2007年05月05日

●帯研(第80回)

チェーホフの小説で一番好きなものはПопрыгуньяだが、拙著「ロシア式ビジネス狂騒曲」で、主人公の夫のモデルはКувшинниковというスラムの警察医であると書いた。これはГиляровскийの書いているものに拠ったものだが、Эренбургはチェーホフが手紙の中でКувшинниковの42歳の妻は自分がこの小説の主人公だと思い込み、中傷だとチェーホフを非難していると驚きをこめて書いている。それはそうだろう。確かに彼女の夫は医者で、画家と同棲していた。ただ小説の主人公は御年20歳だから買いかぶったものだ。この画家は有名なレヴィタンでこれがもとでチェーホフと仲たがいしてしまった。夫のほうは特に何も文句は言わなかったらしい。まあいい役回りだから当然と言えば当然だが。この他に「チャイカ」のニーナ・ザレーチナヤのモデルはチェーホフの家によく出入りをし、チェーホフにぞっこんだったオペラ歌手志望のリーカ・ミジーノヴァだったとか、トリゴーリンは作家のポターペンコだとかの類である。
Владимир Вольфович на Птичьем рынке покупает белого коня. Соратники по партии интересуются:
- Парадом собираетесь командовать?
- Нет, на Кремлевских воротах везде повесили «кирпичи», так я на коне в Кремль въеду.
設問1)オチが分かるように訳せ。

Posted by SATOH at 2007年05月05日 14:01
コメント

チェーホフの話は短いので読みやすいですね。ウエットでなく乾いたニヒリズム(明るいとまではいいませんが)が魅力なのでしょうか。ロシア語でもトライしてみたいところです。

<和訳です>
ヴラジミル・ヴァリフォーヴィチ(ジュリノフスキー)は家禽市場で白い馬を購入しました。党員仲間は興味津々です。
「パレードの指揮でも取ろうっていうのですか?」
「いいや、クレムリンの門には『車両侵入禁止』の標識がかかっているだろ。だからな、馬に乗ってクレムリンへ入ってやるのさ」

暴れん坊Жириновскийの小話ですね。テレビ討論番組でコップの水の掛け合いをしたり、取っ組み合いをやったり、何をしでかすかわからないところが変に魅力となっているようです。ロシア版ハマコーってところですか。
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オチはその通りです。ただ難を言えば「家禽市場で馬を買う」というのはおかしくはありませんか?Птичий рынокというのは今でもモスクワにありますが、小鳥や猫などを売っているペット市場です。それと原文通りに имя и отчествоをそのまま訳すのはどうかと思います。高橋さんは念のため姓をカッコにしていれているのでいいのでしょうが、一般の日本人にはカタカナが長く続いて読みにくいと思います。この場合は姓が分かるのですから姓だけにすべきだと思います。それと特に洒落というつもりがないなら「車両進入禁止」だと思います。私の訳は、
ジリノーフスキーがペット市場で白馬を買いました。党の同志が尋ねました。
「パレードでも指揮するつもりですかな?」
「いや、クレムリンの門はどこでも「車両進入禁止」の看板がかかっているから、クレムリンに馬で行くんだ」
解説)Жириновский関係の小話の一つ。ジリノーフスキー(1946年生まれ)はロシア自由民主党党首で右翼、スキャンダラスな言動でよく小話の種となる。父親はユダヤ人らしいが反ユダヤ的言動で有名である。

Posted by takahashi at 2007年05月06日 16:10

家禽市場というのは自分でもよく分からなかったものでそのままにしてしまいました。ペット市場というのがあるのですね。侵入は洒落ではなく進入の間違いでした。注意散漫です。

Posted by takahashi at 2007年05月06日 17:31
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