2006年11月30日
●帯研(第17回)
参加者のコメントは私の説明が一方的だとか、分かりにくいなとか、ミスタイプが判明した時点で訂正することもあるのでご注意願う。今回はロシア語でのオチは簡単に分かるが、和訳が難しい小話。
- За чем очередь?
- За немецкими унитазами.
Трудящийся отстоял очередь и принес домой длинную узкую коробку. В ней он обнаружил две палки с острыми концами и инструкцию: “Одну палку воткнуть в землю и повесить на нее штаны, другой отбиваться от волков”. Потом он внимательно прочитал название: Ненецкий унитаз.
設問1)オチが分かるように和訳せよ。もしテキストそのままでの和訳が難しければ、オチが正しくなるなら、ある程度テキストの和訳に手を入れてもよい。無理なら和訳と解説を別々にしてもよい。
設問2)коробкаとящикの違いを述べよ。
設問1)
― この行列には何があるんだい?
― ユ(ヨ)ーロッパ人の便器があるんだと。
その労働者は行列に最後までならんで家に細長い箱を持ち帰った。その箱の中にあったのは先がとんがった棒が2本と取り扱い説明書だった。その説明書には「用をお足しになるさいに棒の一つは地面に突き刺してズボンをかけてください。もう一つの棒は用を足している最中に狼がきたら撃退用に使用してください」と書かれていた。それから彼はその品物の名称を注意して読み返した。「ユーボクミンの便器」
この話はНенецкийをнемецкийの便器だとみんなが勘違いして買ったという語呂合わせが笑いのポイントとなると思いますが、そもそも「ネネツ人の」という設定自体がおかしさを加えているわけですね(だれもそんなものは買わないというありえない設定ということで)。культурныйだと思っていたらнекультурныйだったという結末がロシア的性格を示しているようでおもしろいのだと思います。ロシアのトイレの汚さをнекультурныйというとロシア人はひどく気にすると以前読んだ記憶がありますが、そういう皮肉も効いているなと自ら納得してしまいました。私の訳例では「ユ(ヨ)ーロッパ人」と「遊牧民」、ユーとユー、ジンとミンで音遊びをしてみたつもりなのですが、日光の手前でした。イマイチ。失礼しました。
設問2)
коробкаは「小さい箱でボール紙・ブリキ製など蓋が一般的にあるもの」と研究社の露和辞典にでていました。一方、ящикは「箱・ケース・キャビネット・引き出し」などの意味があり、素材は何でもいい感じです。коробкаはマッチ箱とかタバコの箱などに使うようですから、移動・携帯のために物を入れる機能があるものという気がします。ящикはゴミ箱・ポスト・キャビネット・引き出しなどある場所に設置されていて物を入れる機能があるもののことを示す感じです。
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設問1)オチはよく理解されているようですが、オチの和訳はそれこそイマイチです。ただ原文にこだわらず「ユーロッパ人」とした意欲は買います。今後伸びるでしょう。苦言を言えば、1行目、「この行列には何があるんだい」というのは訳しすぎで、「これ何の行列?」ぐらいの方が日本語らしいと思います。設問2)についてはその通りですが、この設問で露和辞典ではなく、露露辞典でのチェックをしてみて、この場のニュアンスの差を自分で体感してはという趣旨です。露露辞典をお持ちかどうかしれませんが、なければ一つ購入されることを勧めます。それとビジネスで言えば、梱包で使う木箱はдеревянный ящикと言います。私の訳がベストということでは決してありませんが、ご参考まで、
「何の行列ですか?」
「熱式便器の」
勤労者は行列に立ち通して、家に細長い箱を持ち帰ります。箱の中に先のとがった2本の棒と取り扱い説明書を見つけました。“1本の棒を地面に突き刺し、それにズボン下をかける。もう1本はオオカミを追い払う。後でよく見てみると名称はネネツの便器でした。
解説)
・原文はドイツ式のнемецкий をネネツ式のненецкийにかけている。力点の違いに注意。ネネツ人は極北の民族。
・ коробка とящик
коробкаはイメージとして小さな紙や金属製の箱。ящикは木製の箱。
参りました。熱式とネネツ式ですね。便器の機能面にまで考えがまわりませんでした。露露事典もこのところ見かけていないので実家に帰って探してみます。