2020年02月04日
●第165回
上のзвонитеの入った文は観光ガイドが客にという場面でよく使われる。
祈願とか呪詛は、神様か悪魔がするわけで、話し手である人間として絶対こうなるということが言えないために、拘束度ゼロから発展した用法であり、そのため不完了体動詞命令形で示すのだと考えられる。
(早く元気になってください)Выздоравливайте! <= Поправляйтесь!; Вставайте скорее!; Не болейте!、病人への見舞での別れの挨拶で、выздоравливатьはпоправлятьсяよりも強調とした感じが出る>
暴言にも不完了体が使われるが、これは不完了体の切迫感に関係し、そこから強い促しにもなり得るということである。これは後述の不定法において切迫感には不完了体が用いられることなどでも理解されよう。また命令文ではない二人称の用法にこれに似た用法がある。
(とっとと失せろ)Убирайся!
(もう一度そこに寝てみろ、いいか〔ただじゃおかない〕)Ещё раз тут ляжешь – смотри! <лечьという完了体が来ているのは例示的用法>
5-1-3 動作の様態 → 不完了体動詞命令形
動作の途中で命令法を使う場合は、文の焦点は補語にあるので不完了体動詞命令形が来る。この用法は動詞の動作がどのようであるか、そのありようを示すもので、動作の完成は二次的なものとなり、いいとか悪いとかの完了体動詞過去形の結果の評価とは違う。文脈によっては動詞なしでも意味が通じるというような、動作事実の有無の確認であり、動詞が刺身のつまのようなとき、つまり様態に文の焦点があるときはすでに動作が行われているという前提ゆえ、5-1-3項同様、2-1-6-1項のみなし反復として、不完了体動詞命令形が出て来る。共によく使われる副詞及び状況語は、внимательнее(もっと注意して)、побыстрее(もっと早く)、помеделеннее(もっとゆっくり)、потише(もっと静かに)などである。3-1-11項参照
(〔X線検査で〕もっと深く呼吸してください)Дышите глубже.
(もっと早く帰って来てください)Возвращайтесь поскорее.
(もっと大きい声で話して下さい)Говорите громче.
上の文を、Громче!と動詞を省いて言っても、イントネーションによりニュアンスは変わるかもしれないが、意味そのものには変わりはない。これは動詞自体が文の焦点ではないという不完了体の用法の特徴である。
(〔いつもより〕暖かい恰好をしなさい)Теплее оденься.
上の文に完了体動詞命令形が使われているのは、動作遂行(暖かい恰好〔セーターなどを着るとか〕をする)に意味の重点があり、暖かい恰好をしなければ風邪をひくよという主観的ニュアンスがあるからである。この文の前に「着なさい」というような出だしの文がなく、いきなりこう言っているわけで、暖かい恰好をするというのは、新しい情報であり、それゆえ完了体が出てくるとも言える。
同じ動詞を繰り返す場合、最初は完了体動詞命令形で新しい事態や情報が出てくることを伝え、次に様態を述べる場合に不完了体動詞命令形を使うというのも、次に用いられる動詞が刺身のつまのような感じだからである。しかし、при-という接頭辞を持つ運動の動詞群の不完了体ではこの用法は使えない。規則的反復の用法(3-1-2項の予定の用法は例外であろう)しかないからである。ゆえに、次の文ではприноситьではなく、別の動詞нестиを使わざるを得ない。