2006年12月03日

●帯研(第19回)

昨日の午前中いつものように、ママチャリで荒川の土手を2時間半サイクリングしていたら、右肩に鈍い衝撃。見ると卵の黄身みたい。鳥の糞だ。見上げるとカモメが一羽。思い起こせば小学1年生のときも、朝礼のときハトの糞が頭に降ってきたし、モスクワでもカラスが背中に(これは頭のいいカラスのことだから狙ってのことだと思う)落し物を。ロシア語で鳥の糞をпомёт(метать「投げる」からであろう)というのも頷ける。運がついたのか、はたまた運の尽きか?故郷の函館では小学生の頃まで馬車が走っていた。道には落し物もあって、誤って踏んづけてしまうと、大人は背が高くなるから気にしないと慰めてくれた。ハトの糞のときも母親は頭がよくなるよと言ってくれた。鳥の糞一つでいろいろなことを思い出す。今回の出題は、オチは分かりにくいかもしれない。
Приходит девочка из школы и спрашивает отца:
- Папа, а что такое аборт?
Отец смутился, но тут же подумал, что рано или поздно дочь узнает, и начал очень туманно и невпопад ей объяснять. А потом спохватился и с тревогой ее спрашивает:
- Послушай, а зачем тебе это нужно?
- Да песню мы пели в школе, а там такие слова:
«... и бьются а борт корабля...»
設問1)和訳せよ。オチが和訳しにくければ、説明でもよい。
設問2)上から1行目、不完了体現在形だが、体を変えることは可能か?

Posted by SATOH at 2006年12月03日 13:49
コメント

フン、フン、そうですか。その結果今があるのですね!私も若い頃からもっと落し物をもらっていたらよかったのに。実は我が家も元荒川の住人を20年近くやっておりました。奇遇です。

設問1)娘が学校から帰ってきて父親に尋ねました。
「パパ、堕胎(ダ・タ・イ)ってなあに?」
父親はドキッとしましたが、遅かれ早かれ娘にもわかることだと考え、極力ぼやかしたりはぐらかしたりしながら説明を始めました。そして、はっとして、不安になって聞きました。
「だけど、どうしておまえがそんなことを知らなきゃいけないんだ?」
「あのね、学校で歌を歌ったんだけど、このことばが出てきたの」
《船だ!大漁!ダターイ、ダターイ、ダターイ!》
(船だ!大漁だ!鯛だ!鯛だ!鯛!)

原文とぴったり合わせようと頑張ってみたのですがやっぱり無理でした。最初は、「船をたたいて(ダタイて)波が走る~」としようかと考えましたが、わかりづらいので止めて船だけ使いました。бьются а борт のаはоのタイプミスでしょうか?

設問2)完了体過去Пришла, спросилаに代えられると思います。前に「歴史的現在」(話をいきいきとさせるため、過去形で書くべきところを今行われているかのように不完了体現在形を使う)と教えていただいたと思います。
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今回は解答に時間がかかるかと思いましたが、あにはからんや、弟知らんや。бьются о(а) бортはタイプミスではありません。原作者(誰かは知りませんが)がабортと о бортが発音上は同じなので掛けことばだよということを示しているだけです。オチに対する熱意は評価します。今回は訳というより、このように的確に歌詞をインターネットで調べることができるかという検索力のチェックです。私もこの歌を聴いたことはありません。設問2もその通りです。そういう意味では合格です。オチ以外は和訳もきれいです。私なら、「タイだたいだいダタイだ」とくっつけますが。そうすれば私のぱっとしないオチよりベターです。それとやはり一般読者も読んでもらうんだということを念頭に置けば、歌詞の由来なども書いておいたほうがよいと思います。せっかく調べたのですから、分かりやすく解説されたほうがよかったと思います。一応私の訳も、
女の子が学校から帰ってきて父に尋ねます。
「パパ、『だたい』って何?」
 父はまごつきますが、遅かれ早かれ娘も知ることになるのだしと思い、漠然と遠まわしに説明しだしました。後で、はっと気がつき、心配そうに娘に尋ねます。
「あのな、なんでそんなこと知らなきゃならないんだ?」
「学校でね歌を歌ってたの。その歌にね、こんな歌詞があったの。『~ただい(多大)に舷に砕け散る~』
解説)Прощайте, скалистые горы!(さらば、険しき峯々よ)という1943年の海軍の歌(сл. Н. Бунина, муз. Е. Жарковского)の次の一節から。о борт とабортをかけてある。

А волны и стонут и плачут. 大波小波むせび泣き、
И бьются о борт корабля.   舷に当たって砕け散る

直訳すると「学校でね歌を歌ってたの。その歌にね、こんな歌詞があったの。『~舷に砕け散る~』

Posted by メイ at 2006年12月05日 14:21

へぇ~!そうだったんですか。実は私、今回はИ бьются о борт корабляを検索しませんでした。ただ、「船腹をたたく」というのだから「波」しかないと… オチもなにも、すべて想像力のたまものでした。またまた過大評価をありがとうございました。
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想像でこういう正解を得るというのは、後世畏るべし!唖然。

Posted by メイ at 2006年12月05日 15:57

私もscatologicalな話には事欠きません。額に白いのがピチャっと来たり、ガードレールに触ったら指先にとっぷり白いフンがついたり。犬の糞を踏んづけたのを知らずに車に乗ったら凄い匂い。でもしばらく自分だとは思わず、田舎の香水のせいにしたり。いろいろあります。
設問1)
<和訳>
学校から娘が帰ってきて父親に尋ねた。
「パパ、中絶ってなに?」
父親は当惑したが、同時に遅かれ早かれ娘が知ることだとも考えて、非常に分かりづらいまた見当違いの説明を始めた。それからはっとして不安な面持ちで娘に尋ねた。
「ちょっといいかい、何のためにそんなことを知る必要があるんだい?」
「だって、学校で歌を歌ったの。そしたらこんな歌詞があったから。『・・・打ち砕かれる波の中(、)
絶えることなく船は揺れる』って」

今回は(も)和訳は日光のテマエです。

娘のおませな質問「абортって何?」に父親は狼狽しますが、実際には娘の勘違いで、а бортであったというのがオチですが、бьются а борт корабляがあまりイメージできませんでした。インターネットで検索をかけたら次の表現がヒットしましたが、これでしょうか?
「А волны и стонут, и плачут, и бьются а борт корабля!」
 「波がうなり、泣き、打ち砕かれる。でも船の舷は(うなりもせず泣きもせず打ち砕かれることなく波間を漂う、あたりが続きそうですが)」こんな内容でいいのでしょうか?歌おうなんて気がさらさらしなくなる私の日本語訳です。このаは対照・対比を示していると考えましたが、ここで思考が停止したまま、苦し紛れの和訳となりました。

設問2)に関しては完了体過去形にしてもいい、という気がします。Пришла девочка из школы и спросила отца.とすれば1回の行為の完結となるのでこういう表現を用いてもいいのではと思います。ただ、ここはストーリの始まりなので現在形を使うことで臨場感を出す効果があると思います。6行目のспрашиваетもそういう文体上の工夫と受け取りました。日本語の文章でもこういう過去形と現在形の混在はありますし、英語でも中間話法というのが存在します。
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和訳のところでтуманно「分かりづらい」としているのは、誤訳とまで言わないまでもおかしいと思います。文字通りは「霧中」ということで「はっきりとではなく、曖昧に」ということです。а бортについてはメイさんに説明しました。設問2については基本的に誤解しているようなので一言します。この小話のように会話以外の地の文で現在形(歴史的現在)が使われていますが、これは通常の会話や文章では例外的だということです。歴史的現在ははっきり過去だと分かっているところで、現在形を使うことによりvividな感じを出すものです。こういうように学校から帰ってきて尋ねたという順次的な場面では、完了体の使用が普通です。不完了体にも順次的用法がありますが、それは毎日とか反復の要素が含まれている文です。例えば毎日学校から帰ったら料理を作るなどの類です。あまり小話ばかりやるとその辺がおかしくなるので、会話の練習ということなら、地の文ではなく、会話の文に注目ください。それが自然なロシア語なのですから。それとインターネットで歌詞などを検索する場合は、歌の名だけでなく作詩者、作曲家、歌手、いつごろの歌か、できればその背景なども調べるようにすれば、小話のオチの理解も深まると思います。私は今度モスクワに行くようなことがあれば、このCDを探すつもりです。

Posted by takahashi at 2006年12月05日 17:33

ご指摘ありがとうございました。
また吟味の足りない和訳を送ってお手を煩わしてしまいました。注意します。
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私のコメントはあくまで参考ですし、斯界(ロシア語)の権威が言っているわけでもなんでもないのですから、たまにまぐれでいいことをいうときもあるけれど、大半は個人的な意見ですから、分かっているとは思いますが、あまり私の言うことに固執すると(賛成でも反対でも)、ロシア語はうまくなりません。気を抜いてがんばってください。書いたものでの評価ですので、実際の会話では文脈やイントネーションで分かる場合が多いわけで、文章だけで判断せよというのはある意味で答えるほうも大変だということは分かっています。

Posted by takahashi at 2006年12月06日 13:11

お世話になっています。いつもすいません。

ロシア語黒帯研究会の企画。すばらしいです!
とても勉強になる情報をありがとうございます。
きっと多くの人の役に立っていることと思います。ありがとうございます!

さて、海軍ソング「Прощайте, скалистые горы!」ですが、次のサイトなどで聞くことができます。
http://zovserdca.narod.ru/sk.html
(7.Прощайте скалистые горы.mp3をクリック)

戦勝記念日などのコンサートや戦争ドキュメンタリー番組などでときどき耳にします。
ロシア歌謡界の大御所(ロシアの北島三郎?)、コブゾン・ヨシフも歌っています。
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わざわざご投稿いただき感謝します。今後ともよろしくご支援のほどお願いします。

Posted by gonza at 2006年12月12日 03:20
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