2007年01月08日
●帯研(第37回)
И подо льдом вода течет.というのは「アヒルの水かき」で、比ゆ的に表面上は何もしていないようでも水面下ではいろいろ動きのあることを言うが、ロシア語の勉強に当てはめると、何も勉強しなければ、自分では現状維持のつもりでも間違いなく実力は落ちている。少し勉強してようやく現状維持であり、少しでも実力を伸ばそうとするならけっこう大変な努力が要る。発音やイントネーション、聞き取り能力がある程度合格点なら、日々の勉強はロシア語の読書しかない。毎日10ページぐらいを分からないところは文法も含めて、自分で出来るところまで徹底的にやるようにすればよい。今回は日本人にはさして面白くない小話だが、ロシア人気質(русский менталитет)を知る上でよいと思うし、アイロンの小話では古典と思われるものを挙げる。この小話のバリエーションとしてмясорубкаを使ったものもある。
У одного холостяка сломался утюг. Он идёт к соседу за утюгом. Сосед говорит, что утюг у него есть, но будет лучше, если холостяк спустится на два этажа ниже, там живёт одинокая приятная дама. Пусть попросит у ней, заодно, может быть, и познакомятся. Холостяк спускается по лестнице и думает:
- Да, хорошо бы с женщиной познакомиться. Но с другой стороны...Пьяный домой не приходи... Друзей не приводи...Подруг...На рыбалку не сходи...На футбол...
Подходит к двери, нажимает кнопку звонка. Открывает приятная женщина.
- Да пошла ты...со своим утюгом!
設問1)和訳せよ。
お久しぶりでございます。
本年もどうぞよろしくお願いをいたします。
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男やもめはアイロンが壊れたので隣に借りに行った。
お隣さん曰く、うちにもあるにはあるがもっといいいのがあるぜ。2階下ったところに感じのいいやもめが住んでる。彼女に頼んで、ついでに知り合いになっちまえよ。
男は階段を下りながら思う:
なるほど、女の人と知り合いになれりゃあ結構だ。でも考えようによっちゃ、呑んでうちに帰るな、男でも女でも友達は連れてくるな、釣りとかサッカーもダメ…
ドアに近付いて呼び鈴を押すと感じのいい女性が出てきた。
「このアマ!アイロン持ってとっとと出てけ!」
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アイロンを借りに行くだけなのにもう所帯を持った気でいる、気の早い男のお噺、と捉えました。最後の一文は『実践ロシア語会話』46頁にあるサウナでのレーニンのおはなしを思い出しました。辞書だけ見て、あとは勢いで訳したので誤りも多々あるかと思います。ломатьсяとかзаの使い方が勉強になりました。
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全体的にオチも理解しているし、訳も原文の雰囲気をよく伝えています。「ついでに」の訳もきれいです。ただ誤訳だと思うのは、「やもめ」です。「やもめ」は後家で、男やもめはバツイチということでしょう。となるとхолостякやодинокаяは独身ということですから、必ずしもバツイチかどうかは分かりません。というよりもバツイチの可能性は低いと思います。私の訳は
ある独り者のうちでアイロンが壊れました。アイロンを借りに隣に行くと、隣人曰く、アイロンはあるけど、2階下に行けば、そこには独身のすてきなレディーが住んでいる。彼女に頼めば、ついでにお近づきにもなれるかもしれないと。チョンガーは階段を下りながら考えるには、
「そうだな、女の人と知り合うのも悪くないな。でもな、酔っ払って家に帰るなとか、友達を連れてくるなとか、ガールフレンドなんてなぁ、釣りに行くなとか、サッカーなんかなぁ」
ドアに近寄って、ベルのボタンを押しますと、素敵な女性がドアを開けると、
「自分のアイロン持って失せやがれ」
解説)ロシア人気質を表した小話で、ロシア人が好むもの。日本人にはそれほど面白くないかもしれない。アイロンに関する小話の典型である。あとはヤクザのアイロンによる拷問に関するものや、愛人のところでアイロンがけさせられるものがある。
И на льдом вода течет. まったく同感です。長~い怠け癖からの脱皮が大変ですが…
「語学の上達に王道はない」をいま一度肝に銘じます。
和訳)
独身男性はアイロンが壊れたので隣人に借りに行きました。隣人はアイロンはあるが、2階下に下りていけば独身の感じのいい女性が住んでいるので、そのほうがいいのではないかと言うのです。その女性にたのんでついでに知り合いになっちゃえばと。独身男は階段を下りていき、次のように考えました。
「うん、女性と知り合いになるのもいいな。でもこんなこともあるよな……酔っ払って家に帰らないで……男連中を連れてこないで……女友達を……釣りに行かないで……サッカーに……」
ドアに近づいてチャイムを押しました。すると感じのいい女性がドアを開けてくれました。
「君のほうが出かけるんだよ……アイロンをもって!」
最後のオチの一言。完了体の過去形が完了体未来を代用する例だと考えました。Пошли! Поехали! Ну я пошёл. の用法ですね。日本語でも「行った行った!」などがありますね。ここでは、独身男がすでに彼女との結婚生活を空想しながら階下に下りていき、自分の空想のなかで、彼女から「お客をいろいろ連れてこないで !」、「あなた(独身男)もあちこち出かけないで !」、と言われたので、開口一番それに対して答えてしまったという設定なのだろうと思いました。と書きつつちょっと心配になってきました。
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オチは分かっているようですが、訳だとメイさんの文章の中の「出かけないで!」と「!」を訳のほうにいれないと、「~しないで」が命令形だとは分かりにくいでしょう。メイさんの訳は上品過ぎて、今回の訳はコーシュカさんのほうがよいと思います。卑語について勉強の要ありです。
コーシカさん、すごいすごい!訳が絶妙!びっくりでした。このまま本に出てきてもいけそうですね。にしても突然出てきて驚かせないで下さいよ。あ~びっくりした。
Да пошла ты...со своим утюгом! がこのような日本語訳になるとはびっくりでした。Пошли! Поехалиなどを普通「じゃ出かけよう」と訳すことが多いので「出て行け!」というふうなニュアンスをとらえ切れませんでした。勉強になりました。
>さとうさん
ご解説ありがとうございます。
「やもめ」ではやっぱりバツイチになってしまいますか。「チョンガー」は初耳でした。
>メイさん
こちらでは(でも?)お久しぶりです。熱心に参加していらっしゃるお姿に励まされております。