2009年12月11日
●新帯研 第85回
日本語の名詞がロシア語と完全に一致するものではないということは、少しロシア語をやればわかることではあるが、基本的な語彙となると思いこみというのが語の完全な理解を邪魔する場合もある。例えば水はロシア語ではводаというが、「水中にある」という意味でпод водойという表現を見つけたとしよう。英米人ならunder waterという表現もあるので何とも思わないかもしれないが、日本語だと直訳すれば「水の下に」となり、どうしてв водеではいけないのだろうと疑問が起こるはずである。しかし、ここで辞書を引けばいいものを、こういう慣用表現であろうと考えてそれ以上追及するのを止める人がほとんどであろう。この場合вода = поверхность рек, озер, морей и т. п. 、つまり「水面」という意味なのである。それゆえ、держаться на воде, поплыть по воде, падать на воду, скрыться под в одой, уходить под воду, спусть судно на воду(力点はна)というのである。しかし、水面ではなく水の塊を意識するときはвを使う。погружаться в воду, броситься в воду(身投げをする), поставить цветы в водуなどがある。この他にも「水位」という意味もある。пока не спадёт вода日本語でもこれを訳す時に「水が引くまでは」となるから似ている。露和辞典も使いようだし、露露辞典があれば別の用例も出ていてより理解しやすいので、できるだけ大きい露露辞典も手元に置くことを勧める。今回の課題は、
- Когда загорелся дом, я влетел в соседнюю комнату и вынес на руках тёщу!
- Да, Ваня, в таких обстоятельствах легко потерять голову.
設問1)和訳せよ。オチを説明せよ。
-家が燃え出したとき、俺は隣の部屋に駆け込んで、義母を抱きかかえて運んだんだ!
-まあな、ワーニャ、そういう状況じゃ訳がわからなくなるのも無理ないよ。
*せっかくのチャンス(?!)を逃したことへの慰め・・・・・
*佐藤先生の著作で、ロシアでは婿と嫁の母親の仲が悪いことが多い、と知りました。知らなかったら、妻を差し置いて助けに走るので「あやしい関係?」と思うところ。興味深いです。またしても浅読みかも・・・?
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オチの理解もその通りです。ただせっかくのチャンスを逃したというような考え方もありうるわけで、それにはまったく気がつかず、なるほどなと思いました。ただ作者がそれほど深読みしたオチを考えていたとは思われませんが。しかし2行目を変えることでそのようなニュアンスを出すことも可能かもしれません。例えば、
「動転するのも無理はないが、次のときはしっかりがんばれよ」とか。私の訳は、
「家が燃えだしたときに、俺は隣の部屋に飛び込んで、義母を抱き上げて出てきたんだ」
「そうだよな、ワーニャ。そんなときって動転するのも無理はない」