2020年02月04日
●第162回
了体動詞命令形となる。これは代動詞のような促しの用法であり、説得のニュアンスも出てくる。逆に、最初の動詞は促しという意味で不完了体動詞命令形が来て、その後に新規の情報を伝えるということで完了体動詞命令形が来る場合もある。
(私の電話番号をメモして、お願いだからメモして。とても急いでいるの)Запиши мой телефон...записывай, пожалуйста, я очень тороплюсь.
(起きろ、今すぐ起きろ)Вставайте! Сейчас же встаньте! <最初のвставайтеが促しの用法であり、встаньтеは「今すぐ」という新規の情報を伝えているため完了体動詞命令形が用いられている。代動詞に完了体が来る例である>
(おかけください。テーブルの近くにどうぞ)Садитесь. Сядьте ближе к столу. <最初のСадитесь.が着手であり、一旦着手したのであるから、完遂の用法であるСядьтеを使っていることと「テーブルの近くに」という新規の情報が含まれているので完了体が来ている>
促しを意味する動詞で代表的なものは、начать/начинать(対格/不完了体動詞不定形)、приступить/приступать к + 与格、взяться/браться за + 対格/不完了体動詞不定形/、приняться/приниматься за + 対格/不完了体動詞不定形で、これらの動詞が必ず不完了体動詞命令形となるという事ではない。その場の状況に合わせた動作なら不完了体動詞命令形だし、新規の動作なら完了体動詞命令形である。ただ補語に不定形を取る場合はその補語は必ず不完了体動詞不定形であり、それが促しの用法である。
(減圧に取りかかってください)Приступите к декомпрессии.
(輸血を始めなさい)Начните переливание!
上の文のように、新しい事態や情報、新規の指示が出てきた場合なら、このように完了体の命令形を使うわけで、開始という動作は全て不完了体動詞命令形と考えるのは大きな間違いである。
(本題に入って下さい、本件に着手して下さい)Приступите к делу.
交渉は雑談から始まることが多いが、話し手が雑談もそろそろ終わりだなと判断して、もうそろそろ本題にというときには、促しの用法で不完了体動詞命令形Приступайте к делу. が来るが、上の文のように、そのような世間で一般的な状況を考えに入れないという場合(例えば、いきなり本題に入るとか)は、このように完了体動詞命令形が来る。促しという名に惑わされず、文脈が場依存型(不完了体)か、場独立型(完了体)かという事で判断することが必要である。
一方、体育の時間に先生が「私の後について(同じことを)やってみてください」というのは、生徒が先生の動きを見ている中での発言で、スタートの合図みたいなものだから、Повторяйте за мной.と不完了体動詞命令形が来る。
(追剥が通行人に「背広を脱げ」〔と言いました〕)Разбойник – прохожему: - снимай твой пиджак. <促し、切迫感>
被害者にとっては突然(つまり新しい事態や情報が出てくる場合)であっても、追剥にとっては被害者が服を脱ぐのは、話し手(この場合は追剥)の立場上、またその場の雰囲気上、当然であるという意識が話し手にあるので、不完了体動詞命令形の促しの用法を用いている。追剥が絶対に背広を脱いでもらいたいかというと、必ずしもそうではなく、動作の選択の余地もある。もし被害者が脱がないのなら、腕ずくとか、殴るとか、殺すとか、いずれにせよ欲しいものは手に入れるという意識もあるわけであり、急いでやれという切迫感のニュアンスもある。