2007年02月06日

●帯研(第49回)

帯研参加者の高橋さんが、ついにロシア語初心者向けに露英和でアネクドートを自分のサイト「アネクドートの小窓 (http://anecdotenokomado.blog92.fc2.com/)」に掲載を始めた。同氏にはこの他に〔英語徒然日記~nikitaの窓~(http://d.hatena.ne.jp/nikita-diary/)〕というサイトもある。ロシア語(特に会話)が上達するためには、アネクドートが一番というのが私の持論であり、和文だけではなく、露和英で記載することにより、世界に発信することになったわけで慶賀に耐えない。ロシア語の原文があるので、誤訳があるかどうか多くの人にチェックされているわけだが、間違ったらすぐ訂正すればよいと思う。こういう風にロシアの大衆文化の紹介を世界(私はせいぜい日本だけだからうらやましい限りである)に発信するという試みは高く評価したい。世界とは言わず、日本国内で十分なので後に続かれる方が出ることを心から祈っている。
拙著「ビジネスロシア語」は日露貿易に関わるビジネスマンを対象としているので、日露ビジネスそのものは基本的に理解しているだろうという前提で書いている。ただ帯研には学生や主婦の方も、あるいはビジネスに無縁の方もいると思うので、実際の商談の流れについて書いておく。買手がある品物や製品が買いたいといって、それについての条件(技術条件や支払条件、数量)を記載したものが引合запросであり、それに対して売り手(メーカーや商社)が、その条件に類似の条件を提示したのがオファーofferまたは見積предложениеというものである。これで商談がまとまれば、ビジネスロシア語は必要ない。お互いにカタコトの英語が出来ればよい。しかしこのように、中古車や使い捨て注射器のように、だれもがどういうものかを知っていて、値段が安くて納期がOKなら成約(契約)するという商品は少ない。設備などでは、まず売り手が買手にプレゼンテーション(会社概要、製品紹介、特に特徴と長所の説明)презентацияを行う。相互に会社の業務内容、売り上げ、純利(税引き後)、業界シェアなどを説明する。プレゼンテーションには技術用語が頻出する。ビジネスロシア語というのは、専門用語ができないとお話にならないわけである。買手がメーカーを価格などの条件から2、3社に絞込み、テクネゴ(技術交渉 technical negotiations)を行い、技術的に問題ないか双方でチェックする。それでOKなら次にようやくコマネゴ(商談 commercial negotiations)となる。ここで納期、品質保証、支払い条件、価格が合意されることになるわけである。こういう商談の流れを大学のいわゆる「ビジネスロシア語」講座で教えているのだろうか?ビジネスロシア語には科学技術ロシア語などの専門用語の知識(魚のビジネスなら水産用語、木材なら林業用語)、専門用語を日本語、英語(ロシア人の提出用の日本のメーカーのカタログは英語で記載されていることが多いので)、ロシア語で理解することが不可欠だということがお分かりであろう。では初心者がビジネスロシア語の勉強をするにはどうしたらよいか?拙著を買って読むほかに(コピーや回し読みというのはとんでもない話である)、数字(年号、月日、時間、億などの金額)の和訳露訳が瞬間的に出来るようにする。具体的には電車や新聞の広告で特殊なものを除き基本的表現、数字表現を露訳する練習をするとよい。今回の課題は、
設問1)次の文で正しいもののみ訳せ。
1) Я люблю Достоевского, так же, как Толстого.
2) Я люблю писателя, как Толстой.
3) Я люблю Толстого как писателя.
4) В среде таких органических растворителей как сероуглерод
設問2)наを使って言い換え事ができると思うなら、示せ。
a) Он в плаще.
b) Она в темных очках.

Posted by SATOH at 2007年02月06日 18:00
コメント

「ビジネスロシア語」は音読しながら読んでいます。一読者としてはさらに詳細な商談のやりとりなども読めたらいいな、と思います。

回答します。
設問1)
すべて正しい文だと思いました。
1) 私はトルストイと同じくらいドストエフスキーも好きだ。
2) 私はトルストイのような作家が好きだ。
3) 私は作家としてのトルストイは好きだ。
4) (化学)媒体の中には二硫化炭素のような有機溶剤もある。

設問2)
a) Он на плаще. レインコートを踏んづけているとか、その上に横たわっていたり座っている場合にはOKなのではと思いますが。
(На нём плащ.という表現は可能ですか?)
b) Она на темных очках.とは言わないと思いますが、На ней тёмные очки.というのは可能ですか?
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設問1は4)を除き正解ですか、細かいことを言うと、любитьを好きだと訳すとнравитьсяとの違いが出ません。loveと
like ぐらいの違いはあると思います。それとкакのあとにどういう格が来るか確実に分かっていますか?設問2は間違いです。前置詞の違いによって主語が逆になることに注意。私の訳と解説は、
訳)設問1)
1) 私はトルストイと同様ドストエーフスキーが大好きだ。
2) 私はトルストイのような作家が大好きだ。(как + 主格)
3) 私は作家としてトルストイが大好きだ。(какのあとは前の単語の格に合わせる)
4) ニ硫化炭素のような有機溶剤環境で(как + 主格、取扱説明書にある「~など」にこの表現が使える)
設問2)
a) На нем плащ.
b) На ней темные очки.

Posted by takahashi at 2007年02月08日 11:36

トヨタだけではなく、日産もサンクトペテルブルクに組立工場を建設して2009年に稼動開始のようですし、このところロシアビジネスはうなぎのぼりですね。今までに経験したことがないような日ソ関係の時代が来ているような気がします。いつまで待っても解決できない領土問題より経済優先のところが嬉しいです。そのうち帯研にもビジネスロシア語通訳のзапросがくることを願って、まずは今日の課題から。

設問1) 正しい文
2) Я люблю писателя, как Толстой. (私はトルストイのような作家が好きだ)

[А, как Вが《ВのようなА》の意味の時はАの格のいかんに関係なく、Вは常に主格]で正しい。


3) Я люблю Толстого как писателя. (私は作家としてのトルストイが好きだ)

[какが《としての》《として》の意味の時はその次に来る名詞の格は前の名詞と一致する。какの前のзапятаяは省くこともある]ため正しい。


4) В среде таких органических растворителей как сероуглерод
(二硫化炭素のような有機溶剤の媒体においては)

[А, как Вが《ВのようなА》の意味の時はАの格のいかんに関係なく、Вは常に主格で、この場合Аの前に指示代名詞такойをつけることが多い。какの前のзапятаяは省くこともある]ため正しい。


間違い?)
1) Я люблю Достоевского, так же, как Толстого.
(私はトルストイ同様、ドストエーフスキーが好きだ)

帯研46回のさとうさんの解説のなかで、「жеを使うと全く同一」の意と書かれていたので頭の中が混同してしまい、ちょっとためらいがあるのですが、上記の文章でтак жеの前にзапятаяがなければ、これも正しいような気がします…
 除村吉太朗著『露文解釈から和文露訳へ』によれば、以下のように説明されています。
[…как и …の形は《…ように》、《…と同様に》の意である。また…так же…,как и…とすると《同様に》の意がいっそうはっきりする。両方の場合とも比較の単位になるのは、名詞またはその他、文の一部であることもあるし、また完全な文であることもある。また両方の場合とも、как иのかわりに単にкакと書くこともある。それからтак жеとкак иを離さずに、так же как иと書くこともある]
 私は「…так же…,как и…とすると《同様に》の意がいっそうはっきりする」との説明から、自分の中でドストエーフスキーとトルストイを好きな程度が全く同じだと考えられると思いました。
 最後に、この文章の和訳についてですが、「ドストエーフスキーも(と)トルストイも(が)好きだ」と訳してもいいのでしょうか。

久しぶりに除村吉太朗著『露文解釈から和文露訳へ』を開きました。関係副詞какについての説明が一番詳しく載っていました。


設問2)
a) Он в плаще.
→ На нём плащ.

b) Она в темных очках.
→ На ней темные очки.
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正解です。これだけ文法をマスターしていれば、あとはпрактика(実践、実戦)あるのみ。おっしゃる通り、~も~もと訳せます。こうなるとあとは訳者のその文章や文脈においてどう日本語を使うかというセンスの問題だけです。
私の訳は高橋さんのコメント参照ください。

Posted by メイ at 2007年02月08日 11:52

どうもありがとうございます。
какのあとにどういう格が来るか漠然としていました。意味だけを考えていました。4)は複数生格を見落としていました。正確に格をとらえないといけませんね。
ちなみにさとうさんの「как(カク)のあとにどういう格(カク)が来るか確(カク)実に分かっていますか」はシャレたと確(カク)認しました。

Posted by takahashi at 2007年02月08日 13:07

さとうさんとtakahashiさんのкак問答にガクガクッとなります。
takahashiさんのおっしゃるように『ビジネスロシア語』のさらに詳細なやりとりについての希望を、私もある読者から聞きました。ビジネスレターのモデルがそっくりあったらいいのに、とおっしゃっていました。今私の『ビジネスロシア語』は一人歩きしてどこに(誰のところに)いるのかわかりません??? で、詳しく読むのはもう少し先になりそうです。
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最初の「ビジネスロシア語」の原稿のレベルはもう少し高く、会話のテキスト中心でしたが、編集者からそれではあまり部数が伸びないので、ロシア文字が読めるか読めない程度のビジネスマン向けに書き直すようにとのことで、ビジネスロシア語ではぎりぎりのレベルまで下げてOKが出たわけです。確かにそうでもしないと増刷にはならなかったでしょう。ある程度高いレベルで参考書を書くことはそれほど難しいものではありません。レベルを下げるほど、説明を詳しく丁寧にしなければならないので書くほうも疲れるのです。帯研の設問を中級者レベルにしているのも同じ理由です。中級者向けに会話のテキスト中心にビジネスロシア語を書くのは簡単ですが、まず売れないでしょう。それよりもそういう少数者を集めて教えたほうが効率的ですが、ただそういう人たちは全国に散らばっているでしょうからこれも現実的ではありません。せいぜい帯研で書くぐらいでしょうか。ただご友人の方も誤解されている点があります。拙著「ビジネスロシア語」はチェーホフなどのテキストのように講読(露文読解)用ではありません。実戦で聞き取れるだけでなく、自分でもあのぐらいの文は話せる会話力のレベルを示しているのです。見た目は簡単そうかもしれませんが、スラスラあのぐらい話せるような会話力のある人は上級の中以上です。実際のビジネス会話のレベルもあの程度です。実戦はテストや授業ではないのです。時間も限られていますし、よいロシア語を話すことよりも成約(契約締結)することが求められています。拙著に書かれていることが60%や70%できるのでは実戦では使えません。ほぼ100%文章として出てくる(会話用)や聞き取れるという人が、もっと難しいものが欲しいと言えるのだと思います。大学の先生方も含めてビジネスロシア語を経験した人が日本ではほとんどいないと思いますので、果たしてどのくらいの人がそう言い切れるのでしょうか?くどいようですが、通常ビジネスロシア語では実習ということはなく、いきなり本番が普通です。実戦で恥をかいてうまくなるわけです。本だけでは限界があるのは当然です。

Posted by メイ at 2007年02月08日 20:54

出版までの流れがよくわかりました。活発に前進している日露関係の裏を見ているようで嬉しいお話でした。ビジネスに携わる人たちが確実に増えていってるのでしょうね。このまま増え続けてほしいです。御著書に関しては、責任のない私たち読者はついつい欲張ってしまって、あれも欲しい、これも欲しいと勝手なことを言ってしまいます。読者のはてしないわがままでした。
Скоро сказка сказывается, да не скоро дело делается.

Posted by メイ at 2007年02月09日 15:08

ご無沙汰しております。
この記事は公開なさって以来ずっと気になっていたので、今更ながらお邪魔致します。

問1
1) Я люблю Достоевского, так же, как Толстого.
誤。「так же, как」は全く同じというニュアンスを含むため、この表現ではドストエーフスキィとトルストーイが同一人物となってしまいます。

2) Я люблю писателя, как Толстой.
正。トルストーイのような作家が好きだ。

3) Я люблю Толстого как писателя.
正。作家としてのトルストーイが好きだ。

4) В среде таких органических растворителей как сероуглерод
正。二硫化硫黄のような有機溶剤の環境において

問2)
なんと、主語と述語を入れ替えればнаが使えそうですね!*
というわけでそれぞれ以下のようになると思います。
a) Он в плаще.
→На нем плащ.
b) Она в темных очках.
→На ней темные очки.

*研究社1055頁「на1-II[前置格]-2」、岩波899頁「на1- 40」
(研究社1052頁「на1-I[対格]-3」および岩波898頁「на1-3」も参照)
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問1の1)は正です。まったく同じですが、「まったく同様に」と副詞句ですから、ドストエーフスキーとトルストーイが同一人物にはなりません。まったく同じく好きだということです。4)はニ硫化炭素です。辞書をよく見てください。

Posted by コーシカ at 2007年02月25日 21:15
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