2009年07月17日
●新帯研 第62回
ロシア人と一緒にいると自然にロシア語会話ができると信じている人は多い。特に会社の総務部などで社員の外国語研修を担当する人に多いのは困ったものだ。ロシア人が教えるというだけで、短期研修ならそのほうがいいだろうと短絡的に考えてしまう。自分がどうやって日本語をマスターしたか考えてみればよい。日本人の日本語同様ロシア人はロシア語を赤ちゃんのときからロシア語の環境で育って自然にマスターしたのである。母国語を覚えるときに、幼児期の脳が特殊な働きをするということはよく知られた事実である。会社でロシア語を学習しようという人はすでに成人であり、日本語という母国語が出来上がっている人たちである。しかも赤ちゃんと違うのは、成人というのは働かねばならず(あるいは他の学業をせざるをえず)、ロシア語漬けになるような環境は許されない。そういう人たちが外国語であるロシア語を学習するには、成人のときからロシア語を勉強し、会話も体系的な文法もマスターした経験者から習うのがよい。ちゃんとした文法書と、自習できるレベルまでの学習指導こそが必要なのである。文法事項など一回で覚えるのが難しければ、漆塗りの要領で何度でも学習するという覚悟が必要である。今回の課題は、
Ночь в Москве. Тишина. И только слышно, как растут цены на недвижимость.
設問1)和訳せよ。
設問2)次の語句のうち間違いがあれば述べよ。
a) пробираться сквозь кусты
b) пробираться через кусты
c) покатиться со смеху
d) покатиться от хохота
設問1
深夜のモスクワ。静まりかえっています。
聞こえるのは、上がっていく不動産価格だけ。
設問2
意味だけでは(a)と(b)で、「茂みをかき分けて行く」ですが、пробиратьсяの後にはсквозьかкしか付かないので、間違いだとすれば「b」だと思います。
「c」と「d」では「笑い転げる」の意味ですが、от хохотаとつながる動詞はлежатьですから、間違いは「d」だと思います。
設問1はそのまんま訳しただけで、どこにオチがあるのか解りませんでした。近年のモスクワの地価・物価高を言ってるのかなあっていうぐらいにしか想像がつきません。
設問2の「b」は辞書の用例で載ってなかったというだけで、черезにも移動の動詞とセットにして、通り抜けるとか越えるといった意味で載っていたので、間違ってはいないような気もします。
ご教示の程お願いします。
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訳はその通りです。ただこのような名詞文の訳を「工夫する必要があります。たとえば同じように和訳でも名詞文で対応するとか、簡潔さを考えに入れるべきだと思います。私の訳は、「モスクワ。深夜。静寂。聞こえるのは不動産価格の上がる音のみ」。オチは大したものではありませんが、絵や漫画にして考えると、モスクワでは深夜だれも働いていないはずなのに、それでも家屋や土地の価格は上がってゆく、それも上がり方激しいためにその音が聞こえるほどだというような野暮な解説をしておきます。設問2の解答は、すべて正しい。ただa)とb)ではa)の方がより多くの努力が必要であるということです。