2007年04月07日

●帯研(第73回)

アオリスト(第26回で取り上げた)などの和訳は難しくない。ただなぜ完了体を使うのかを理解していないと、その和訳を逆に露訳する場合に不完了体を使うという間違いを犯すことになる。特に通訳は聞き取り力と会話力の両方が求められるから、こんなの簡単に和訳できるなと思っても、それを逆に露訳できるかどうか常にチェックするようにしないと上達は望めない。読解力をつけるために露文を読むのは当然だが、会話力を向上させるためにも使えることに気がつかないか、面倒だと思ってロシア語で書かれた本(文学でもエッセイーでも何でもよいが)を読まない人が多いようだ。ロシア語を読んでそこから使える表現(あるいは文脈から考えて適訳だと思ったものを)をデータベースにまとめておくと和文露訳の通訳・翻訳に非常に役に立つ。それと将来ロシア語の通訳や翻訳のプロとなろうと考えている人は、ロシア語の勉強は当然だが、日本語にするときに、少しでも意味や漢字がおかしいと思ったら国語辞典(別に広辞苑でなくとも新明解でよい)を引く癖をつけたほうがよい。またロシア語の駄洒落を日本語の駄洒落にしようとするときも国語辞典が役立つ。ただ駄洒落用なら、類語辞典(大野晋・浜西正人、角川書店、昭和56年)が非常に便利だ。編纂者も駄洒落用に使っているのを聞いたら驚くだろうけど。
設問1)Сидел один человек.の主語один человек をпо одному человекуに代えれば、動詞はどうなるか?
設問2)下記の3つの文のうち正しいもののみ訳せ。
a) Яблоко – с кулак.
b) Яблоки – в кулак.
c) Яблоки – по кулаку.
設問3)Шли дождь и два студента.はロシア語として正しい文か?
設問4)次の文で正しいもののみ訳せ。
Он поставил книги на полку
Он поставил телефон в кабинете.

Posted by SATOH at 2007年04月07日 16:56
コメント

今回は課題が多く難しそうです…

設問1)
Сидели
по одному человекуにすると、一人ずつ座っている人が何人かいることになると思いましたので動詞は複数にしました。

設問2)
b) にぎりこぶしほどのりんご
この場合はりんごが複数なので、たとえば「この木になっているりんごはにぎりこぶしほどの大きさだ」などというときに使うのでしょうか。あるいは単数・複数に関係なく同じように使えるのでしょうか。a) もЯболокоのスペルミス以外は正しいと思います。с(в) кулакはどちらでもいいのではと思います。

設問3)
誤りです。この場合はидтиの二つの異なる意味(「雨がふる」と「歩いて行く」)を掛け合わせて使っているので。正確にはШёл дождь и шли два студента.(雨が降っていて、二人の学生が歩いて行っていた)ですか?でも実際にはわざわざこんなシチュエーションを設定することはないと思いますので、典型的な間違いの例かアネクドートでしょうか。

設問4)
Он поставил книги на полку 「彼は本を書棚に置いた」

Он посталвил телефон в кабинете. はпосталвилがスペルミスになっている以外は正しいと思います。訳は、「彼は執務室に電話を設置した」
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スペルミスの件は申し訳ありません。早速訂正します。それを除けばこの課題2~4の全ての文は正しいのです。メイさんのように設問4が正解というのはかなりのハイレベルです。私の回答は、設問1はСидело по одному человеку.(一人ずつすわっていた)。設問2は全て正しい。訳はすべて「リンゴは拳大(拳くらいの大きさ)」。設問3はсиллепс(兼用法)の例。日本語でも「昨日雨と女にふられた」に近いか。設問4のпоставить куда は「(立てて)置く」であり、поставить гдеは「設置する」という意味。

Posted by メイ at 2007年04月12日 00:29

今回は(も)難しく歯が立ちませんでした。

設問1はネットで «на оба может сесть только по одному человеку»という表現を見つけたので、 «Село по одном человеку»とでも言うのではと思いましたが、こういう非人称的な使い方もあるのですね。

設問2は前置詞の用法にとまどってкулакの意味が特定できませんでした。
ここの前置詞の用法はどういうものですか。「с+対格」で「比較の基準となる対象」を示し、「в+対格」で「寸法」を示し、「по+与格」で「等量分配」を示すということでいいのですか。

設問3はinformalな表現としてはあり、ということなのですか。

設問4に関しては前置詞の格の違いの謎が解けました。さすがメイさんですね。
поставитьは立てて本を置く場合はна полку ということですが、横に寝かして置いてある場合はна полкеとなるなんてことはありませんよね(愚問ですみません)
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設問2についてはсは口語的用法で、вが標準用法、поは普通の辞書でははっきりとは示されていませんが、「類似」という意味で使うものです。Всё растёт, бушует, огруцы по топорищу, помидоры по кулаку.などという表現がありますが、口語ではあまり聞きません。設問3はラテン語(あるいはフランス語)の文法からの借用表現ではないかと思います。設問4は横に置くならкласть(положить) на полкуとなると思います。кудаとгдеの使い分けについては、поместить сбережения в сберкассу とпоместить туристов в гостинице(「置く場所を決める」と「収容する」)というのもあります。

Posted by takahashi at 2007年04月14日 19:01

どれも、わかりそうでわからない、結局はわかっていなかった、という結果でした。設問1は人称が特定できないのでСиделоと理解していいのでしょうか。設問2のпо кулакуは文語でのみ使われるということでしたか。どれもあまり見たことがありませんでした。設問3は自信があったのですが…根拠がありませんでした。силлепс(兼用法)は落語のネタになりそうですね。
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原先生の「ロシア文法の要点」174ページに Несколько человек ямщиков было в горницеという用例があります。標準語法では中性で受けることが分かります。この他にДвести студентов нашего института принияло участие в кроссе.などとも言います。つまり複数であっても総体として一つに捉えるものは単数となります。ただПять студентов нашей группы приняли в кроссе.ではこのように数人であっても別々の学生という意識があれば複数になります。~ずつというのが主語でも上記の例の類推ではないかと考えます。ついでに原先生の本の同ページに「ロシア語には助数詞はない」かのような記述がありますが、それはおかしいと思います。две штуки рыбыなどはよく使います。先生が知らないはずはありませんから表現上の問題だとは思いますが。.

Posted by メイ at 2007年04月16日 18:51

原先生の「ロシア文法の要点」174ページの用例をみてきました。173ページにも同じようなのがあり、単数にすることがわかりました。ただ、さとうさんが回答で書いてくださっているように、「Пять студентов нашей группы приняли в кроссе.ではこのように数人であっても別々の学生という意識があれば複数」という例からすれば、「по одному человеку/一人ずつ」というのは別々の人という意識でとらえることはできないのでしょうか。まだしっかり理解できていないようです。
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こういうのを理論的にこうだと明確に割り切れないのが語学でしょう。つまり「一人ずつ」に焦点を当てるか、「一人ずつだが、一人ではなく、まとまった人数がいる」と取るかだと思います。個人的には、主語が普通ではないので(はっきり単数とか複数とか決め付けられないので)、中性にしてしまえということだろうと推測します。ただ活動体の場合はПять человек сидело.を口語ではПять человек сидели.といい、これもよく聞く表現です。他に面白い例としては、Сидит нас человек двадцать.(我々20人がすわっている)などがあります。

Posted by メイ at 2007年04月19日 23:13

ありがとうございました。
 Пять человек сиделоが口語でПять человек сиделиになるのはおもしろいですね。ということは、考えようによってはどちらにしても間違いではないととってもいいのですね。また、Сидит нас человек двадцатьの場合は約20人をひとかたまりととらえ、Сидит нас
двадцать человекとなった場合は、とりようによってСидитでもСидятでもいいということですか。
 こうして文法を詳しく教えていただいても、いざ会話となると本当に恥ずかしいほど正確な文法を使えません。数をこなすしかないのでしょうか。先行き心配です。
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標準語法では中性単数で、口語では複数だと思います。

Posted by メイ at 2007年04月21日 23:17
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