2010年03月11日
●新帯研 第105回
英語や中国語なら自動翻訳機が近い将来実用化することは間違いない。ロシア語に関しては技術的に可能でも、需要が少ないので、実用化する資金を誰も出そうとはしないし、多国語会話で若干使われる程度だろう。こういう自動翻訳機ができても外国語を勉強しようという人は減らないと思う。武道だって、幕末の一部の人を除けば、江戸時代ですら、武士のたしなみ程度でしかなく、現在は、武器としてなら銃器があるので、理詰めに考えれば不要なはずだ。ところが肉体を鍛錬することのほかに、精神性、特に哲学的なことをふまえて学ぶ人が多い。武道にも、柔道、空手、剣道、合気道などメジャーなものから、杖道、古武道などマイナーなものまでいろいろである。ロシア語もマイナーではあるが、ロシア文学の人気から見て精神的、哲学的観点から勉強しようとする人はなくならないと思う。語学をやればぼけない、特にロシア語はぼけに効くということが証明されれば、末長い人気が確実なものになるのだが。
この頃江戸時代から幕末、明治に来日した外国人(ロシア人、イギリス人、アメリカ人、スイス人、イタリア人など)の著作(日本滞在記とか日本紀行の類)を読んでいる。日本の心とか日本らしさというものを知るためには、外国の影響の少なかった時代の日本を知るのがいいと考えた次第。同時代の日本人の日本に関する著述よりも、外国人の著作の方が現代のわれわれにとってわかりやすく説明されていると思う。馬も草鞋を履いていたとか、日本の猫は尾が短いとか、150年前の浅草にはコウノトリがいたなどどうでもいいことだが、それなりに面白い。そこで思うのだが、こういう記録(小説ではなく)をすべてコンピューターに入れ、CDグラフィックで再現できるようにすれば、いながらにして過去にタイムスリップできるようになるはずだ。今はまだ難しいかもしれないが、スーパーコンピューターの性能を考えれば、近い将来夢ではなかろう。日本のみならず、外国の文献もいれれば、世界史でタイムトラベルができるようになる。
今回の課題は、
Брежнев зачитывает приветствие делегатам съезда.
- Позвольте от имени Политбюро ЦК КПСС и от себя лично приветствовать делегатов, прибывших на...(пауза) Не может быть! (Начинает читать сначала.) - Позвольте от имени Политбюро ЦК КПСС и от себя лично приветствовать делегатов, прибывших на...(длительная пауза) Не может быть!!!
(Референт шепчет сзади.)
- Римскими, римскими читай!
(Брежнев заканчивает с облегчением.)
...на ⅩⅦсъезд ВЛКСМ!
設問)訳せ。
よろしくお願い致します。
ブレジネフが大会代議員達に歓迎の辞を述べている。
―ソ連共産党中央委員会政治局と私個人の名において、参加した代議員達を歓迎する。はるばるここ…(沈黙)、まさか!(初めから読み上げ始める)、ソ連共産党中央委員会政治局と私個人の名において、参加した代議員達を歓迎する。はるばるここ…(長い沈黙)、こんなものは!!!(秘書が後ろから耳打ちする)
―「ローマ数字、そのまま読んで!」
(ブレジネフはほっとした様子で文章を終える)―…第17回全ソレーニン共産主義者同盟大会にようこそ!
=少しぼけ始めたブレジネフが、ローマ数字のⅩⅦが何だか分からなくてパニックに、という様子を描写した小話でしょうか?
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目のつけどころは悪くないとは思いますが、このローマ数字がロシア語の単語の何かに似ているということに気がつけば、オチはおのずと分かります。私の訳は、
ブレジネフが大会代議員に歓迎の辞を述べています。
「ソ連共産党中央委員会幹部会を代表しまして、また私個人としても…[沈黙]。そんなことって。(また最初から始める)
「ソ連共産党中央委員会幹部会を代表しまして、また私個人としても…[長い沈黙]。そんなことって。
(スピーチライターが後ろからささやくには)
「ローマ数字で、ローマ数字で読んで!」
(ブレジネフはほっとして読み終わります)
「全ソコムソモール第17回大会に参集された代議員の皆さんを歓迎申し上げます」
解説)17はⅩⅦで、на хуй(力点はна)と勘違いしたもの。на хуй = прочь, кчёрту。若い人にはわからないだろうが、今から40年前はヘルメスなどの露文タイプライターで露文をタイプしていた。コピー機などない時代で、書類によっては5部コピーを取るためにカーボン紙を5枚挟み、思いっきりピアノを弾くようにキーを打つのである。ピリオドなどは穴が開くくらいだ。当然ラテン文字やローマ数字への変換などは夢のまた夢なので、ローマ数字のⅩは大文字のХ、ⅤはУ、ⅢはШで代用した。ただⅡをЙで代用した記憶はない。こういうことを知っているおじさん、あるいは年寄りだとオチもすぐ分かる。
なるほど!「何か別の意味が?」とⅩⅦに目を凝らすところまでは行きましたが、全く分かりませんでした。そういうことでしたか、、。