2006年11月01日

●帯研(第3回)

前回、詩を課題にしたのは、格好をつけたからではない。ロシアのサイトを見ても詩の一部を模したり、パロディー化したものもある。有名な詩は日常に取り入れられているのであり、一部の詩はロシア人の常識を知るのに必要だと感じているからである。小話やロシアのサイトなどでよく出てくる詩を挙げてみると、
よく引用されるロシア詩
 ロシアのサイト名、小話、口語的言い回し、日常会話などによく引用されるロシア詩についてまとめてみた。リストは不完全なものであり、今後増えるであろう。

(Пушкин)
К Чаадаеву
Руслан и Людмира(特に Песнь перваяにある У лукоморья дуб зеленый)
Дубровский

(Лермонтов)
Три пальмы
Выхожу один я на дорогу
Белеет парус рдинокий

(Маяковский)
Владимир Ильич Ленин - Сдайся, враг, замри и ляг
Как живете, как животик – Кем быть?
В. Маяковский – Простыми, как мычание

(Эренбург)
Бабий Яр

それと、出題は試験ではないので、回答を辞書やネットで調べても構わない。逆にネットで検索することで検索能力が高まることを期待している。帯研は実戦で使えるかどうかというのが主旨なので、当面はビジネスロシア語を通じての会話力向上に力を入れたい。ビジネスロシア語は「礼儀正しさ」や「論旨の明確さや正確さ」が求められ、日常会話と違い訳に責任が伴うからである。では出題を。

Президент компании отвечает на стук в дверь.
- Входите.
Входит молодая смазливая женщина:
- Здравствуйте. Я читала, что вашей компании нужна секретарь-машинистка.
- Это верно, мисс. Если вы прибыли по этому поводу, хочу спросить вас, что вы умеете делать: вести делопроизводство, печатать, стенографировать?
- Нет, ни того, ни другого я не умею.
- Тогда на место секретаря-машинистки вы рассчитывать не можете... До свидания...
- Извините, но у меня есть одно качество...
- Какое, мисс?
- Я не беременею, мистер.
- О'кей. Мы берем вас на работу.
設問1)和訳せよ。
設問2)2行目Входите. の代わりにВойдите.を使えるか?使えるとしたらニュアンスの差は出るか?出るとしたどんなものか?

Posted by SATOH at 2006年11月01日 13:09
コメント

ビジネスロシア語(?)に挑戦です。
設問1)
(会社の)社長がドアのノックに答えて言います。
--どうぞお入り下さい。
若くて愛くるしい女性が入ってきます。
--こんにちは。貴社で秘書兼タイピストが必要だと読みましたので。
--ええ確かに。もしあなたがその件で来られたのなら、お聞きしますが(たいのですが)、あなたは何ができますか、事務ですか、タイプですか、速記ですか?
--いえ、どれもできません。
--それでは秘書兼タイピストのポストを望まれるのは無理ですね… ではまた。
--ただ、私は一つ素質があるんです…
--どのような?
--私、妊娠しない性質(たち)なんです。
--オーケー、あなたを採用しましょう。

設問2)このケースだと使えないように思います。Входитеは、相手も予想可能な動作への着手をうながすという意味の不完了体だと思いますが、Войдитеは相手に動作の完了を要求することになると思いますので、強い命令あるいはその動作を強要することになるような気がします。これは面接の場面なので、それほど強いニュアンスを伝えることはないように思います。
----------------------------------------
訳もよく練れていて(「愛くるしい」など私よりいい訳です)、しかも体の用法もかなり勉強されているのには感心します。正直言ってこれほどの回答は期待しておりませんでした。しかしながら、Входитеは不完了体の命令形で一般的な着手ではありません。これはノックされて、それに対する許可です。その場合は通常完了体を使います。つまりВойдитеが普通です。なぜ不完了体を使ったのかにはわけがあります。不完了体自体は完了体が陽とするなら陰で、目立たないということであり、着手も Садитесь.などのように普通礼儀として立っている人に対しては「お座りください」というのが自然であるということからきています。例えばОткрыть окно?(窓をあけましょうか?)と問われてOKであれば、許可として Откройте.と言いますが、Открывайте.なら(開けても開けなくてもどちらでもいいが、開けたければどうぞ)という無関心というニュアンスが出ます。小話を読めば分かりますが、社長は秘書募集したにもかかわらず応対が冷淡です。それを不完了体の命令で示しているわけです。岩波の露和のсестьの項に Садитесьは丁寧で、Сядьтеは命令を示すとありますが、普通のロシア人にこれら命令形のニュアンスの差はと聞けばこのような回答が返ってくるでしょう。完了体だから命令で、不完了体だから丁寧というのは間違いです。完了体を使うところに不完了体を使い、不完了体を使うところに完了体を使えば、無作法なニュアンスが出ることもあるというのが正しいわけです。例えば、Садитесь. と言ってからすぐ、Сядьте ближе к столу.と言えば丁寧な表現です。この場合は不完了体が着手を、完了体で追加の情報(様態)を示しているわけです。私の訳を書いてみます。
訳)会社の社長がドアのノックに応えて、
「お入りなさい」
若くて可愛い女性が入ってきました。
「こんにちは、御社では秘書兼タイピストをお探しと(何かで)読んだのですが」
「その通りです、お嬢さん。その件で来られたのでしたら、何がおできになるのか、事務が取れるとか、タイプができるとか、速記が出来るとかお尋ねしたいものですな」
「いえ、どれもできませんわ」
「それじゃ、秘書兼タイピストはあきらめなさるんですな。さようなら」
「すみませんが、一つだけ特技があるんです」
「何でしょう?お嬢さん」
「妊娠しないんですよ、ミスター」
「OK、採用しましょう」

Posted by メイ at 2006年11月07日 00:49

まったく逆の回答だったとは!こうなると、もう私はお手上げです。完了体・不完了体はいつも自分で納得できるほどわかっていないのに、こんな微妙なニュアンスになってくるとますますわからなくなってきます。この面接がかなり普通の面接よりも冷淡な応対であることすら読み取れていませんでした。
この文章では面接者の方からまずノックをしたということは、面接者がМожно войти? と聞いたのと同じと考えてもいいのでしょうか。なので、あとの説明にあるように、Войдитеを使うべきところなんですね。たとえば、普通の日本の面接会場のような場所で、中から、次の方どうぞ、と言うとき(ノックなしで)にはどちらを使うのでしょうか。あるいは会場の部屋の外に会社の人がいて「次の方、どうぞお入り下さい」という場合はВходитеが可能なのでしょうか。
ますますわからなくなってきました。
どうしましょう!?
-----------------------------------
ドアの外のМожно войти?という声がドアの中で聞こえるのかなという疑問はありますが、ノックがあったら完了体の命令形を使い、お客様を出迎えてから、部屋の前でお入りくださいというのは着手ですから、Входите!となります。また上記のように次の方というようなニュアンスのときは不完了体の命令形でよいと思います。いずれ詳しく説明しますが、お店で行列に並んで自分の番になったとき、売り子は Говорите!と言います。これは客がものを言うことは並んでいるのだから当然で、内容を聞いているわけです(缶詰3個とか、チョコケーキとか)、つまりСледующий!という意味とほぼ同じです。イントネーションも平板です。ロシアに行ったときに店やでよく観察すればこういうのも勉強になります。

Posted by メイ at 2006年11月09日 16:53
コメントしてください