2007年03月09日

●モスクワ蚤の市(2001年5月)その1

このエッセーは日本貿易会月報2001年5月号に掲載されたものである。

はじめに

モスクワは人口800万の大都会で、政治や経済などについてテレビや新聞で取り上げられる機会も多い上に、最近は観光などビジネス以外で訪れる日本人も数多いると聞く。クレムリンや赤の広場などはよく知られているが、地元に住んでいないと分からないような土産物の穴場というのがあるのでここで一つ紹介したい。

イズマイロヴォ

モスクワ市内の東にイズマイロヴォ森林公園が広がっている。近くに池があり、ここがピョートル大帝海軍発祥の地でもある。ここにノミの市がある。正式名称はイズマイロヴォのヴェルニサーシュ(絵画展の特別招待日というのが原意)という。1986年頃、画家が自作を展示して外国人観光客に細々と売っていたものが始まりである。それをアレクサンドル・ウシャコーフという遣り手が一変させた。木造のクレムリン(ロシア語で城塞)を模した建物の中に、土日だけ開催の大規模な土産品市場が出現したのである。地下鉄イズマイロフスキー公園駅から歩いて5分と地の利もよい。ロシアではルーブル以外使えないが、ここはルーブルでもドルでもよいというのが有り難い。値切れるのも楽しみの一つである。ただ革命後商売のかけひきという伝統がほぼ絶えていたのと、売り子が面倒くさがりなのか、値切れるのは5~15%ぐらいがせいぜいであろう。スリや乞食は取締が厳しいのか私は見た事がない。

ノミの市散策

ある冬の朝。快晴、気温マイナス17度。息が白いというよりは機関車の蒸気のようだ。お客さん二人とノミの市へ行く。寒いので毛皮のコートに毛皮の帽子は耳あてをおろしてある。入り口前の駐車場の回りには、ロシアの伝統的な大道芸「熊使い」がいた。
入り口にはロシア民族衣装を着た女性が一人10ルーブル(40円)の入場料を取っている。入り口を通るとそこは木造の小間が屋台村のように4列ほど並んでいる。毛皮、琥珀、ショール、ガラス製品、セイウチの骨細工などの売店の他に、シャシュルィキー(シシカバブーとかケバブに近い羊肉や豚肉の串刺し)のいい匂いが漂ってくる。入り口が出口を兼ねている。市内や空港より品揃えは豊富で値段も心持ち安いようだ。小路がT字路になっていて、突き当たりにはロシア民族衣装を着たおばさんコーラスが、こちらの知らないロシア民謡で得意の喉を披露している。
私のお勧めは、緑の琥珀である。無論緑色の琥珀というのは存在しない。薄い黄色の琥珀の裏側に黒っぽく色を塗り、目の錯覚で緑色に見せているとの説明だった。銀をあしらったものが20ドルぐらいである。これに日本で金の鎖をつければ奥様方へのよいお土産となろう。たまに昆虫入りの琥珀がある。3ドルくらいなら間違いなくまがい物(琥珀ではなく黄色のプラスチックを使っているし、形がきれいすぎて一目で分かる。)。20ドルでも大型の虫(バッタなど)や蛙といったもの、あるいは卵大の琥珀に蜂が入っているものは、琥珀を溶かして流し込んだもののようだ。ブヨとか蚊なら本物の可能性は高くなる。とはいえ自分で気に入った者ならニセモノでも御愛敬と思えばよい。1割値切ったが、金を払う時手袋を脱ぐので寒いというより指が痛くてしかたがない。手がかじかんで1ドル札がなかなか数えられずつかめない。口もこわばっていてなかなか通じない。売り子も寒さで足踏みしている。
他には今冬日本でも流行と聞くカシミア風ショール(ロシア語でプフと言っている。)がある。オレンブルグ(モスクワ南東でカザフスタンに近い都市)が有名だが、ヤギの柔毛(長い方ではなく、短い方の毛)で編んだもので、色は白っぽいものと黒っぽいものの2種がある。形は正方形と長方形。プラトークという薔薇など柄のフリルのついた派手な模様の正方形の肩掛けがあるが、これでは日本では若い娘でさえ着るのに躊躇しよう。プフは軽くて暖かく、首に巻けばコートのちょっとしたアクセントになる。値段も15~20ドル前後と手頃である。1枚客先の結婚式のお祝いに買った。

Posted by SATOH at 2007年03月09日 18:04
コメント

イズマイロヴォは大好きです。わが家はミーハー家族なので、一日中歩いていてもあきないです。絵を売っているおばあさんがいたり、琥珀のアクセサリーを広げているお兄さんがいたり、イコンがあったりとほんとに楽しかったです。モスクワに行ったら一番先に行きたいところです。そういえば、オレンブルグのカシミアショールはブランド品でしたね。これだけは見る目が肥えてにせものにはだまされません。見栄えもよく暖かく軽くと三拍子そろって、あまり高くないので(日本円にすると)私も買いました。本物は指輪を通せるぐらいにしなやかとのことで、あの幅広のショールを、はじから指輪をとおして見せてくれました。おみやげにも最高です。あそこで買った上質のアンモナイト、きっと日本では高いと思うのですが…

Posted by メイ at 2007年03月11日 22:52
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