2011年05月09日

●和文解釈入門 第29回

あるとき温泉の注意書きの「入浴の前に、かかり湯(かけ湯)をしてください」をПеред купанием сначала подмойтесь.と訳したら、20年くらい日本に住んでいるロシア人女性から、подмойтесьをпомойтесьに直された。помытьсяはвымытьсяと同義語で、вымыть себя, очиститься мытьём от грязи, пыли и т. п.ということで「全身を洗う」と言う意味になる。無論全身を前もって洗ってから入浴した方がいいのかもしれないが、それでは注意書きとは意味が違うし、熱い湯に入る前に身体を湯に慣らすことで、身体の負担を減らして身体の具合が悪くなるのを防ぐ意味もあると指摘したら、びっくりしていた。подмытьсяはподмыть себе нижние части тела (промежность, ягодицы и т. п.(下半身〔股間、お尻ほか〕を洗う)であり、全く正しいし、この意味でピリニャークも使っていたはずだ。ところが女性に対してこの語を使うと「ビデを使う」と言う意味と誤解されやすいという事も分かった。それで、後から考えてПеред купанием сначала плесните на себя тёплой водой.としたらどうかと考える次第。無論温泉などの現場で訳す時はпомытьсяと訳してもいいかもしれない。
ロシア人に露訳した文をチェックさせると、日本語で難しい本も読める、パソコンの漢字入力も楽々できるというような人(そういうロシア人はほとんどいないだろう)は別にして、ロシア語やロシア文化との整合性ばかり見ていて、肝心の日本語や日本(大衆)文化との整合性は分からないから無視してしまう。ただ大半はスペルや文法、語彙の選択のミスなどの指摘で、なるほどと中級者でもロシア人のいうことをそのまま信じてしまう。ロシア人にロシア語をチェックしてもらう時は、和文解釈ではあくまで和文がメインなので、何年日本に住もうと日本の習慣や日本語に通じていないロシア人に対しては、あくまでもインフォーマントとして接するという考え方も頭の片隅に置いてもよいかもしれない。
初心者にロシア語を教えるときにはアーカニエаканьеという言葉を使うかどうかは別にして、力点のないоはаに近く発音すると教える。коронаなどはカローナと発音される。これは英語にもあることだからそれほど驚くことではないのに、これでやる気をなくす人もいる。身近な例を挙げれば、車のカローラなどもそうである。これはCorolla(花冠)と英語では書く。
家電はэлектробытовая техникаでこの場合のтехникаは機械の総称で「機械類」という意味である。では白物家電(家事家電、生活家電)は何というかと言うと、бытовые (электро)приборыで、含むのはутюг, холодильник, пылесос, полотёр〔電気床磨き機〕, стиральная машина で、テレビは含まない。テレビを含むものはオーディオ家電(カラーテレビ、ラジオ、テープレコーダー、ステレオ、ウォーキートーキー (цветные телевизоры, радиоприемники, магнитофоны, стереофонические установки, портативные приемопередатчики)といい、これはбытовые радиоэлектронные приборыである。
設問)「こんな巨大な蚊は一度も見たことがない」をロシア語にせよ。

Posted by SATOH at 2011年05月09日 15:33
コメント

Я ни разу не видел(а )такого гигантского комара.


こんにちは。再開していただきましてありがとうございます。宜しくお願い致します。
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すみません。再開ではなく、私のうっかりで申し訳ありません。以後はこういうことはないようにしますが、もし回答が遅れたりした場合は遠慮なくご一報ください。一応今のところ180ぐらい文を作っていますので(全部が使えるとは思えませんが)、回答が寄せられる限りは続けたいと思います。ところで、寄せられた回答ですが、体の用法も理解されているし、基本的な点は問題ないのですが、такого гигантского комараと単数ではなく、複数生格にするのが普通だと思います。私の回答と解説は、
Таких огромных комаров я вообще никогда не видел.
こういう経験(~したことがある)という表現を訳すときには英語では現在完了を使うが、ロシア語では不完了体の過去形を使えばよい。「(見た)ことがない」や「(~した)ことがある」という文の文末だけを見て、どうしてロシア語になると過去形が出てくるのか不思議に思う方もいるかもしれない。日本語では(見た)や(~した)で過去になっていて、「ない」や「ある」は発話時点が現在というだけである。設問の答えのような露文は特になにもなければ発話時点は現在(「~したことがない」であって、「~したことがなかった」ではない)と考えるのが普通である。раньшеが省略されていると考えてもよい。
しかし、例えば2年前に「カラマーゾフの兄弟」を初めて読んだとしたら、〔それ以前は「カラマーゾフの兄弟」を読んだことはなかった〕となり、日本語では「~したことがある」と「~したことがあった」の意味の区別は明確である。設問のロシア語の答えは文脈によっては「一度も見たことがなかった」とも訳せる。これは次回詳しく紹介するが、事実の名指しという不完了体過去形の用法で、過去の出来事が起こったかどうか、その有無だけを示すもので、ロシア語では発話時点がいつかは問題にしていないのである。だからこの設問の回答を見て「~したことがなかった」としか訳せなかった人は、体の用法の基本的な意味が分かっていないことになる。そうはいっても理解するのはそれほど難しいことではないことは上記の説明でもお分かりだろう。それでは「~したことがなかった」をロシア語にするには、どうするかというと、基本的にはその前の文で過去であることをはっきりさせておくか、「そのときまで」や「2年前まで」というような文言を入れる、つまり「わたしはそれまでこのような大河を見たことはなかった」はя до того времени не видел таких мощных рек.となるし、「2年前まで(2年前以前には)カラマーゾフの兄弟を読んだことはなかった」はЯ не читал «Братья Карамазовы» раньше, чем два года назад.とでもするしかないと思う。
 私の回答で蚊が複数生格になっているのは、目の前にいる蚊が複数いた場合でも、1匹の場合でも同じである。1匹だと考えるとТаких огромных комаров я вообще никогда не видел, как он (этот комар).という風に, как + 主格(「~のように」と言う意味ではкакの前にカンマが来る)が省略されているからである。同じ単語繰り返さないとか、書かなくても蚊だという意味はわかるからであろう。なぜтаких огромных комаровと複数になっているのかは、巨大な蚊というのは世界に一匹というわけではない(世界最大の蚊は1匹だろうけど)し、過去にいろいろ巨大な蚊を見た上でだから複数になるのだと思う。しかし、これはтакойが必ず複数形を取ると言う事ではない。世の中にこれしかないというニュアンスであれば、Я не такой, как он.(私は彼のような人間ではない)とか、Это может выполнить только такой человек, как Сидоров.(これはシードロフのような人だけがやれる)などが可能である。
 この他に(В) первый раз я вижу такого огромного комара.(初めてこんな巨大な蚊を目にする)と現在形にしてもよい。これなら目の前の蚊1匹を見ているわけだから単数になる。いわば発想の転換である。
私の回答にはникогдаを使ったが、御回答のようにни разуでもよい。念のためこの二つのシノニムの違いについても書いておく。никогдаは時間的に非常に長い期間(人の一生や銀河の寿命など)の中で1回ないしは数回の動作を想定しており、そのため長い時間を相手にするということで不完了体(過去、現在、未来)と結びつきやすい。完了体過去とはあまり結びつかないが、уже, больше, так и неなどと一緒なら可能である。完了体未来形との結び付きもよく見る。ни разуは比較的短い期間(長くても人の一生が限度)の間の具体的な一点を示す。そのため完了体(過去や未来)とよく結び付く。不完了体過去形とも可能だが、その場合は事実の名指し(特に経験)である。不完了体現在形とは結びつかない。

Posted by asuka at 2011年05月30日 10:45

Я первый раз увидел такого огромного комара.
увидел? вижу? がポイントでしょうか?
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設問の読み違えですが、これはこれで非常に面白いと思います。お答えを訳すと、「このような巨大な蚊は初めて見た」となり、過去の一点を示すアオリスト的用法となります。первый раз вижуなら「今初めて見る」という現在の時制の用法となります。見えるという意味では、увиделは使えますが、「人に会う」という意味では、виделしか使えないことにご注意ください。つまり「会う」という意味では、過去の時制は不完了体過去形が、不定法では不定形のувидеть、未来の時制では完了体未来形のувижуを使うということに、使い分けがあるようです。
 設問に戻りますが、経験については、「1度~もしたことがない」というときには、完了体過去形(否定の強調、アオリスト的用法)、不完了体過去形(経験)の両方が可能です。ただникогдаは過去、現在、未来の時制で使われるが、過去の時制では完了体と使われることはあまりなく、不完了体とともに用いられることが多い。未来の時制では例示的な用法で使われることが多く、完了体未来形と共に使われることが多いようです。ни разуは過去の時制でよく使われ、完了体過去形が一般的で、不完了体過去形は経験の用法(3-1-7-1項)で使用可能であるが、現在の時制では用いられず、完了体未来形とは可能であるとは言え、一般的に未来の時制では用いられないと考えた方がよいでしょう。

Posted by ゴ at 2013年01月26日 23:15
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