(彼は帽子を取り、毛皮の外套に手を伸ばそうとした。ふと気がつくと、門番の娘が、10歳ぐらいの女の子だったが、不意に大きな声を上げた。彼はやにわに走り出した。女の子は彼を追いかける。結局(よってたかって)捕まえられてしまった)Он шапку взял и хотел за шубой идти – глядь, дочка швейцара, девочка лет десяти и – закричи! Он бежать, она за ним. Его и схватили.
この用法は、上の文におけるзакричиという完了体の命令形のことで、глядьは意外性を示し、「ふと見ると」という感じである。бежатьと不定法なのは突然開始された動作を示す。6-1-1項参照。
5-2-8 条件法的・仮定法的用法
単数の命令形は例示的用法から派生した条件法や仮定法としても使え、生き生きとした口語的用法となり、命令形の後に三人称の主格が立つ場合が多い。これは譲歩や無関心を示す用法でもあり、「仮に~したとしてもесли бы」ということで例示的用法と結びつくため、譲歩を示す節には完了体動詞命令形が使われることが多い。4-2-6および4-2-7項参照。
(実際どこか間違えば、彼だって人間だから、同僚がかばってくれなければ彼は八つ裂きにされる)А ошибись он где-то действительно, ведь он человек, - так его растерзает, если коллеги не прикроет.
(我々全員が護送隊にすぐに飛びかかりたくても、ピクリとするまでに我々は撃たれて皆殺しだ)Захоти мы все сразу броситься на конвой – пока зашевелимся, нас перестреляют прежде.
(彼女か赤ん坊の身に何か起こったら、彼は絶対に自分を許せないさ)Случись что-нибудь с ней или ребёнком, он никогда себе не простит!
(彼が手紙を書かなかったりしてみろ、こんな話は読者にはなかったことになったろう)Не напиши письма он, и не было бы читателю вот такого рассказа. <否定文>
(新しい流行が現れさえすれば、すぐに多くの人々が変わってしまうでしょう)Явись лишь новая мода, и тотчас же множество людей изменилось бы.
(私たちが違う名でそれをチェックし始めたとしても、結果は常に同じだったろう)А начни мы проверять его на других именах, результат неизменно оказывался бы тем же самым.
(このような仮定が正しければ、知られている音に一定の順序を与えるだけで十分だったはずだ)Будь такое предположение правильным, достаточно было бы известным звукам придать определённый порядок.
(彼によい農場があればザハールと同じくらい稼げたのに)Будь у него хорошее хозяйство – и он бы заработал не хуже Захара.
(あなたはここを去って、私が残って、全ての責任を取れというのですか)Вы-то уедете, и я оставайся и за всё отвечай.
(いくら祈っても、誰も空からパンのかけらを落とそうなんて気にかける〔神様〕はいない)Сколько ни молись, а с неба никто не догадается сбросить кусок хлеба. <主節は例示的用法で、従属節には反復の意味の不完了体命令形>
上の用例からも分かるように、この用法で使われる多くの動詞というのは、普通は語義的に命令形にならないか、主語が命令法で含意されるニ人称以外の一人称複数や三人称であり、法の転用ではあるが、誤解が起こらないようになっている。возьмиに至っては、「突然」というような助動詞的な働きをしている。
]]>(池の水を飲むなんて考えるなよ)Не выдумай пить воду из пруда.
(私を送ってゆくなんて気は起こさないでください)Не вздумайте меня провожать.
(僕が全て知っているとラールカにうっかり警告するのは絶対にやめてくれ)И не вздумай Ларку предупредить, что я всё знаю.
5-2-5 同じような状況で使える完了体・不完了体の用法の違い
同じような状況で使える不完了体・完了体の命令形の例で、次の文は両方ともパーティーなどで誰かを紹介するときに同じような意味で使えるが、厳密に言えば不完了体動詞命令形は促し・勧誘、完了体動詞命令形は願いというニュアンスがある。その次の文も同様なニュアンスを持つ。
(御紹介します)Знакомьтесь! (Познакомьтесь!)
(宿題のノートを出して下さい)Давайте (Дайте) домашние тетради.
次の二つの文は、使い方は同じにせよ、不完了体動詞命令形では、具体的な旅行か何か事件があったことを話し手も聞き手もはすでに知っているという前提がある。だから補語がない。不完了体動詞命令形は、状況から当然分かるはずの動作への移行を促す(話すようにせっつく)ということである。完了体の方は、具体的な旅についての新しい情報を聞かせてくれという事になる。
(さあ、言えよ)Ну, рассказывай!
(旅はどうだったか話してくれ)Расскажи, как прошла поездка.
5-2-6 被動形動詞過去短語尾を使って命令の意味を示す用法
この用法は語義に許可や命令の意味がある動詞の被動形動詞過去短語尾に見られる。先の二つの文は、禁止なので後に不完了体動詞不定形がきており、次の二つの文は命令だが、動作の反復を示しているので、同じく不完了体動詞不定形が来ている。
(ケンギールでは小包で挽き割を受け取るのは許されていたが、それを煮るのは絶対禁止だった)В Кенгире разрешено было получать крупу в посылках, но так же неукоснительно запрещено было её варить.
(これからは棍棒を持たないで見回りをするよう命じられた)Предложено было впредь обходиться без дубинок.
(看守には囚人を番号だけで点呼し、名前は知るべきではないし、覚えるべきではないと命令された)Велено было надзирателям окликать заключённых только по номерам, а фамилий не знать и не помнить.
(女性が収容所で男性の写真〔肖像画〕を所持してはならない)Не положено женщинам в лагере иметь мужские портреты.
無人称動詞не полагается(= не разрешается)にもне положеноと同じような用法がある。
(走行中に飛び乗るのは禁止されている)На ходу садиться не полагается.
5-2-7 憤激と反抗のニュアンス
これは意思に反して課された、ないしは義務として予定された行為に
]]>(粥を煮るな)Не вари каши. <意識的、わざと煮るな>
(うっかり粥を煮るなよ)Не свари каши. <警告・危惧>
(ここは滑りやすいから、転ばないように〔注意して〕ください)Здесь скользко, (смотрите) не упадите! <смотритеは強調の意味>
(風邪なんかひかないでくださいね)Не простудитесь!
(明日はうっかり遅れないでくださいね。こちらの方もいらっしゃるのを待ってはいられませんから)Смотрите, не опоздайте завтра, мы не сможем вас ждать. <警告から来る懇願(強い頼み)のニュアンス>
(明日は遅れないでください。手持ちの時間があまりありませんから)Не опаздывайте завтра, в нашем распоряжении будет очень мало времени. <不完了体動詞命令形опаздывайтеが用いられているため禁止の意味で、絶対に遅れるなという意味>
この警告の用法はмочь (можно) + 完了体動詞不定形や、ニ人称の完了体動詞未来形を使っても表現できる。一緒に使われる動詞は望ましくない動作を示す動詞деструктивные глаголыであり、заблудиться(迷う)、забыть(忘れる)、опоздать(遅れる)、потерять(失う)、получить двойку(落第点を取る)、проиграть(負ける)、пропустить урок(授業をさぼる)、простудиться(風を引く)、разбить(割る)、сломать(壊す)、уронить(落とす)などである。
(ジーナ、ショールを忘れたね。風を引くかもしれないよ)Зина, ты забыл шарф. Можешь простудиться.
(こんな零下の寒さでは頬に凍傷ができるかもしれない)В такой мороз можно отморозить щёки.
(気をつけろ、うっかり日記を忘れるなよ)Смотри, не забудь дневник. = (気をつけろ、日記を忘れるぞ)Смотри, забудешь дневник!= (気をつけろ、日記を忘れるかもしれないぞ)Смотри, можешь забыть дневник!
危惧の表現として、боятьсяと共に使われるкак бы не (чтобы не) + 完了体(過去形・不定形)があり、主文の動詞の内容をより詳しく解説するという役割がある。
(病みつきはしないかと心配だった)Я боялся, как бы не заболеть.
(彼女がいなくなりはしないかと心配だ)Боюсь, чтобы она не исчезла.
(残念だけと、今晩は行けない)Боюсь, что я не смогу прийти сегодня вечером.
(僕には彼が来るという自信がない)Боюсь, что он не придёт. <直訳は「来ないことを心配している」>
警告を強調した表現としては、не выдумай(те) + 不完了体不定形やне вздумай(те) + 不完了体動詞不定形(~というまねはするな)だが、これらの動詞自体は5-2-4項の警告の用法がもとであり、接続する不定形は
]]>ところが、例外的に、諺、格言のほかに、具体的動作を指示する掲示、注意書、取扱説明書(マニュアル)などで、例外事項や禁止事項に関わるような、偶発的(散発的)な動作(ある条件がそろえば起こるが、そろわなければ起こらないような動作)を表現するために、完了体動詞命令形が用いられることがある。その場合でも完了体の順次的用法(従属節と主文の間の)と併用されることはない。順次的用法というのは動作が次々と起こるわけで、動作が起こるかどうかは条件次第という例示的反復(例示的用法)とは普通は相容れない。
(痛くなったらこの薬を飲んでください)Если будет болеть, примите это лекарство. <痛くなったらという状況の下では必ず薬を飲むが、痛くなければ飲まなくてよいと考えると、完了体動詞命令形の例示的用法が出てくることになる>
(保証書への不正確な、ないしは不十分な記載の場合は、ただちに販売店にお問い合わせください)В случае неправильного или неполного заполнения гарантийной книжки немедленно обратитесь к продавцу.
(必要なら4時間の間隔をあけてもう一度注射をして下さい)При необходимости инъекцию повторите с интервалом в 4 часа.
5-2-3 丁寧な依頼 → 完了体動詞未来形の否定疑問形
命令形ではないが、完了体動詞未来形2人称の否定疑問形を用いて丁寧な依頼を示すことができる。完了体動詞未来形の不可能の用法から潜在的可能性へ、さらに丁寧な依頼へと派生していった用法である。不可能を疑問形にすること(~できませんか)で、丁寧さという主観的なニュアンスを生み出しており、動詞が文の焦点となっているので、完了体が用いられていて、これは日本語と似た発想である。
「トイレはどこか教えていただけませんか?」- Вы не скажете, где туалет? <= Не можете ли вы сказать, где туалет?>
「あいにくですが、申し上げられないのです」– Нет, к сожалению, не скажу. <= Нет, к сожалению, не могу сказать.>
(恐れ入りますが、少しずれていただけないでしょうか?)Простите, вы не подвинетесь немного?
(お電話お借りできませんでしょうか?)Вы не разрешите позвонить от вас?
(お力をお借りできませんでしょうか?)Вы не поможете мне?
(恐れ入りますが、ほらそこの人形を見せていただけないでしょうか?)Будьте любезны, вы не покажете мне вон ту куклу?
下記のように、подскажетеの代わりに、同じ意味で完了体動詞命令形подскажитеの否定も最近口語では聞くようになってきた。
(ロシア人墓地はこの辺のどこにあるか教えていただけませんか?)Вы не подскажите, где здесь русские могилы?
5-2-4 警告・危惧(うっかり~しないで) → 否定詞 + 完了体動詞命令形
完了体には「何かあれば~する」という例示的ニュアンスがあり、そこから可能性に発展し、неとともに完了体動詞未来形では不可能を示す事
]]>接頭辞в-, вы-, за-, пере-, при-, про-のついた運動の動詞では、完了体命令形は要請から派生した命令などのような強制的なニュアンスを帯び、それが不完了体命令形の任意のニュアンスと対照を示す場合もある。
(来週来て下さい。ご注文をお受けしますから。でも水曜は来ないでください。水曜は工房では〔注文〕受付はしないので)Придите на следующей неделе, мы примем ваш заказ. Но не приходите в среду: в среду в мастерской приёма нет. <行かざるを得ないわけで、強制的ニュアンスがある。また動作の否定には不完了体命令形を使うことが分かる>
(可能なら明日来て下さい。10時でもいいですし、御希望なら11時でもいいです)Приходите завтра, когда сможете. Можете - в 10, если хотите - в 11 часов. <5-1-2項の勧誘なども考え方は同じである>
(日曜にうちに来て下さい)Приходите к нам в воскресенье. <どちらでもいいという任意のニュアンスであって、強制のニュアンスはなく、また日曜に文の焦点がない>
5-2-2 例示的反復 → 完了体動詞命令形
完了体というのは、いつ動作が起こるかは不明なわけだが、動作が起これば遂行するという事で、それが潜在的な可能性を生むことになる。例示的というのは「もし~したら~する」ということで、主観的ニュアンスである。つまり、動詞が文の焦点であり、それゆえ完了体が用いられる。命令法における例示的用法は、警告・危惧(5-2-4項参照)を除いて、普通は命令法には現れないが、5-2-8項(条件法や仮定法)は命令形という形式を借りた例示的用法であり、例示的反復の用法と言える。
例示的用法は会話では使いにくいと思われる。それは、例示的用法というのは、「何か~したら、~する」ということで、起こるかどうか分からないが、起こったらその動作は遂行されるという事からである。つまり、ある条件下での動作の強制を意味することになる。ところが、マニュアルのように、指示通りにしてもらわないと機械が壊れる、というような他の選択肢がないような場合は、動作は必ず遂行してもらわなければ困るが、会話においては、話し手の聞き手に対する動作の関わりは、指示や命令よりも提示という形式が多い。それはその動作遂行について聞き手の判断に任せるという意味合いが多く、動作に対する期待度や拘束度はゼロ、つまり、どちらでもよいという消極的ニュアンスを取ることが多い。これは動作を聞き手に指示するというのは強制するということで、日常生活では目下の者に対してはともかく、一般的には礼を失すると考えるからであろう。そのような場合には、消極的な、聞き手の判断に任せるという促しの意味の不完了体動詞命令形を使うのが自然だということになる。それと、もともと例示的用法というのは、用いられる時制に関わらず、形式的に完了体動詞未来形を取ることになっており、その形を同じ完了体とはいえ、命令形という形に変えるのも心理的に抵抗があるからかもしれない。
規則、指示、勧告、広告などにおいて、規則的反復動作の意味で用いられる場合は、必要なら何度でもという動作の常態化(規則的反復・習慣)を念頭に置いているからであり、表現的には平板なものとなる。もっと言うと、ある条件下でも何度も起こるという確信があるときに、不完了体命令法が使われると考えてよい。
(必要なら輸血しなさい)В случае необходимости делайте переливание крови.
5-2-1 要請 → 完了体動詞命令形
この用法は、何かを人に頼んだり、尋ねたりするという具体的な動作であり、動詞が文の焦点となっており、話し手の主観が入る用法のため完了体が用いられる。頼みや助言の意味のニュアンスを伴っていることが多い。このように、完了体命令形も場独立型であり、要請という用法は一番ありふれたものと言える。
(トイレはどこか教えてください)Скажите, пожалуйста, где туалет?
完了体の命令形は動作の全体的把握であり、頼み、助言などの付加的意味合いを持ち、動作過程そのものはどうでもよい。新たな動作に完了体動詞命令形が使われるというのは、新しい情報と聞き手という関係なので、他動詞ならば情報として補語を伴う事が多い。一方他動詞の不完了体動詞命令形は、すでにその情報を聞き手が知っているという既知の状況で用いられるので、補語なしで用いられることが多い。
間接疑問文には一般的に疑問符をつけないが、強い疑問のイントネーションがある場合は疑問符をつけ、それは主文にскажи(те)やя спросилがある場合だと、ロゼンターリРозенталь先生はПунктуация и ударение в русском языке, Книга, 1988で述べている。これはскажи(те)やя спросилがなくとも文意は通じ、文の主体が疑問文にあるからだからであろう。
(駅にはどう行ったらいいか教えてください)Скажите, пожалуйста, как пройти на станцию?
(野菜を袋に入れてください)Положите овощи в пакет.
(右に行って、それから花屋さん(のところ)を左に曲がってください)
у-と言う接頭辞のついた運動の動詞は1回の動作も、反復の動作も扱えるので問題ないが、при-という接頭辞のついた不完了体の運動の動詞は規則的反復しか示せない。
(授業に来る時は、本を持って来てください)Когда будете приходить на занятия, приносите с собой книги.
上の文のように主節も従属節も反復の文となり、具体的な1回の動作を示すには、приноситеをвозьмитеなどと動詞を換える必要がある。このбудетеを取って、приходитеとしても意味は変わらない。これは現在の規則的反復が未来における規則的反復につながっている場合である。
5-1-7 感情的ニュアンス(願い事、説得、主張、反抗的態度、脅し)
提案、助言、許可、要求、命令、指示をする場合、動作が既知の事柄であれば不完了体動詞命令形が、新規(未知)の事柄であれば完了体動詞命令形が用いられる。ただ許可において不完了体動詞命令形は、無関心(ну что ж〔それならまあ〕とよく使われる)や、善意を示す事がある。要求や指示にでは不完了体動詞命令形は当然~するというニュアンスから無礼な感じを示す事がある。これらは不完了体が回りの状況に依存するというか、流されるために、文脈によって願い事、説得、主張、反抗的態度、脅しなどのニュアンスが出ることがあるからである。
(お願いだから助けてくれ)Бога ради выручай.
(好きなようにしなさい)Делайте как хотите.
5-1-8 時の状況語と用いられる場合
「不完了体は話し手が動作遂行の結果として、時間軸の特定かつ不動の一点をイメージしない」と第1章に書いたが、一見時間軸の特定かつ不動の一点をイメージしているかのように見えるものもあるが、実は、時間の状況語は無限小の時間軸の不動の一点ではなく、大きな点である「期間内に」を意味しているものもある。つまり完了体がイメージする時間軸の特定かつ不動の一点というのは大きさを持たない数学的点であり、不完了体のは大きさを持つ物理的点と言い換えてもよい。大きさがあるということは期限ではなく、期間を意味するということである。
(10時までに来て下さい)Приходите к десяти.
(明日遅くとも10時には来て下さい。お願いしますよ)Я попрошу вас: придите завтра не позже 10 часов. <3-1-4-6項に書いたように、попроситьには強制的ニュアンスがある。>
初めの文では動作は10時までにある時間軸の任意の一点で行われ、二つ目の文では動作は10時までの時間軸の特定かつ不動の一点で行われる。つまり不完了体は任意性を示し、完了体は具体性を示すという体の本質を表しているのである。共に動作の全一性を示しているが、完了体は動作の結果(来て、そこにいる)まで包含しているが、不完了体にはそれがない。
(良い子の皆さん、みなさんが公園をお散歩している間、花壇を見て楽し
]]>(まあな、こいつは全部しゃべるさ。書き留めるのが間に合わないくらいだろうよ)Ну, этот расскажет всё! Успевай записывать!
若者言葉の「~しろってか」を使って、「~全部書き留めろってか」と訳してみるのも面白いかもしれない。успетьは不定形として完了体を取るのが普通だが、この場合は尋問が一度ではなく、あるいは一度であっても長期にわたるというニュアンスがあるから、不完了体успевать записыватьが用いられていると考えられる。
5-1-6 規則的反復
命令法においては現在の時制の反復といっても、動作はこれからになるので、厳密に言えば時制的には未来であり、ただそれが現在にほぼ接している時点以降を扱うか、現在とは距離を置いた未来の規則的反復を扱うかという違いだけであり、扱う時系列的範囲は重なる。この違いを示すのは、従属節におけるбытьの未来形の有無のみである。これは不完了体未来形が近接未来(発話時点のすぐ後に続くか、発話時点と融合した未来)を表現できないことに起因する。下記の文でもбудетеがついていれば、現在とは離れた未来の時制の規則的反復を意味するが、そうでなければ、現在とほぼ接した時点以降の未来の規則的反復というニュアンスになる。ただ規則的反復という動作に変わりはなく、会話においてはбудетеをつけようとつけまいと、このようなニュアンスを除いて意味に変わりはない。4-1-1-9項も参照。
(彼がつけ上がるようなら、たしなめなさい)Если он будет заноситься – одёргивайте. <Если以下の従属節が未来の時制の規則的反復を示している>
(帰る時はいつも明かりを消して下さい)Всегда. когда (будете) уходить, гасите свет.
上の文を「今日は」というような具体的な1回の動作にすると、下記のように、主文に完了体命令形が来る。
(お帰りになる時は明かりを消して下さい)Когда будете уходить, погасите свет.
上記の文ではбудетеはこれからの動作である未来の時制を示すという点で必須であり、不完了体未来形は近接未来を示せない代わりに、未来の動作にある程度の時間の余裕を与えるという機能もある。また4-1-1-9項にあるように、文の焦点が主文の動詞погаситеにあるため、когда以下の従属節では未来の時制における動作事実の有無の確認であり、文の焦点がこないために不完了体未来形が用いられているとも言える。когда以下の従属節に完了体未来形が来ると順次的動作となって、帰る動作と明かりを消す動作が、継時的にあまり間をおかず行われることになり、この文では不自然である。
動作の規則的反復の命令には不完了体動詞命令形を使う。共に使われる副詞及び状況語は、время от времени(時々)、всегда(いつも)、иногда(時折)、каждый день(毎日)、по выходным(休日ごとに)、пореже(ごくたまに)、почаще(ちょっと頻繁に)、регулярно(定期的に)などがある。
5-1-4 禁止 → 否定詞 + 不完了体動詞命令形
禁止の用法というのは不完了体命令形ないしは不定形の否定であり、それは喫煙や立ち入りなど通常許されている動作が、特定の場所や時間、状況で禁止されるという意味である。これと異なるのは5-2-4項の完了体の命令形の否定で示される危惧や警告の用法であり、もともと動作がするかどうかは分からないが、うっかりして~しないようにという意味である。
禁止(不許可)というのは動作をしないように命令するわけで、あらゆる動作の蓋然性(TPOに合わせる動作の確率)вероятностьを排除することになり、それゆえ不完了体が用いられる。具体的な1回の動作、任意の1回の動作の禁止や反復の動作の禁止も含まれるが、どちらなのかは文脈による。一切の動作を否定する場合には不完了体が用いられるが、禁止でも同じ考え方である。定動詞・不定動詞の場合は、不定動詞の命令形は最初からの動作の否定であり、定動詞命令形の否定は、今行っている動作を止めよということになる。禁止を意味するне следует, не годитсяに続く不定形は必ず不完了体となる。5-2-6項や6-1-2項の不必要も参照願う。
(マンションに犬を連れてきてはいけない)Не води в квартиру собаку. <不定動詞の禁止は動作自体の禁止を示す>
(〔それ以上〕そっちへは泳ぐな。そっちは深いぞ)Не плыви туда: там глубоко! <定動詞の禁止は、それまでなされた動作をそれ以上することに対する禁止である>
(市の案内図を持っていかないでください)Не берите с собой план города.
(浮気はだめよ)Не изменяй мне.
(殴らないでください)Не бейте меня.
(そのようにふるまってはいけない)Так поступать не годится.
(疑うことなかれ、自信を持て)Не сомневайтесь!
日本語でも、幼稚園の先生が園児に、「今日は風が強いので外に出ません」というのも、禁止の命令の意味であり、次の文とニュアンス的には近い。
(ここは禁煙です)У нас не курят. <動作が行われないということから禁止の意味に発展したことが分かる>
語義自体に禁止の意味があるものにне допускатьがあり、命令形で「あってはならない、~してはならない、~しないようにしなさい」という意味であり、取扱説明書でよく使われる。後には(動)名詞を取り、不定形は取らない。не велеть + 不完了体動詞不定形も使われる。またзапретить/запрещатьは不完了体動詞不定形を取るが、не позволитьは完了体動詞不定形を取るなど動詞の本義に合わせていろいろである。
(バイブレーターの先が鉄筋に当たらないようにして下さい)Не допускайте касания наконечника вибратора к арматуре.
(このことをお前に話せないんだ。だめだって)Не могу тебе рассказывать это: мне не велели.
(医者は彼に喫煙を禁じた)Доктор запретил ему курить.
(残念だけど、母は私が映画に行くのを許さないわ)Боюсь, что мать не позволит мне пойти в кино.
5-1-5 反語的用法
]]>(早く元気になってください)Выздоравливайте! <= Поправляйтесь!; Вставайте скорее!; Не болейте!、病人への見舞での別れの挨拶で、выздоравливатьはпоправлятьсяよりも強調とした感じが出る>
暴言にも不完了体が使われるが、これは不完了体の切迫感に関係し、そこから強い促しにもなり得るということである。これは後述の不定法において切迫感には不完了体が用いられることなどでも理解されよう。また命令文ではない二人称の用法にこれに似た用法がある。
(とっとと失せろ)Убирайся!
(もう一度そこに寝てみろ、いいか〔ただじゃおかない〕)Ещё раз тут ляжешь – смотри! <лечьという完了体が来ているのは例示的用法>
5-1-3 動作の様態 → 不完了体動詞命令形
動作の途中で命令法を使う場合は、文の焦点は補語にあるので不完了体動詞命令形が来る。この用法は動詞の動作がどのようであるか、そのありようを示すもので、動作の完成は二次的なものとなり、いいとか悪いとかの完了体動詞過去形の結果の評価とは違う。文脈によっては動詞なしでも意味が通じるというような、動作事実の有無の確認であり、動詞が刺身のつまのようなとき、つまり様態に文の焦点があるときはすでに動作が行われているという前提ゆえ、5-1-3項同様、2-1-6-1項のみなし反復として、不完了体動詞命令形が出て来る。共によく使われる副詞及び状況語は、внимательнее(もっと注意して)、побыстрее(もっと早く)、помеделеннее(もっとゆっくり)、потише(もっと静かに)などである。3-1-11項参照
(〔X線検査で〕もっと深く呼吸してください)Дышите глубже.
(もっと早く帰って来てください)Возвращайтесь поскорее.
(もっと大きい声で話して下さい)Говорите громче.
上の文を、Громче!と動詞を省いて言っても、イントネーションによりニュアンスは変わるかもしれないが、意味そのものには変わりはない。これは動詞自体が文の焦点ではないという不完了体の用法の特徴である。
(〔いつもより〕暖かい恰好をしなさい)Теплее оденься.
上の文に完了体動詞命令形が使われているのは、動作遂行(暖かい恰好〔セーターなどを着るとか〕をする)に意味の重点があり、暖かい恰好をしなければ風邪をひくよという主観的ニュアンスがあるからである。この文の前に「着なさい」というような出だしの文がなく、いきなりこう言っているわけで、暖かい恰好をするというのは、新しい情報であり、それゆえ完了体が出てくるとも言える。
同じ動詞を繰り返す場合、最初は完了体動詞命令形で新しい事態や情報が出てくることを伝え、次に様態を述べる場合に不完了体動詞命令形を使うというのも、次に用いられる動詞が刺身のつまのような感じだからである。しかし、при-という接頭辞を持つ運動の動詞群の不完了体ではこの用法は使えない。規則的反復の用法(3-1-2項の予定の用法は例外であろう)しかないからである。ゆえに、次の文ではприноситьではなく、別の動詞нестиを使わざるを得ない。
5-1-2 勧誘 → 不完了体動詞命令形
話し手にとっても聞き手にとっても、動作の時間と回数の制約がない「いつか」という意味の促しと考えてもよいような勧誘的意味合いを持つ動作の要請で、相手を拘束しないような任意の動作の時に用いられ、不完了体の本質を示すような用法でもある。よく使われる命令形は、вешайте ваш плащ(コートをおかけ下さい)、заходите(お寄りになってください)、знакомитесь(ご紹介しましょう)、проходите(奥の方へどうぞ)、раздевайтесь(コートをお脱ぎください)、угощайтесь(お召し上がりください)、усаживайтесь поудобнее(もっとお楽にしてください)などである。この用法は「~するとしたら」が前提となっているために、踏み台(みなし反復)ということで、動作自体が任意であり、動作遂行の結果をイメージしないので、不完了体命令形が用いられる。この用法では時間軸の特定の不動の一点を示すような時の状況語(例えば次の文のсегодняやзавтра)でも、時間軸の一点と言うよりは、期間としての任意の一点と考えられるので共に用いることができる。
(時間がおありなら今日家に寄ってくださいね)Заходите к нам сегодня, если у вас будет время. <если以下で分かるように、このсегодняは時間を制約しておらず、不完了体命令形は、話し手の主観がない、あなたまかせと言うか、聞き手まかせの用法である。そのためこのсегодняを時間軸の不動の一点ではなく、期間と考えて、今日のいつでもという任意の一点を示していると考えれば、正に不完了体そのものの用法である>
(今日は羊の肉は入ってこないよ、明日来て下さい)Сегодня баранины не будет, приходите завтра.
(今、羊の肉がないから、もう少し後で来てください)Придите попозже, сейчас баранины нет. <完了体動詞命令形Придитеは、命令法が未来を示すことから完了体未来形の点未来の用法に似ており、「必ず来てね」という相手を拘束するような強い命令であり、不完了体命令приходитеは、動作の促し(着手)の用法であり、来ても来なくてどちらでもいいけどという感じである>
(〔メールや手紙を書いて〕下さいね)Пишите! <完了体動詞命令形のНапишите!でもよいが、それだと必ず書いてというニュアンスが感じられる>
(電話をくださいね)Звоните. <強制的なニュアンスや具体的なニュアンスはない>
勧誘の意味で完了体動詞命令形が来ているのは、心中はともかく、電話してもらうという動作遂行を、口の上だけでも強く願っているからであり、期待というニュアンスがあるから完了体動詞命令形が来ている。続く不完了体動詞命令形の文と比べてみれば分かる。
(そのうちにでも電話をくださいね)Позвоните мне как-нибудь.
(もし他に何か問題が起これば、電話下さい)Если возникнут ещё какие-нибудь вопросы, звоните.
ニュアンスがない動作というのは、ある意味期待度ゼロ、拘束度ゼロということであり、消極的、つまりある動作がなされるかどうかはどうでもよいという場合には、上の文のように不完了体動詞命令形が用いられる。
]]>(女店員が買い物客に、「次の方、どうぞ」)Продавщица – покупателю: говорите. <店で行列に並んでいるときなどで、何が買いたいのかを尋ねる、つまり買い物客に注文するきっかけを与える店員の言葉>
命令法の促し(着手)の用法には不完了体命令形を使うが、会話でよく聞く、Давай, давай(さあさあ、やれよ)!とかдавай + 不完了体命令形(さあ~しろ)<давай(те) + 不完了体不定形〔または完了体一人称複数〕(~しましょう)とは別の用法>に不完了体命令形が使われるのも、この用法だからである。
(さあ喧嘩をやれよ)Давайте деритесь!
下記の文はすべてもうそろそろというニュアンスの促しであり、動作のきっかけを与えている。
(奥〔の方〕へどうぞ)Проходите, пожалуйста. <来客に対して>
(どっちを取るの〔選びなさいよ〕、家族、それとも愛人?)Выбирай – семья или любовница?
(ドアにノック。お入りなさい)Стук в дверь – входите (войдите). <不完了体動詞命令形входитеであれば、促しの用法で、事前に来訪が分かっていたことになるし、完了体動詞命令形войдитеなら、新しい事態や情報が出てくる(事前に来客を知らされていなかった)場合の、入ってよいという許可となる>
この「もうそろそろ」は切迫感に通じ、「すぐに~せよ」というニュアンスをもつことになる。
(さっさとやってください)Шевелитесь. <= Торопитесь. 動詞の語義から来る切迫感そのものの用法である>
(奴をつかまえろ!)Держи его! <カッパライやスリに対して>
(おい、くそったれ、だれに雇われたのかしゃべるんだ!)Говори, гадина, кто тебя завербовал? <文の尋問などで不完了体動詞命令形が来るのも、相手が自白するのは当然という意識が話し手にあるからであり、そこから促しや着手の用法となり、すぐに話せという切迫感が出てくる>
(かかれ)Действуй! <〔(すぐに)行動せよ〕とか〔(すぐに)やれ〕ということだが、警察や軍隊などの作戦行動の際、任務〔すべき内容〕が伝達されていれば、後は号令だけとなり、そういう意味で不完了体動詞命令形が来る。8-13項にあるДавай(те)!、Валяй(те)!〔俗語〕としても同義で、切迫感の用法でもある>
切迫感が強まれば焦燥感となり、苛立ちを示すということにもなる。
]]>(私の電話番号をメモして、お願いだからメモして。とても急いでいるの)Запиши мой телефон...записывай, пожалуйста, я очень тороплюсь.
(起きろ、今すぐ起きろ)Вставайте! Сейчас же встаньте! <最初のвставайтеが促しの用法であり、встаньтеは「今すぐ」という新規の情報を伝えているため完了体動詞命令形が用いられている。代動詞に完了体が来る例である>
(おかけください。テーブルの近くにどうぞ)Садитесь. Сядьте ближе к столу. <最初のСадитесь.が着手であり、一旦着手したのであるから、完遂の用法であるСядьтеを使っていることと「テーブルの近くに」という新規の情報が含まれているので完了体が来ている>
促しを意味する動詞で代表的なものは、начать/начинать(対格/不完了体動詞不定形)、приступить/приступать к + 与格、взяться/браться за + 対格/不完了体動詞不定形/、приняться/приниматься за + 対格/不完了体動詞不定形で、これらの動詞が必ず不完了体動詞命令形となるという事ではない。その場の状況に合わせた動作なら不完了体動詞命令形だし、新規の動作なら完了体動詞命令形である。ただ補語に不定形を取る場合はその補語は必ず不完了体動詞不定形であり、それが促しの用法である。
(減圧に取りかかってください)Приступите к декомпрессии.
(輸血を始めなさい)Начните переливание!
上の文のように、新しい事態や情報、新規の指示が出てきた場合なら、このように完了体の命令形を使うわけで、開始という動作は全て不完了体動詞命令形と考えるのは大きな間違いである。
(本題に入って下さい、本件に着手して下さい)Приступите к делу.
交渉は雑談から始まることが多いが、話し手が雑談もそろそろ終わりだなと判断して、もうそろそろ本題にというときには、促しの用法で不完了体動詞命令形Приступайте к делу. が来るが、上の文のように、そのような世間で一般的な状況を考えに入れないという場合(例えば、いきなり本題に入るとか)は、このように完了体動詞命令形が来る。促しという名に惑わされず、文脈が場依存型(不完了体)か、場独立型(完了体)かという事で判断することが必要である。
一方、体育の時間に先生が「私の後について(同じことを)やってみてください」というのは、生徒が先生の動きを見ている中での発言で、スタートの合図みたいなものだから、Повторяйте за мной.と不完了体動詞命令形が来る。
(追剥が通行人に「背広を脱げ」〔と言いました〕)Разбойник – прохожему: - снимай твой пиджак. <促し、切迫感>
被害者にとっては突然(つまり新しい事態や情報が出てくる場合)であっても、追剥にとっては被害者が服を脱ぐのは、話し手(この場合は追剥)の立場上、またその場の雰囲気上、当然であるという意識が話し手にあるので、不完了体動詞命令形の促しの用法を用いている。追剥が絶対に背広を脱いでもらいたいかというと、必ずしもそうではなく、動作の選択の余地もある。もし被害者が脱がないのなら、腕ずくとか、殴るとか、殺すとか、いずれにせよ欲しいものは手に入れるという意識もあるわけであり、急いでやれという切迫感のニュアンスもある。
上の文で完了体命令形のСядьтеを使っているのは、話し手が聞き手に、主観的な意味合いから、まあ落ちついて、びっくりして腰を抜かさないようにという意味で、完遂の意味の「まずは、おかけなさい」を使っている。しかもдаютは予定の用法だということは明らかである。поедетеも聞き手にとっては、予定でも何でもなく、寝耳に水であるために、完了体未来形が来ている。
(この通知はメールで届いた。すぐ返事を用意しなさい)Это сообщение получили по электронной почте. Срочно подготовьте ответ! <Срочноが来ているのに完了体動詞命令形が来ているのは、新規の情報だからである。切迫感の用法は動作が行われるのが周囲の状況において自然であるという前提が必要である>
(昼食を取ったら、すぐにもどれ)Пообедай и сейчас же возвращайся.
上の文でсейчас жеという、あたかも時間を示す状況語があるのに、不完了体動詞命令形が続くのは、私の唱える説「不完了体は話し手が動作遂行の結果として、時間軸の特定かつ不動の一点をイメージしない」と矛盾すると思われるかもしれない。сейчас жеは「今すぐ」という意味であって、今というこの瞬間を示していない。今というこの瞬間は常に動いているわけで、不動の一点ではないし、今を広く解釈して、一瞬後のいつかとすれば、1分後か、2分後か、はたまた10分後か知らないが、特定できない以上不動の一点ではないことは明らかである。そのため不完了体が用いられても問題は生じない。この用法は命令法の切迫感か、それに動作の様態の強調が組み合わさったものであろう。次の完了体動詞命令形の例文と比較してほしい。
前の文もそうだが、命令法における動作が次々続く順次的用法では、先の動作の結果を次の動作が受けるかどうかによって、次の動詞の体が変わって来る。完了体の順次的用法は前の動詞の結果が次の動詞に及ばないくらい早く連続して続く場合に使われ、依頼の意味の別個の新規の動作がそれぞれ続く時ぐらいであろう。一方、前の動作の結果を次の動詞が受けるときは、初めに完了体命令形で、その後は前の動詞が作り出した文脈による促し(着手)の意味で、不完了体命令形が続く場合の方が多い。
(この手紙を読んで、彼女に渡して下さい)Прочитайте это письмо и передайте ей.
(水をたくさん汲んだら、すぐに戻るんだ。いいな?)Наберите воды и сразу же возвращайтесь, хорошо? <возвращайтесьが不完了体なのは、水をたくさん汲んだ以上、戻るのが当然だという意味の促し(着手)の用法であり、切迫のニュアンスもある>
逆の場合は稀だが、ないこともない。
(座って、何か面白い話をして)Садись и расскажи мне какую-нибудь забавную историю. <促しと新規動作の組み合わせ。сядьと完了体命令形も可能であり、その場合は順次的用法となる。補語がなければ、Садись и рассказывай.と促しの意味の不完了体命令形を続ける方が自然である>
同じ動詞の体のペアが続く場合は、最初に新規の事柄ということで完了体動詞命令形が来る場合は、次の命令形は動作の指示だけだから、不完
]]>5-1-1 促し(着手、切迫感、焦燥感) → 不完了体動詞命令形
不完了体というのは話し手にとって、動作事実の有無の確認、つまり、頼み、助言、命令などの付属的なニュアンスのない動作そのものを示すわけだから、命令法においても、すでに状況設定(心理的な踏み台)が出来上がっている場合、あとは動作を促すだけであるので不完了体命令形が用いられる。それは2-1-6-1項のみなし反復の一種とも言える。促しпобуждение к действию(着手приступ к действию)といっても、不完了体の属性であるニュアンスのなさから発生するもので、自発的に(勝手に)促すのではなく、その場でその動作をすることがその状況下においては自然であるという認識が、聞き手や第三者にとってはともかく、話し手にはある場合である。その場の雰囲気によってなされる自然体である動作の要請、つまり相手の動作にきっかけを与えるための合図に使われ、勧誘的な意味合いを持つ。いわば、その場の空気を読む用法だと考えてもよく、不完了体は場依存型であるといえる。動作することを特にイメージしない、その状況では他に動作の可能性がないという事で、純粋に動作自体を意味する不完了体が用いられるのだとも言える。
完了体は刻々と動く動作のその瞬間を表現できないことから、完了体には叙想的(主観的)ニュアンスが出てくる。そのため明日とか2時にとか、動作への促しと発話時点を結びつかないような時の状況語がある場合は、完了体動詞命令形が用いられる。ただこのような状況語がない時は、発話の時点ではないとはいえ、一瞬後以降の未来の動作を示すので、促しの用法と見分けにくいことがあるが、完了体命令形は新規の具体的1回の動作に用いられると考えればよい。
着手という用法は動作の完遂をイメージしない、完遂であれば、完了体の命令形を使えばよい。そのため着手の用法では、始発(начать/начинать, отправлиться/отправлятьсяなど)、継続(продолжать)、終了(кончить/кончать)を意味する動詞の後では、不完了体不定形を取ることになる。
動作の継続を前提したときは不完了体命令形が用いられ、その他にも今すぐといった発話の時点での動作の着手のときは、切迫という用法という事で、不完了体動詞命令形を使うと考えてもよい。この切迫という用法にしても、暗黙かそうでないかは別にして、切迫となるような前提条件があるわけで、その前提があるということ自体がみなし反復となり、不完了体が用いられるということである。切迫に不完了体が用いられるのは6-1-4項の動作の着手の説明も参考にされたい。
この促しの用法は、かけっこのときのよーいドンや、試験の時の試験官の「始め」の合図のようなものだと考えると分かりやすい。話し手は合図をするだけであり、動作をするかしないのかは聞き手次第と考えているから、促しは任意の時間軸の特定かつ不動の一点における動作ということになる。この用法では聞き手はその一点をなんとなくイメージしているが、話し手は完了体のようにその一点を明確にイメージしているわけではない。促しの用法と関連のある5-1-2項の勧誘の用法では、動作が行われるのが任意であるということがより明確である。
(始め!〔続行!〕)Начинайте! (Продолжайте!) <начинать, продолжатьは、新しい事態や情報が出て来る場合や予想外の状況とか、話題の転換を除き、不完了体動詞命令形で使う事が多い>
(おかけ下さい)Садитесь!