのはどう違うんです」とポーランド人が尋ねます。
「前者を呼ぶときは”タシ、タシ、タシ”、
後者は”タス、タス、タス(ソ連邦通信社)”」。
訳)
「普通の鴨とマスコミのはどう違うんです」とポーランド人が尋ねます。
「前者はただ鳥の鴨だけど、
後者はデマのカモにされちゃうよ」。
уткаには報道におけるデマの意味合いがあるようなので、それとТАСС通信を絡めてあるのだと思います。
тась-тась-тасьは結局よくわかりませんでした。恐らくは猫を呼ぶときのкис-кис-кисに当たる、鴨を呼ぶときの声であろう、と考えました。
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今回もオチおよび訳も完璧です。カモの鳴き声に関する勘もさえているようです。私の訳は、
「ふつうのカモとジャーナリズムのソウカモとの違いは何か」とポーランド人にたずねました。
「ふつうのカモにはタシ、タシ、タシと呼びかけるが、ジャーナリズムのにはタス、タス、タスと呼ぶ」
解説)тасьтась = призывная кличка на уток(南部方言)とДаль の辞書にはある。уткаに「カモ」と「デマ」をかけている。