2008年02月27日
●新帯研 第9回
まえに96度のウオッカを騙されて生のまま飲まされた話を書いたが、実は20年ほど前に会社の近くのアキハバラデパートでポーランド産の96度のウオッカを見かけたことがあった。値段は2000円だったと思う。そのときはこんなウオッカを買うような酔狂な人がいるのかなぐらいだったが、そのうちアキハバラデパートもなくなってしまい、ポーランドに行かなければ買えないのかなと寂しく感じていた。飲むためではなく、記念に写真にでも撮っておこうと思ったからだ。ところが最近近くの酒屋さんで日本製ウオッカ2種とともに売っていたのを見つけ懐かしさでつい買ってしまった。ついでに買った日本製ウオッカとともに念願の写真撮影を果たした。Spirytus Rektyfikovany, 96%, 0.5ℓとある。裏の日本語の説明には蒸留を繰り返すこと70数回、純度を極めたポーランド産ウオッカの雄ですと書いてある。さらに太字で、アルコール度数が高いので、火気に注意してくださいとあり、下線も引いてある。ご参考までに一緒に買った日本製ウオッカはニッカのWilkinson VodkaとキリンディスティラリーのNikolai Vodkaである。ウオッカは嫌いなのでロシア人への土産にしようと思う。96度のウオッカは、会社勤めをしていたときなら嫌いな上司へのプレゼントでもよかったが、今は気楽な稼業だし。どうしたものだろう?泥棒が入ったらビンごとお見舞いしようかしらん?今回の課題は、
Самолёт стоит на взлётной полосе. Все в сборе, кроме командира. За полминуты до времени вылета он, запыхавшись, вваливается в кабину и плюхается на своё место:
- Налива... Ой, раздева...! Э-ээ, от винта!
設問1)オチが分かるように和訳せよ。
設問2)読んでいておかしいと思うところがあれば指摘せよ。
96度のウォッカ!ですか!これはもう消毒用にでも何でも使えそうですね。私も内モンゴルへのお土産に日本酒を買おうとしたら、当の現地人から、日本酒は余りにも弱いのでせめて焼酎にして下さいと言われて30度以上の焼酎を探しまわったことを思い出します。やっぱり大陸では度数が高いお酒が喜ばれるのでしょうか。
いつも自信のないまま回答に入りますが…
設問1)
飛行機が離陸用滑走路に止まっている。パイロット以外全員が揃っていた。離陸時間の30秒前に当のパイロットが息を切らせて操縦室に飛び込み、自席に転げ込んだ:
「早く注い…、まちがった。ほら早く脱い…。おっとっと、いっちょいくか!」
想像ですが、このパイロットはあまりにもあわてていたので、普段の自分の生活のなかであわてた時によく言うフレーズが思わず出てしまったということでしょうか。酒好きで(наливай)女好きで(раздевайся)、挙句の果てにот винта!(パイロットと機関士のやりとりがいつしか酒をあおるときの掛け声となって残ってしまったもの/現代ロシア話しことば辞典)と言ったというオチだととりました。
設問2)
間違いはないのではと思いますが、あえて指摘する場所があるとすれば、完了体副動詞の
запыхавшисьでしょうか。
完了体副動詞は述語動詞の表わす動作に先立って完了した動作を表わし、述語動詞のいかなる自制にも、いかなる人称・性・数に関しても用いられるとあります(城田先生)。
これに則ると、息をきらしたのは操縦席に飛び込んできて座る前になることになり、息をきらせながら飛び込んで座ったのなら不完了体副動詞のほうがあっているのかもしれないかなとも思いました。著者の考え方の相違の程度かなとも思えますが…
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ちょっとオチの解釈が違うようです。私の訳と解説は、
飛行機が滑走路で待機しています。機長以外全員が搭乗しています。離陸の30秒前に息せき切って、機長がキャビンにドカドカと乗り込んで、ドターと席につきました。
「注げ…、おーい、脱げ…、あっちいってろ」
解説)このパイロットは酔っ払っているというのが前提です。これは一番最後の行から飲みながら彼女に脱げと言っているということでわかります。酔っ払っているからトンデモナイことをいうわけです。от винта は初期のプロペラ機が外からプロペラを回してエンジンをかけたころの言い回し。危ないからプロペラからどいてろという意味がもとである。отойдиとか、人のやることに首を突っ込むななどという警告の言葉。パイロットがこの句を乗客に言っていると仮定すると、乗っている乗客は逃げ場がないことになりそれがある意味でのユーモアとなるわけです。読んでいておかしいな(日本とは違うな)と思ったのは機長が最後に乗り込むところです。今は違うでしょうがソ連時代出張した時にに地方では機長が最後に乗り込み、到着すると最初に降りるのには少々驚いた覚えがあります。馬鹿はパイロットにならないだろうから、危ないものからはできるだけ離れていよう(我が身の滞在時間を少なくしよう)という賢者の知恵でしょうか?
そういうオチだったのですか!見事な見当はずれだったようです。Налива... Ой, раздева...! Э-ээ, от винта!は、尻切れトンボの言葉が続くので、次々と言い直していって、最後の言い直しでガクッとくるという発想をしてしまいました。尻切れトンボは酔っ払っていたためだったのですね。ところで、от винтаは女性は使えない言葉なのでしょうね。
ロシアの機長はお客様待遇でいいですね。パイロットはやはり万国で尊敬されている職業なのかなぁと思いました。日本では機長の乗り降りはどうなっているのでしょう?
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от винтаは別に女性が使っても今の時代特に問題はないと思いますが、女性だってうっぷん晴らしの表現も必要でしょうし。日本など外国では機長や機内アテンダントが降りるのは乗客の後です。アエロフロートも国際線はそうです。
96度のウォトカ。ここはあくまでロシア式にドライブの時の非常燃料としてお持ちになってはいかがでしょう。水分も少ないのでよく燃えそうです(燃え過ぎて却ってエンジンに負担になるかもしれませんが…)
またフロントガラスの霜とりにも使えると聞いたことがあります。
それはさておき
昨日に引き続き参加いたします。
設問1)オチが分かるように和訳せよ。
飛行機が滑走路で離陸を待っています。
スタッフは揃っていますが、機長がいません。
離陸まであと30秒という段になって、彼は息を切らせて操縦室に飛び込んできて、自分の席に身を投げました。
「しこたま呑まされ…トランプで身ぐるみはがれ…えぇえ!俺ぁもうプラプラだ!」
от винтаでプロペラとトランプ遊び(恐らくは賭博)とが掛けてある、と見ました。
ここで解説を見ると
また全然違う…
от винтаはそういう意味になるんですね〜
設問2)読んでいておかしいと思うところがあれば指摘せよ。
これは特に感じませんでした。解説を見てメイさんの不完了体副動詞の方が状況に合っているのでは、というご意見に共感しました。不完了体にするとどういう含みが出てくるのですか。またの機会にお教え下さい。
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最初のモスクワ駐在のとき1985年ごろ、不凍液антифризがなくなって当社の運転手はウオッカをフロントガラスのクリーナー液として使いました。車内がウオッカくさくなって閉口したことを思い出します。запыхавшисьは完了体および不完了体で、この場合は完了体として用いられています。ハーハーと喘ぐという意味です。ハーハーと喘いでから、言葉を発しているので別段問題ないと思いますが。無論喘ぎながらでも言葉を話すことは可能ですが、そうなるとзапыхаясьとなると思います。
完了/不完了の違いのご説明ありがとうございます。確かに呼吸を整えてから喋った、とすれば完了体が自然ですね。
やっぱり霜とりにも使えるんですね:融点が水よりもかなり低いからかな。
不凍液が英語そのものの名称なのも意外でした(商標でしょうか)。ロシア語は結構真面目に自前の表現に置き換える一方で、外来語をそのまま音写することもありますね。