2020年02月04日
●第167回
命令法を反語的に用いて、〔そんな~はできるはずがない、絶対無理だ〕と、行為・動作の不可能である、あるべきではないことを、強い感情をこめて表現することができる。
(まあな、こいつは全部しゃべるさ。書き留めるのが間に合わないくらいだろうよ)Ну, этот расскажет всё! Успевай записывать!
若者言葉の「~しろってか」を使って、「~全部書き留めろってか」と訳してみるのも面白いかもしれない。успетьは不定形として完了体を取るのが普通だが、この場合は尋問が一度ではなく、あるいは一度であっても長期にわたるというニュアンスがあるから、不完了体успевать записыватьが用いられていると考えられる。
5-1-6 規則的反復
命令法においては現在の時制の反復といっても、動作はこれからになるので、厳密に言えば時制的には未来であり、ただそれが現在にほぼ接している時点以降を扱うか、現在とは距離を置いた未来の規則的反復を扱うかという違いだけであり、扱う時系列的範囲は重なる。この違いを示すのは、従属節におけるбытьの未来形の有無のみである。これは不完了体未来形が近接未来(発話時点のすぐ後に続くか、発話時点と融合した未来)を表現できないことに起因する。下記の文でもбудетеがついていれば、現在とは離れた未来の時制の規則的反復を意味するが、そうでなければ、現在とほぼ接した時点以降の未来の規則的反復というニュアンスになる。ただ規則的反復という動作に変わりはなく、会話においてはбудетеをつけようとつけまいと、このようなニュアンスを除いて意味に変わりはない。4-1-1-9項も参照。
(彼がつけ上がるようなら、たしなめなさい)Если он будет заноситься – одёргивайте. <Если以下の従属節が未来の時制の規則的反復を示している>
(帰る時はいつも明かりを消して下さい)Всегда. когда (будете) уходить, гасите свет.
上の文を「今日は」というような具体的な1回の動作にすると、下記のように、主文に完了体命令形が来る。
(お帰りになる時は明かりを消して下さい)Когда будете уходить, погасите свет.
上記の文ではбудетеはこれからの動作である未来の時制を示すという点で必須であり、不完了体未来形は近接未来を示せない代わりに、未来の動作にある程度の時間の余裕を与えるという機能もある。また4-1-1-9項にあるように、文の焦点が主文の動詞погаситеにあるため、когда以下の従属節では未来の時制における動作事実の有無の確認であり、文の焦点がこないために不完了体未来形が用いられているとも言える。когда以下の従属節に完了体未来形が来ると順次的動作となって、帰る動作と明かりを消す動作が、継時的にあまり間をおかず行われることになり、この文では不自然である。
動作の規則的反復の命令には不完了体動詞命令形を使う。共に使われる副詞及び状況語は、время от времени(時々)、всегда(いつも)、иногда(時折)、каждый день(毎日)、по выходным(休日ごとに)、пореже(ごくたまに)、почаще(ちょっと頻繁に)、регулярно(定期的に)などがある。