2009年01月17日
●ロシア語独習者のための質問箱 第1回
ロシア語を独習されている方で、疑問に思っていることでも具体的に答えてくれる人が身近にいないために、足踏みしている方も多いと思う。ロシア語を勉強するというだけでも奇特なのに、それによってやる気が阻害され、ひいてはロシア語をやめるということになればまことにもったいない話だ。それで、そういう人たちのために、ロシア語学習法、文法の疑問点、ロシアの常識など、ロシア語に関係する質問を受けることにした。回答は100%質問者が納得するものでないかもしれないが、できるだけ分かる範囲で答えることにするので、遠慮なく質問を寄せてほしい。質問はコメントでしてもらえば、それをコピーして回答する形にしたい。第1回の今回は、最近ブログで見かけた疑問に対する回答を挙げる。
(質問)不完了体過去形には、過去において継続中であった事柄を表す用法と 現在と関係しない過去の事柄の有無の確認を表す用法があると解説書に書いてあるが、説明に矛盾はないか?例えば、
Я читал эту книгу.
は「私はこの本を読んでいた(読んでる途中)」と「私はこの本を読んだ(読み終えた)」 の二通りの訳が可能なのでしょうか?
(回答)
説明に矛盾はありませんが、理解しにくいでしょう。上記の文で説明すると、この文を普通に読めば、この二つ以外にも、「私はこの本を読んだことがある(事実の名差し)と読めます。つまり、前後の文脈が分からないと、この3つのどれも正解ということになります。2番目の訳で「この本を読んだ」は読みかけかもしれないし、読了したかもしれないが、どちらかは分からないし、それを問題にしていないことになります。これと表裏一体なのが事実の名差しということになります。不完了体の過去形は「事実の名差し」で使われることが多いように個人的には思います。「事実の名差し」というのは文法用語ですから、言いかえれば「経験(~したことがある)」ということです。つまり、完了体は「動作の完了」を意味し、不完了体は、「過程、一般的事由」を示すというのは間違いではないものの、このように単純に体の用法を理解すると、例外として覚えることのほうが多くなるでしょう。完了体と不完了体では、完了体が主(明確で具体的な動作を示す)で、それ以外が不完了体が扱うとすれば事実に近いと思います。これでは禅問答のようなものでしょうから、体の用法の意味は時制によって違うものもあると理解してください。ロシア語入門の段階を越えた人(1年以上ロシア語に接している人)であれば、原求作先生の「ロシア語の運動の動詞」やロシア語の体の用法」を何回か読めば、体の用法は理解できるはずです。私の恩師の故新田実東京外語大名誉教授に生前お会いした時に、体の用法については「原君が一番よく理解している」とほめておられました。市販されている本で体の用法(運動の動詞についても)これ以上の参考書はありません。ただ目次が大雑把なことと、索引がないのは欠点ですので、自分で読むときに、なるほどと思ったところを本の後ろの余白にでもページ数を書いておくと後でチェックするときに便利です。