2020年02月03日

●第154回

起こるときにも4-2-2項の順次的用法ということで完了体動詞未来形を使う。二つ、ないしはそれ以上の動詞を用いることにより、動作の完了という主観的ニュアンスが出てくる。
 これは厳密な時制的には未来であるが、3-2-4項にもあるように、広い意味での現在の時制と言える。例示的意味は本来過去形の動詞とは無縁で、不定法と完了体動詞未来形に広く現れる。この用法は起源的には歴史的現在(2-1-8-3項参照)であり、2-1-11項で示したように、過去の時制で使う時も完了体動詞未来形を用いる。そのため例示的用法は超時間的性格を帯びているとも言える。

(何かあったら、いつでもお手伝いします)Если что, всегда вам помогу. <未来の定期的反復である(〔これから〕毎日彼女は彼を手伝うようになる)Каждый день она будет ему помогать.と比較してみるとよい>
(着いたら分かる)Доедем – разберёмся
(時が来れば、彼も感謝するよ)Придёт время, и он будет благодарить нас.
(会議が終わったら、すぐ家に帰るよ)Совещание кончится, и я сразу домой. <順次的用法のニュアンスもある>
(私は金で全てを買うさ、どんな敬意も、どんな武勲も、どんな人をも、それでどんな罪からも逃れられる)Деньгами всё куплю, всякую почесть, всякую доблесть, всякого подкуплю и от всякого откуплюсь. <金があればという例示的意味から可能性のニュアンスが出てくる>

 この用法で人の性質や能力を示す事ができる。

(彼はどんな荷物でも持ちあげられる)Он поднимет любой груз.
(ヴィークトルはきちんとした人だ。絶対に遅れないし、いつも時間に間に合う)Виктор человек точный: никогда не опоздает, всё вовремя успеет.

 пока не + 完了体動詞未来形で、「~するまで」という構文に完了体動詞未来形を使うのも、いつ~するかが分からないという例示的用法だからである。

(呼ぶまで来るな)Не ходи ко мне, пока не позову.

 例示的用法は仮想的可能性を提示するという意味で、仮定法の未来時制の用法と非常に近い用法である。仮定法は過去や現在の事実に反する仮定を示すが、未来では条件法と意味はほとんど変わらない。未来は予定などを除き、一般的に未確定の事柄に属するからだろう。ただ仮定法未来時制の方が、万が一という話し手の動作の実現に対する疑いのニュアンスが出る。

(我々がエルサレムにチェチェン人を招いたらプーチンは何と言うか興味がある)Интересно, что сказал бы Путин, если бы мы пригласили в Иерусалим чеченцев?

 例示的用法を否定文で用いれば、3-2-2項の否定の強調や3-2-3項の不可能という用法につながる。その例文を次に挙げる。

(安全ベルトを締めないと、罰金を払うことになる)Не наденешь ремень безопасности - заплатишь штраф.
(渋滞にはまらなかったら、すぐに行くよ)Скоро приеду, если в пробках не застряну. <動作が順次的に行われていることを示す完了体の用法でもある。не застрянуは、これから渋滞にはまらなかったらという、例示的用法である>
 例示的用法で否定文は否定の強調(3-2-2項)となるが、疑問文はその主観性から反語法となり、これも否定の強調とならざるを得ない。

Posted by SATOH at 2020年02月03日 20:38
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