2008年02月11日
●新帯研 第1回
しばらく帯研を休んでいたが、その間に書き溜めたものも少しはできたので再開してみようと思う。今回のテーマは露露辞典である。なぜ露露辞典を引けというかというと、例えばкладоваяという単語を見つけて、露和を引けば「倉庫、貯蔵庫、物置、納屋、埋蔵地」とある。似た単語でскладの和訳は「倉庫、置き場」とある。同義語だろうか?そうかもしれないが、単語がまったく同じなら二つは要らないはずで、ニュアンスに違いがあるのではなかろうかと考えて、行き着く先は露露辞典ということになる。кладовая – помещеине для хранения продуктов питания, а также для товаров, сырья, различных материаловとあり、склад – специальное помещение для хранения товара, материалов, сырья, оборудования и т.п.とある。ここから分かるのは、露天の置き場には双方の単語とも使えないようだということと、кладоваяは食料品の倉庫、складは商品の倉庫で、機械設備の倉庫という事が分かる。一通り文法を終えた初級者はどうかというと、露露辞典の単語の定義は簡潔で分かりやすいので、単語の意味をロシア語即座に理解する訓練に最適である。今回の課題は、
На официальном приёме жена замечает, что муж то и дело подходит к стойке со спиртными напитками.
- Послушай, - говорит она, - ты уже девятый раз подходишь к стойке. Что о тебе люди подумают?
- Не беспокойся, дорогая, а каждый раз говорю, что беру бокал для тебя.
課題1)замечает, подходитを過去形にできるか。
課題2)和訳せよ。
たまたまコピーしていたのがありました。
コーシカさんの分も含めてアップします。
新帯研の問題がアップされたにもかかわらずなかなか回答ができませんでした。遅ればせながら参戦(?)させていただきます。
さとうさん、コーシカさん、本年もまたよろしくお願いします。
1) 過去形にもできると思いますが、замечаетは完了体過去のзаметилаとする方がいいのではないかと思います。「きづく」は瞬間的な意味合いを示しますので、замечалаと不完了体過去では進行途中の行為、つまり「気づきつつあった」と認識が深まっていく過程を示すことになるのではと思いました。ここでは夫の行為に気づいたという結果を示すべきだと思いましたので、完了体過去で示すほうがいいのではと考えました。一方、подоходитはто и дело があるため、そのまま不完了体過去で繰り返された行為として示してもいいのではないかと思いました。
2)
改まったパーテイでのこと。夫が何回もアルコールのあるカウンターへ行ったり来たりしていることに妻は気づきました。
「ちょっと、あなた。もう9回もカウンターへ行っているわね。他の人になんて思われるかしら?」と妻は言いました。
「心配いらないよ。毎回、おまえのためにグラスを取りにきたんだと言ってるからね」
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高橋さん、お久しぶりです。подоходитはスペルミスで、подходитです。замечаетについてはその通りです。普通の文章ではзаметилと完了体の過去にします。подходитについてはコーシュカさんに対しての返事で完了体過去になると書きましたが、これは解説の順次性に引かれてのうっかりミスで、書き流してしまいました。次のように訂正します。正解は過去形にはできないということです。文意は「絶えず近づいている」ということで、相対時制を使います。つまりчтоを含む従属文の現在形は主文と同時であるということを示しています。подходилと過去形にすると、主文より過去の出来事になってしまいます。подошёлと完了体過去が使えないのはこの文が繰り返しの意味で使われているからです。それと訳中の「アルコールのあるカウンター」では勘ぐればエチルアルコールの置いてあるカウンターともとられかねないので、アルコール類とか酒とかにしたほうがよいと思います。
Posted by コーシカ at 2008年01月21日 21:32
新帯研開始、おめでとうございます。
訳:
フォーマルなパーティーで妻は夫が何度も何度もお酒のカウンターへ行っていることが目についています。
ーちょっと、あなた。もう9回もカウンターへ行ったりして。他の人にどう思われるか知れないじゃないの。
ー心配いらないよハニー。毎回君のグラスだって言って持ってきてるから。
>замечает, подходитを過去形にできるか。
どちらもできないと思います。
замечать
過去形にすると”旦那がひっきりなしにお酒を取りに行ってることに目を留めた(その後どうしたかは不明)”となって、見かねて注意した、という流れに反すると思います。
подоходить
これはよく解りません。
過去形にしてしまうと、パーティーが終わった後の時点で話しているように響くような気がします。
今回のお題は”露露辞典”ということで、第一回はбокалについて調べるのが伏線であろうと踏みました(今回はオジェゴフを使いました)。
бокал
Посуда для вина в виде большой рюмки.
рюмка
Небольшой сосуд на ножке употр. обычно для питья вина.
рюмкаではないということで、旦那さんは結構な量を呑んだみたいですね。またбокалの例文には
Поднимать б. за кого-что н.ともあり、「杯(文字通りの器ではなく心情的な含みで)」の意味でも使えそうな感触でした。
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早速の回答有難うございます。訳もこなれていてよいと思います。露文和訳の日本語は使えます。後は和文露訳の勉強ために露文をいろいろな分野を読み漁るということになります。一つコメントを言えば、地の文と会話の文は普通よく見るようにカッコなどで区別すべきです。そうでないと読みにくいと思います。Бокалを特に露露で調べろという意図はありませんでしたが、コーシュカさんの記述は役に立ちます。ただ歴史的現在(歴現)についてよく理解していないようです。この方面の参考書はほとんどないのでやむをえないとは思います。подходитьについては相対時制を理解しているようで勉強の跡がうかがわれます。私の訳と解説は、
*на приёме(レセプションで)
前置詞がна かвか、あるいは他の前置詞かある程度の規則はあるが、一番いいのは前置詞 + 名詞で丸暗記してしまうことである。
*то и дело = беспрерывно, беспрестанно(絶えず)
*стойка - 立食のパーティーなどでおいてあるカウンター、テーブル
*спиртные напитки - アルコール飲料
*бокал – 杯(大型の脚付き)で、普通はワインを入れる。рюмкаは同じ脚付きだが小さくて、ウオッカを注ぐ。стопкаは脚付きでないウオッカ用の小さなグラス(お猪口のようなもの)
*Что о тебе люди подумают?(あんたのこと人はどう思うでしょう?)
ロシア語でも日本語同様「他人」という意味でлюди(人々)は使えるのが分かる。
回答)不完了体の過去形にはできない。そうすると過去の習慣とか繰り返しという意味になり、意味が違ってくる。完了体過去形なら順次的用法ということで可能である。
訳)公式レセプションで妻は夫がたえずアルコール飲料のあるテーブルに近寄るのに気がつきました。
「あのね」と妻が言うには、「もう9回もそのテーブルのところに行っているじゃない。あなたのこと人はどう思うかしらね?」
「心配するな、お前のために取りに来てるんだってそのたびに言ってるから」
解説)小話の地の文の時制は現在形が多い。上の小話でも明らかに現在ではないのに(「気がついた」など)замечает, говоритなど現在形である。これは不完了体現在形の特殊用法とされるнастоящее историческое(歴史的現在)で、過去の動作を話し手の眼前で起こったかのように生き生きと表現する場合に会話では現在形を用いる。小説など文章では場面の切り替えに用いられる。また論文などでも歴史的現在はよく用いられる形式である。日本語でも同様な表現法はあるので理解しやすいと思う。この歴史的現在のほかにも、小話の地の文で現在形が使われるのは、アカデミー文法(1980年版)でも触れられているように、現在形は想像の動作にも用いられると記されている。Вообразитеなどを伴なって現在形が使われる例が挙げられている。小話では話し手は未来の出来事を眼前で起こっているかのように描く場合もあるわけであるからであろう。Представьте ситуацию.(~という状況を考えて(想像して)みてください)という文言を文頭で補えば分かりやすい。ただ中級者の会話力涵養のためには、通常のロシア語と違う用法が多いので当面このような地の文は無視して、会話の部分のみを今後の会話力アップのために丸暗記したらよいと思う。通常のロシア語と違う用法というのは、例えば、順次性(~して~する)の用法では普通完了体を使うが(「毎日歯を磨いてから体操する」という習慣の場合は不完了体が使える)、小話の地の文では不完了体の現在形が使われるなどである。例えば、Доктор слушает пациента и приговаривает:(医者が患者の話を聞いて、こう言った)などである。それゆえ順次的用法は完了体過去形が普通なので、設問の回答のようにзамечаетについては完了体過去形が使えるとした次第。подходитьは繰り返しであり、相対時制ということもあって過去形にはできない。つまり現在形のままである。чтоを含む従属文については現在形は主文と同じ時制を、過去形は主文より過去を、未来は主文より未来を示す。