2007年01月03日

●帯研(第34回)

ロシア語の参考書に書かれたものは一応尊重するが、鵜呑みにはしない。これまで実戦で使ってみて自分で納得したものを帯研で披露しているわけである。まず言葉ありきで、文法は後にそれを説明するためのものであり、逆ではない。ただ外国人がロシア語を習う場合には、文法が唯一の頼りである。しかし文法で全ての語法が明確になるわけではない。説明できないところは例外として覚えざるを得ないし、部分生格一つをとっても単語単語によっていくつかの面からの説明を語学の専門家(日本人やロシア人を問わず)が書いてあるのを読むが、言語の現象をどの面から見るか、全体と部分で見るか、具体性と一般性で見るか、演繹と帰納を繰り返しているように思える。ある場合は語法の説明に納得し、ある場合はこの単語独自の用法ということで納得する。つまるところ我々は語法の研究者ではなく、ロシア語を使ってロシアやロシア人とコミュニケートするためにロシア語を使うのだということを念頭におく必要がある。
Сидит мужик, рыбу ловит. Рядом Бобик зубами блох выкусывает, лапой в ухе скребёт. Вышла из-за кустов лошадь, подошла к мужику и спрашивает:
- Ну что, клюёт рыбка-то?
- Да нет, не клюёт что-то.
- Ну ладно, Бог в помощь, - говорит лошадь и снова в кусты ушла.
Сидит мужик дальше, вдруг как подскочит:
- Ёлки-палки! Лошадь говорящая!!!
- И не говори-ка, я сам удивился, - отвечает Бобик.
設問1)和訳せよ。オチを解説せよ。
設問2)Ёлки-палкиはевфемизмである。ずばり言うとすれば何か?

Posted by SATOH at 2007年01月03日 15:23
コメント

今回の設問2は女性のメイさんにはひょっとしたら答えづらい解答ではと(余計な?)気配りし、急ぎ解答します。
設問1)
農民がひとり腰を下ろして魚釣りをしていました。そのかたわらで犬が蚤退治をして、耳を掻いています。茂みの中から馬が出てきて、農民に近づいて次のように聞きました。
-どうですかね、魚がかかりますか?
-だめだね、ちっともかからない。
-大丈夫ですよ。ウマくいきますよ-と馬は言いまた茂みの中へ去っていきました。
農民はしばらく座っていました。と、突然、パッと立ち上がりました。
-何てこった!あの馬、口をききやがった!!!
-全くですワ(ン)。私も驚きましたワ(ン)-と犬が答えた。

オチは、馬が言葉を話すことに気づいてびっくりした農民のかたわらにいた犬が自分もびっくりしたと人間の言葉で言ったこと、となるのでしょうか。
Лошадь говорящаяは名詞句だと思いましたが、predicativeに訳しました。

設問2)
松ぼっくり状のモノと棒が結びついていれば、ナニのことですね。「男性自身」、「хуй」ということですね。あまり自信はないです(double meaning)。
協邦通商時代にхуй с нимという言い方を教えられたことを思い出しました。これは「勝手にしろ」という意味だったと記憶しています。
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訳は見事です。ただ敢えて難を言えば、мужикを農民と訳していますが、これは「男、野郎」ということで、мужчинаの俗語です。百姓とは限りません。「農民」という訳のも、言葉も小話のニュアンスからは遠いと思います。「ボービク」と訳すかと思ったら、ちゃんと「犬」と和訳でも小話になるように訳しているのには感心しますが、ここまでいったら、犬ではなく(原文もсобакаではありませんから)、ポチとか訳したほうがよいと思います。「茂みの中から」だと из кустовとなるのでは?会話の部分の訳は私のよりかなりよいと思います。設問2は Ёб твою мать.(Fuck your mother)の婉曲語法です。ロシア人の会話では他に、Ёлки зелёныеなども使います。私の訳は、
男が座って魚釣りをしていました。傍らにはポチが脚で耳を掻いて、歯で蚤をつぶして食べていました。茂みの向こうから馬が出て、男に近づいてこう尋ねました。
「どう、小魚でもかかるかね?」
「だめだね、なんでだか食いつかないんだ」
「まあ、いいや、神のお恵みを」と言って馬はまた茂みへと去ってゆきました。
 男がその後も座っていると、突然飛び上がって、
「コリャ何としたことだ。しゃべる馬だなんて」
「ほんとにね。俺様もびっくりしちゃったよ」とポチは答えました。
解説)翻訳については、ロシア語に書いてあるものをとにかくそのまま訳す(имя и отчествоもそのまま)ということも含めて、30年前の「原卓也と北御門二郎の論争」など興味深い。ただこの小話でボービクと訳してもロシア人には瞬時に犬の名だと分かるが、日本人にはそうではない。そうなるとこの大して面白くない小話が、一層何がなんだか分からなくなる恐れが出てくる。この辺も翻訳をしようとする人は、原文通り訳すのかについて自分なりの結論を出しておく必要があるのではないか。ロシア語でも一般的なペットの名(日本語ならタマ、ポチとか)を覚えておく必要がある。
Белка 犬 シロ
Бобик 雑種犬、番犬 ポチ
Жучка 小型の雑種犬
Кабыздох, Кабысдох 猛犬、嫌な犬
Мурзик オスネコ
Полкан 鎖につながれた番犬
Стрелка 犬
Тузик 犬
Филя, Филька 犬
Шарик 小型の雑種犬、番犬、野良犬

Posted by takahashi at 2007年01月05日 11:30

мужикは「男、野郎」の意味でмужчинаの俗語とは気づきませんでした。どこか不自然な感じがしたのですが、そのままスルーしてしまいました。こういうところがプロとアマの差になるのでしょうね。気をつけます。
設問2はЁб твою матьとは・・・
хуй は時に本人の意図していない振る舞いをするためにいまいましさや当惑の表現になると思いましたがハズしました。残念(笑)。

Posted by takahashi at 2007年01月05日 14:12

あはは。高橋さん、ありがとうございました。助かりました。しかし… このままいくと「18歳未満お断り/帯研」になりそうな気配ですね(笑)。

犬や猫の名前ですが、この中でШарикぐらいしか知りませんでした。毛の色から「シロ」とつけるのは万国共通でおもしろいですね。ちなみに、日本では英語のカタカナ名(ジョンとかテリーとか…)が多いですが、ロシアではどんな傾向があるのでしょうか。

Posted by メイ at 2007年01月06日 21:06
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