2007年03月09日

●モスクワ蚤の市その2

年配の女性向けには孔雀石(緑色、20ドルぐらい)やラピスラズリ(群青色、ロシアのウラル産のものは白が多く仕上がりがきれいじゃないので、アフガン産の石を使った真っ青なネックレス100ドル前後がいい。)の小さな動物の形をした置物やネックレスを勧める。
マトリョーシュカは入れ子式の人形だが、元は日本の箱根細工で19世紀末にロシア正教の司祭がロシアに持ち帰ってロシアの民具となって広まったものだというは案外知られていない。徳利形の農婦が基本型だが、最近は目が大きくなり、胴がさらに丸まったものも出てきた。中に20個ぐらい入っているのも有る。一般に色使いが原色を使った派手なものが多いが、たまにパステル調のものもあり、これはとてもおしゃれだ。7個入って20ドルぐらいであろう。値段の違いは中にいくつ入っているかということと、木の材質による。節があれば安い。弟が絵をやるので、一度塗る前の木だけのマトリョーシュカを買って喜ばれた事がある。好きなように絵とニスを塗れば自分だけのマトリョーシュカの出来上りと言うわけである。時間が1週間あるなら、その場で写真を撮って、1週間後に写真に合わせてマトリョーシュカに注文した人の顔を描いて渡してくれるくれるというサービスもある。プーチン大統領などのマトリョーシュカもある。こういうのは絵が下手なので好きではない。10年前は一流の人が描いてゴルバチョーフやエリツィーンの顔もデフォルメしていてなかなかのものだった。
他に1本の木から削り出したハト(シシェプナーヤ・ゴールピ)は、体側部分を細く薄くいくつも板状に切り、それを扇のように広げて糸で結び翼に見立てていて天井に吊るして楽しむものだがこれもよい。骨細工はセイウチのものが多いが、中にはマンモスのものがある。マンモスは象牙と違い死滅しているので日本では輸入禁止の対象にはならないと思うが、万一税関で見つかった時に証明するのが大変であろう。将校用と称している腕時計は20ドルくらい。毛皮の帽子は養殖のミンク、ジャコウネズミ、ケナガイタチ、ウサギ、希にオオカミがある。黒テンは高価だからか見かけない。私のお客さんの一人がミンクの帽子を買った。グルジアなまりのロシア語で売り主は、耳当てをおろしてひもを結び、裏返すようにすると上に来た耳当てのひもが見えず粋だと教えてくれた。ロシア語で「100年生きたら100年学べ」というが、まさにその通り日々勉強である。ミンクで70~100ドル。ウサギは30ドルと安いが毛が抜けやすい。霙交じりの季節まで使おうと考えるなら水生動物(ジャコウネズミやカワウソなどが)水をはじいていいと言う。100ドル前後をお客さんに勧める。なんだかサクラのような気がしてきた。
ノミの市とはいえ実質的には民芸品など土産品市場だが、さっきのT字路を左にはいったところの奥まったところには、古いカメラ(ライカなど)ヤサモワール(ロシア風大型湯沸かし)、挙句の果ては防毒マスクや潜水具のヘルメットなどの骨董品がおいてある。だれが買うのだろう。小さいなら文鎮にでもなるのだが。
T字路を2階に上がると、この市本来の姿である絵が売っている。ロシア独自のサウナの混浴風景を描いたものや、ウオッカのある暮らしなどは見ていて面白い。それ以外は好みであろう。風呂屋の看板のようなものもある。古色のついたイコン(ロシア語ではイコーナと言い、聖像画)も売っている。煤をつけて本物らしく見せてはいるが、まず100%ニセモノだ。

おわりに

モスクワのノミの市についてとりとめなく書いてきたが、読み返すとほとんど女性向けの土産品の紹介であることに気がついた。私のアテンドする客は中年のおじさんが多いので、どうしても日頃の奥方への罪滅ぼしのお手伝いとなっているのだろう。モスクワには色々な顔がある。今日も昼休みに事務所の近くの池を散歩していたら、中年のおばさんがこの寒さの中で(マイナス8度)一人池に漬かっていた。池は全面凍結しているが、2メートル四方の穴が開けてある。そこで泳ぐと言うよりは漬かっているのである。公園だから焚き火ができないからであろうか、上がったら脱ぎ捨てた自分の着物で体を拭いて走り去った。ウオッカの一気飲みといい、ロシアは極端から極端の国である。こういうのを見ると呆れると言うより、ただただ感嘆せざるを得ない。思い出すだけで背筋が寒くなってきた。

Posted by SATOH at 2007年03月09日 18:08
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