2009年11月16日
●新帯研 第81回
現代では競馬が有名だが、この他にも犬の競争、闘鶏、闘ガチョウが1860年代末ごろまでロシアでは行われた。それほど人気があったわけではないがクレムリンの壁のすぐ近くスターラヤ広場で子豚の競争が行われていた。これはそこで家畜の取引が行われていたためである。歴史的には16世紀イワン雷帝はクレムリンのソボールヌィ広場で子豚の競争を行い、そのあと子豚を丸焼きにし、勝者(無論持ち主)の食卓に供したという記述があるという。1898年トル-ブナヤ広場(現在のサドーヴァヤ環状線の近くにあり、当時ペット市場があった)をニコライ2世の長女オーリガ(4歳)が供をつれて馬車で通りかかった。競豚поросячьи бегаが行われていると聞き、たまらず馬車を止めさせ、気に入った1頭の子豚に賭けた。しかしこの子豚は途中(豚だけに)遁走。皇女は200ルーブルの損害を被った。それ以来この広場での競豚は行われなくなったという。無論競豚が廃止されたわけではなく、家畜の市場があった別の場所で行われた。賭け事というのは何もなくなっても好きな人はするわけで、1812年のモスクワ大火の時にもゴキブリ走тараканьи бегаが行われ、長髭のイェゴールдлинноусый Егорというゴキブリのチャンピオンの名が今でも残っているし、18世紀や19世紀のロシアの牢屋は不潔で、虫が多く、ノミやゴキブリの競争が行われたぐらいだという。
1985年ごろモスクワの競馬場に行ったことがある。一緒に行った人がいくらか儲け、競馬場のレストランでごちそうになった。出てきたスープにスズメバチの死骸が入っていたが、スズメバチはハエではないのでぽいと捨てて、もったいないのでスープは食べてしまった。スズメバチосаは夏から秋に多く出てくる。メロンやハチミツなどに多くたかっている風物詩である。ちなみにбегаはチャリオット(映画のベンハーに出てくるような)、つまり繋駕式で、モスクワでは20年前は日本で言う競馬скачкиと交互に行われていたが、今は基本的にбегаのみのようである。次の小話は90年代初めにモスクワの地下鉄で買った小話集にあったもの。大して面白くないが、大学で教えている人には分かるかもしれない。
К защите диссертации:
20 минут позора и 30 лет обеспеченной жизни.
学位論文の審査に対して、
20分の恥辱と30年間の保証された暮らし。
今回の小話は、
- Почему в хлеб стали добавлять горох?
- Чтобы войти в коммунизм с треском.
設問1)和訳し、オチを説明せよ。
設問2)次の二つの表現は同義か?
а) с 8 до 12 часов
б) от 8 до 12 часов
1)「どうして、パンにエンドウマメを足すことになったんだい?」
「共産主義が空騒ぎですむようにさ」
*フルシチョフが農政で失敗し、小麦不足になったことを皮肉ったもの。豆がはじける音と空騒ぎをかけているのかと思います。エンドウマメなのも、フルシチョフが反遺伝学だったからでしょうか。
2)ほぼ同義。区切られた時間の始点は普通はсを使い、始点を強調するときはотを使う。
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オチは少し品が落ちるものです。私の訳は、
「どうしてパンに豆を加えるようになったのか?」
「共産主義を音高らかに迎えるため」
解説)ロシアでも豆を食べるとおならが出やすいと言われています。設問2については、普通は с もотも数字の起点を示すという意味では同義(отがより起点を意識していると説く学者もいる)だが、この場合(часがあれば)に限ってはа) с 8 до 12 часов (дня) б) от 8 до 12 часов (в день)という意味になる。つまり「時刻(8時から12時まで)」と「時間の長さ(8時間から12時間)」の違いを示しています。
しょうがないオチですね。でもなんだか笑えます。うちにも似たようなギャグをとばすおじさんが一人いるので。
設問2のような問題はじめ、辞書だけでわからない問題は、やはりロシア語の文法書にあたるしかないのでしょうね。おすすめいただいた教科書はまだ探しだせませんが、незнайкаの本は注文しました。ありがとうございます。