2008年12月18日

●新帯研 第41回

なぜスターリンがロシア人に好かれるか長年考えてきた。その理由として考えられるのは、例えば、長男ヤーコフがドイツ軍に捕虜になったときにドイツ側からパウリュス元帥との捕虜交換を提案されたが、スターリンは兵士と元帥を交換しないし、自分の息子だけ特別扱いにするわけにはいかないと拒否した。ヤーコフは1943年収容所から脱走を企て射殺された。またスターリンの次男ワシーリーも1943年カリーニングラード州で、ロケット弾を使った漁を企てたが、途中で暴発し、ロケット弾を持っていた技師が即死、一緒にいた飛行士が負傷、彼も足に負傷した。スターリンの命令により即飛行連隊隊長から解任された。スターリンが自分や家族のために蓄財したということはない。青史に名を残すということを考えていたのかもしれない。そういう考え方はロシアでは非常に珍しい。プーチンに私利私欲がないのかどうかは今の時点では不明だが、プーチンもこのような考え方をしているとロシア人庶民は考えているように思われる。あるいは単に肉親の情が薄いせいからかもしれない。2番目の妻が自殺した時も、モロトフは墓でスターリンの目に光るものを見たと述べているくらいである。スターリンの父は飲んだくれで、母については手紙を書いたりしたが、父については何もない。イングーシュ人はスターリンにより第二次世界大戦中中央アジアに強制移住させられたたが、彼らの間では、スターリンはグルジア人ではない。グルジア人は陽気だし、このようなひどいことをする民族ではないという風評がたった。スターリンの母はオセット人で、粗野で傲慢なのはそのせいであるという。弾圧された詩人マンデリシュタームの詩にも「幅広の胸を持つオセット人」という表現がある。今回の課題は、
В приёмной посетитель ведёт разговор с секретаршей.
«Простите, сколько вы получаете? – спрашивает он.
«Сто двадцать».
«Переходите работать ко мне, я судовольствием буду платить вам сто пятьдесят!»
«Спасибо, - отвечает секретарша, - но с удовольствием я получаю здесь двести».
設問1)オチが分かるように和訳せよ。
設問2)Профессор попросил ассистент прочитать свой реферат.を意味が曖昧にならないよう訳せ。

Posted by SATOH at 2008年12月18日 12:37
コメント

スターリンにそういう側面があったとは面白いです。プーチンのストイックな雰囲気は、私腹を肥やす政治家というイメージとはかけ離れたものがありますね。「родина」に対する思いがぶれていないように見えるところも一般受けするところなのでしょうか。

では回答です。

(1)の<訳>:
応接室で来客が秘書と話をしている。
「ちょっと立ち入ったことをききますが、いくらもらっているのですか」とその男性が聞いた。
「120です」
「うちへ来ませんか。貴女になら喜んで150は払いますよ」
「ありがとうございます」と秘書は答えた。「でも、その喜びの方に関してはこちらで200いただいていますから」

с удовольствиемに「喜んで(~する)」と「快楽(いわゆる”H”)に関して」の2つの意味がかかっています。前置詞「c+造格」には随伴やら関連やらいろいろと意味がありますが、英語のwithの用法と似ています。 給与は一応ドル建てということで今回のアネクドートでは理解していますが、ルーブルをベースにしたものだとすれば、1980年代当たりの話でしょうか。

(2) の<訳>: 教授は助手に「私の要約に目を通しておいてくれ」と言った。

свойがポイントになっていますが、まずはその文章の主語を指すと素直に捉えてみました。この場合は、助手に一応内容を確かめてくれというような意味になりそうですね。

ただ、Профессор попросил ассистента прочитать свой рефератの「ассистента」と「прочитать свой реферат」には『隠れた主語-述語の関係』がありますので、ассистентを意味上の主語ととれば、それを受ける動詞句内にある「свой」は助手を指すことになります。この場合の訳は「教授は助手に助手が書いた要約を読むよう求めた」ということで、朗読させたという意味にも取れそうです。「朗読させた」とすれば、вслухをつけるような気もしますが・・・。 曖昧さが残る文ですね。回答は文の主語と一致するという方向でいいのではと思いますが、はっきりしません。ご解説をよろしくお願いします。
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オチの理解はその通りですが、オチの訳がひと工夫必要ではないかと思います。私の訳は、
「失礼ですが、いくらもらっているのですか?」と彼は尋ねました。
「120です」
「私のところに来てください。喜んで150お払いしますよ」
「ありがとうございます」と秘書は答えて、「でも、ここじゃ喜んでもらって200もらってますから」
設問2ですがсвойについて意味はともかく、多くの人同様使用法についてよく理解していないようです。свойは動作主を示すのが原則。ゆえに、「教授は助手に助手のレポートを読み上げるように頼んだ」となる。もし「教授は助手に教授のレポートを読み上げるように頼んだ」であれば、Профессор попросил асситента прочитать его реферат.となるはずです。ただすべてのロシア人が正しくこの用法を理解しているかは別問題で、誤解を避けるためには、Профессор попросил, чтобы асситент прочитал свой (его) реферат.とした方がよい。

Posted by takahashi at 2008年12月30日 10:45

「喜んでもらって」はわかりやすいですね。
свойもこれで曖昧でなくなります。どうもありがとうございました。

ちなみに、себяも同じように動作主が原則ということでいいわけですか?

Я застал помощника у себя в кабинете.
という表現の場合、себяはпомощникを受けるということで了解すればいいのですね?
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基本はその通りですが、必ずしも明快でない場合があるとして、Розентальは、この文の у себяはу меняを意味する場合もあるし、у помощникаを意味する場合もあるとしています。そのためРозентальはこのような曖昧な文ではなく、Я застал помощника в своём кабинете.か Я застал помощника в его кабинете.と書くべきだとしています。

Posted by takahashi at 2008年12月30日 13:58

Розентальに異を唱えることになりますが、Я застал помощника в своём кабинете.という文の場合はまだ曖昧さがあるという感じがします。たとえば、Когда помощник в своём кабинетеと従属節にした場合は「своём」は明らかに「помощник」を受けることになります。「助手が自分の研究室にいる」という主述の関係が成立しています。Розентальの解釈はЯ застал {помощника} в своём кабинете.とзасталの対象を{помощника}のみに限っていますが、従属節の主述関係をそのままзасталの認識対象としてЯ застал {помощника в своём кабинете}. 「{助手が助手自身の研究室にいる}のを私は見出した」という解釈も成立するような気がします。у себя の曖昧さを避ける言い方として、Я застал помощника в моём кабинете.とするのであれば、Я застал помощника в его кабинете.との違いが浮き彫りになりますが、своёмだとどうしても曖昧だという感がぬぐいきれません。年の瀬にしつこく質問して申し訳ありませんが、моёмといってはいけないのでしょうか。
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моёмとして悪いことはありませんし、意味が明確になりますが、я の次にмоёмでは文体的にくどいと感じます。Когда помощник в своём кабинетеと従属節にした場合は、動作主がなく状態を示す文の場合、「своём」は明らかに「помощник」という主語を受けることになるのは当然です。そのほかに意味が取りようがないからです。ただ主語が状態と動作を両方示す文にあるときはсвойやсебяは動作主を示すという理解でよいと思います。

Posted by takahashi at 2008年12月31日 18:51

皆様、あけましておめでとうございます。
毎年年末年始はなかなかここに来られませんが、その間に学生のユウさんが入られたようで嬉しいです。どうぞよろしくお願いします。
設問2はいただいた説明でよくわかりましたので、設問1の和訳のみの参加です。

応接室での来客と秘書との会話。
「ところでいくらもらってますか?」と客が聞いた。
「120です」
「うちで働きませんか。あなたに150払うのは私の楽しみですよ」
「ありがとうございます。でも楽しみを含めるとここで200いただいてるんですよ」と秘書は答えた。
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「150払うのは私の楽しみですよ」というのは、セックスサービス付でというような解釈も日本語ではできるわけで、そういう解釈も面白いかと思いますが、そうでないならば訳にもう少し工夫が必要のような気がします。

Posted by メイ at 2009年01月05日 00:22

スターリンがグルジア人では
ないなら国立スターリン記念館がグルジアにあるのでしょうか?
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少なくとも父親はグルジア人です。母親については、グルジア人ではないとの説があると紹介したまでです。スターリンを英雄と考えるロシア人やグルジア人も多く、国立スターリン記念館がグルジアにあるから云々とありますが、ソ連時代はスターリンの出生について語るのはタブーでした。元ソ連共産党中央委員会文書局副局長のゼニコービチなども、スターリンの出生について最近10年くらいからいろいろ書いています。私の紹介した説は、ゼニコービチ、オセット人の捜査検事(連続強姦犯チカチーロ自白に導いた)、マンデリシュタムからのをまとめたものです。

Posted by Anonymous at 2009年01月27日 23:04
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