2007年03月05日
●帯研(第63回)
拙著「ビジネスロシア語」は中級以上のレベルの人には内容が簡単すぎると思われるかもしれない。ロシア語関係ではレベルを下げないと売れないという事情があるのは確かだが、授業などのチェーホフなど文学の講読と一緒にしてもらっては困る。講読は露文読解で、訳したものを、さらに露訳するということは普通ない。無論これをすればロシア語の実力が大幅にアップするのは間違いない。逆に拙著の例文や関連語句の日本語の部分を100%瞬時にロシア語にできるのであれば、拙著を読む必要はない。もし80~90%ぐらいであれば、プロの商談の通訳としては使えない。なぜかはお分かりであろう。商談の中で80~90%理解できるというのは、10~20%理解できないということで、そう人に商談を任せたり、通訳してもらうわけにはいかないからだ。つまり肝心のところが分からない可能性が出てくるからである。100%ロシア語にできてもそれはビジネスロシア語最低限が分かっているという事で、次にその商談の特殊な専門用語(技術用語が多い)をマスターしなければならないなど難関は続く。出版社の編集者の考え方次第だが、読者のご要望があれば、ビジネス会話力アップ用に構文(科学技術用語をベースに)や会話について「続ビジネスロシア語」というのをいつでも書く用意はある。今回の課題は、
В поезде посол и епископ поспорили, у кого из них более высокий ранг.
- Меня титулуют «Ваше превосходительство», - доказывал посол.
- А меня называют «Ваше преосвященство», - парировал епископ.
Сидевший с ними в одном купе коммивояжер сказал:
- Из нас троих самый высокий ранг у меня. Когда я прихожу к покупателю, он встречает меня словами: «Боже мой! Опять вы!».
設問1)オチが分かるように訳せ。
列車の中で、大使と司教がどちらの地位が高いか口論していました。
「私は『閣下』と呼ばれています」と大使が主張しました。
「私だって『猊下』と呼ばれていますよ」と司教が反論しました。
二人と同じ客室にいたセールスマンが言いました。
「この三人の中じゃ、私が一番地位が高いですよ。お客さんのところへ行くと、『おお、神様!またアナタ様ですか!』と言われますからね」
боже мой!を文字通り「私の神」とすれば人間の作った地位より高くなるというオチですね。
коммивояжер とは商社などの営業担当などの意味で使うこともあるのですか。
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非常にきれいな訳で、付け加えるところはありません。強いて言えば、司教はカソリックで、ロシア正教なら主教ですが、別に舞台がロシアとは限りませんし。このセールスマンのロシア語に商社の営業担当という意味はありません。現在ならменеджерというのが近い(課長という感じはしますが)ですが、営業担当なら Я работаю в торговой фирме.とするしかないと思います。
私の訳は、
汽車の中で大使と主教のどちらの位が上かと言い争いをしました。
「私の称号は〔閣下〕だ」と大使が証明しようとしました。
「私には〔猊下〕と呼ばれる」と主教が言い返しました。
二人と一緒に同じコンパートメントにいたセールスマンがこう言いました。
「3人の中で最も位が上なのは私ですよ。お客様のところに行くと、〔おお、神よ、また来たの〕という言葉で出迎えてくれますから」
解説)поспоритьには「賭ける」という意味もあるが、このテキストでは賭けの対象がないので、いい争いをしていると言うことが分かる。ただ「賭ける」という意味もあることを覚えておくとよい。
司教か主教か迷っていましたが、カトリックの神父の方が面白かろうと思って司教としてしまいました。ロシア正教のことはすっかり抜けていました。ロシア語の小話なのにいけませんね。
「営業担当」というロシア語はないのですね。言語が異なると肩書きを示す対応表現はなかなか厄介ですね。
英語だとSales Representativeなどといったりすることもあるようですね。