2005年07月25日
●児童文学(1)
ロシア語の読解力をつけるには子供向けの簡単な本、例えば Изумрудный город , Волков(オズの魔法使いの翻案)もよいが、設定が魔法の国では現実との接点はない。本を通じて会話力をつけたいと考える向きには、やはり現実の生活に近いものがよい。Таня Гроттер и магический контрабас, Д. Емец, 2002, Эксмо(10巻まで出ている)はハリーポッターГарри Поттерのパクリ(この他に亜流ものとして別の作者のПорри Гаттерいうのも売れている。これはハリーポッター第6作で Slughorn教授がハリーのことを酔っ払って Parry Otter と呼びかけていたのを思い出させる)だが、主人公はお転婆な女の子で男の子二人を従えている。設定はモスクワ(Таня の住んでいたРублеввкое шоссеに私も住んでいた)で箒の代わりにコントラバスに乗って活躍する。モスクワの学校の雰囲気がよく出ているし、言い回しも現代的である。ロシアの妖怪も現代風にアレンジして出てきて面白いが、作品としてみれば主人公の性格が平板なので、あまりにもパクリそのものという感じは否めない。ただロシア語中級者にとって如何に会話力を高めるかと言う観点から見れば役に立つ。こういうものは著作権もからむので勧めていいのかどうか迷うが、それよりも著者の勧めるのは、 Приключения Незнайки и его друзей(モノ知ラズとその仲間達の冒険), Носовである。3部作で第3作の Незнайка на Луне (月に行ったモノ知ラズ)がよい。小人が月へ行って見ると、月には空洞がありそこにはなぜか言葉も同じ小人が住んでいて資本主義が支配していた。1960年代半ばのソ連時代真っ盛りの作品だからやむをえないが、出てくる資本主義者の性格が可愛くて面白い。会話も多く、舞台が資本主義社会だからということでかソ連の現実社会で使われる会話表現に近いものが活字として用いられている。Незнайка というのはカナダの作家Palmer Cox (1840 – 1924)のBrowniesという小人が活躍する物語詩を1898年Анна Борисовна Хвольсон (18?? – 1934) が「Царство Малюток」という題名で翻案した。そのときの主人公はシルクハットに燕尾服、モノクロ眼鏡の気取り屋だが臆病なМурзилкаで、Знайка モノ知リやНезнайкаモノ知ラズも出てくる。絵の人物をテキストの人物描写で探すのもいい勉強になるはずである。小さいときにこの物語を読んだНосов がНезнайкаを主人公にした小人ものを思いついたという。作品にはПилюлькин丸薬博士、Винтикネジ太郎、Пулькаタマ之進、Булькаゴボゴボ(犬代わりのキリギリス?)、Тюбикチューブ、Авоська и Небоськаヒョットンとカモネン、 Пончикドーナッチョ、Растеряйкаアワテンボ、Гунькаボロンなどの小人が出てくる。2004年にС. Гроссу およびВ. Гагурин監督, Про-Класс, «Первый канал»でХвольсонの作品をもとにアニメНезнайка и Баррабасが作られた。ただ主人公はНезнайкаである。インターネットでПальмер Коксでアクセスすれば、1913年版の作品が読める。筆者は1990年に古本屋で可愛い絵に惹かれて偶然買った。一方Мурзилкаは1924年後の大作家マルシャーク、チュコーフスキー、プリーシュヴィンという作家などが加わって作りだした児童向け月刊誌(物語、詩、絵などが載った)の題名となり、後に黄色いイヌの姿に生まれ変わった。この雑誌は現在も発売されている。最近出版された「ムルジールカとその仲間たち Мурзилка и его друзья, Дрофа-плюс, 2003」は、これまでこの雑誌に載った作品から選んだものである。ただムルジールカを主人公とした物語などはなかったが、ついにБ. Карлов がПриключения Мурзилки, Азбука-классика, 2004 でこのイヌの方のムルジールカを主人公にした本を書いている。おまけに相棒としてШустрик(チャッカリン、ロボット)、Мямлик(ノロマー、ポリマーミュータント)が出てくる。