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●和文露訳要覧第521回
『ロシア文化全史』ソロモン・ヴォルコフ、今村朗訳、河出書房新社、2019
表題のロシア文化全史というのは世界に影響を与えることができたという意味でのロシア文化であろう。つまり20世紀初頭以降の帝政ロシアやソ連の、世界に影響を与えた文化の通史である。かねてよりソ連が公式には「労農」を掲げていたのにもかかわらず、新農民詩人のリーダーであるエセーニンがなぜ迫害を受けたのか気になっていたのだが、本書でようやく氷解した。本書によると、農民出身の作家たちに対し、当局ははるかに懐疑的態度を取った。ゴーリキーは農民を嫌い恐れていたが、それは全ロシアを渡り歩いた民衆出身者として、農民の本当の姿を知っていると考えており、彼の目には農民は暗い保守的な勢力であり、同時に怠慢で残酷であると映っており、一貫して反知性的なものであり、農民社会の動物的個人主義、そこにおける共同体的な感覚のほぼ完全なる欠如があるとみなしていた。
当代一の文学評論家であったドミートリー・スヴャトポルク・ミールスキーはエセーニンについて、できの悪い詩が多く、完璧なものはほとんどないが、作品は魅力にあふれ、琴線に触れるものであることや、音楽性において独特の国民的哀愁があると述べているとある。最後の皇后アレクサンドラもエセーニンの詩のファンだとは知らなかった。
ゴーリキーはロシアの民衆について、「世界で最も罪深く、汚らわしい国民だ。善悪の区別がつかず、ウオッカに毒され、冷笑するかのような暴力によって心が歪み、醜悪なほど残酷である。それでいて情に厚く、つまるところ、才能にあふれた人々なのだ」と書かれている。
ほかにも1950年代にドイツからの戦利品として欧米の映画が多数ソ連で上映されたが、その中でターザン4部作が非スターリン化を大いに促進したとあるのは興味深い。
出題)「物心ついて以来彼らは私たちの友人だった」をロシア語にせよ。